道草少女

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「ふう。蘭大丈夫?」
[ええ、なんとか]

蘭の傷も応急処置し、一段落着いた。ワイリーは気絶しているうちに同じように、縄でぐるぐる巻きにし、柱に結びつけておいた。未だに目を覚まさないため、少しこの部屋を調べることにする。

改めて見るとそれなりに広く、薬品の匂いがする。あの時と同じような器具も見受けられる。パソコンや資料も机に散乱しており、ゴミ箱からは携帯食料の袋が溢れかえっている。
資料に目を通すと、そこには今までの研究のデータが書いてあった。文字、グラフ、数値、これは流石に短時間で読めるようなものではない。資料を机に戻し、棚にあった分厚い資料を開く。これもどうやら同じようなものらしい。戻そうとした際、ポロリと一枚の紙が落ちる。

「なんだこれ?」

ファイルを台に置き紙を拾う。必然的に紙の内容に目が行く。でかでかと書かれた文字には

「改造ポケモン・・・1-14」

その隣にある写真を見ると、そこには見たことのないポケモンがいた。いや、それはポケモンと呼べるのかすらわからないものだった。そのフォルムは恐ろしい悪魔のような黒い頭、立派な角が生えていて、体は真っ白な体毛に覆われている。その体からは翼が生えており、何故か背筋が寒くなった。

さらに続きを読むとこう書いてあった。
ペルシアン、リザードン、サザンドラ、アブソルの遺伝子、パーツを使用。
初めて生きた状態まで成功。No.は1-14。ゆっくり歩行し、餌を食べた。その後眠りにつき、十一時間後死亡を確認。前回と比較すると・・・・

グシャ、思わず紙を握りつぶしてしまう。こいつらは、本当にポケモンのことを道具としてしか見ていないんだ・・・。どうしてこんなこと!No.もこれんだけの数になっているということは、これ以前にもたくさんの犠牲がいた事になる。悔しい。この学園が出来てから、こういうことを本格的におこなっているのだろう。
とめなきゃ。改造ポケモンなんてもの、ポケモンを操る装置、それにポケモンとトレーナーを引き離す。この学園の生徒とポケモンたちみんな被害者なんだ。
紙を折りたたみ、ポケットに突っ込む。

「蘭!いくよ!早くこんなこと、とめなきゃ!!」

ボールに戻し研究室を後にする。この学園を、ロケット団を潰すには、やはりボスを叩かねばいけない。サカキはここにいるかわからない。けれど、アポロ。あの男はおそらくここの学園のトップに違いない。幹部と言っていたし、ほかの学園にも幹部を散らしているはず。
狙うはアポロ。しかし、今は、目の前に次々と現れる下っ端を倒さなければ。今の状態の蘭でどこまで出来るか不安だが、

「蘭!踏ん張りどころだよ!!」
[ええ!]
「いくぞおまえらあああ」
「ただじゃ返さねぇ!!」


・・・・・・


学園内は戦場と化していた。あちこちでバトルが繰り広げられ、時には制御装置をつけた野生ポケモンとも戦う姿が見受けられる。
勝って進むものもいれば、負けてとうとう人間同士で戦うものもいる。逃げるもの、泣き叫ぶもの。けれども生徒たちは負けるものが多かった。ロケット団員が教師をしていて、授業自体が意味のないものというのが多かった。その結果が今現れ始めていた。もちろん勝つものもいるが、それはごく一部。溢れ出てくるロケット団員に、次第にその勝者も敗者になっていく。
そんな時だ、空が一瞬暗くなる。けれどもそう感じるのは一部の人間。ある生徒が疑問に感じ、隣にいた生徒に話しかける。だが隣の彼は太陽出てるだろと、上を指さす。その指の方向を見ると、何かが飛んでいた。なんだあれ。暗くなったといても、太陽は横から降り注ぐ。手で影を作り、その飛行物をよく見る。小さな黒い点は段々と大きくなっていった。そしてそれは、隕石のように目先の芝生に突っ込んできた。

「うわ!!」

あまりの勢いに体が吹っ飛んだ。体を少し打ったものの、すごく重く感じる。それが何かを確認するために、立ち込める土煙を凝視する。だが、その姿が分かる前に、先に違うものが現れた。

「あーあ、どんだけハッスルしてんだよお前は」
「はは、彼は相変わらずだな」
「ミーも早くfightingしたいデース!!」
「ほなウチラもいこうや!!」

そう目の前にいたものたちは、まさに救世主だった。

「じ、ジム・・・リーダー・・・」

その背中はみんな異常な程に、大きくみえた。これで勝てる。そう、確信できたのだ。同時に、自分も勝ちたい。あんな奴らに、まけっぱなしは嫌だ!!そう勇気が湧き出てくるのだ。
去っていく彼らの背を目にしっかり焼つけ、走り出した。
さっきの土煙の人物のことなど、とうに忘れていた。



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