道草少女

□24
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生徒たちの闘士は上がったが、こちらは下がりつつあった。
ワイリーの研究室を出て、大量の下っ端たちを同時に相手しているアンコと蘭。けれども、二人がどれだけ強くても、休みなく連続で、大勢の相手をするとなると、勝利が見えないのだ。更に、蘭は既にダメージを受けていて、アクアリングを使用していても体力は減る一方だった。

くそ、いったいいつまで下っ端は湧き出てくるんだ。蘭だけでは、もうそろそろもたない!ダイゴさんと合流するためにヘアゴムをおいてきたけど、私のいる場所がどこなのかわからない今、それも当てにならない。

「ユンゲラー、サイコキネシス!!」
「しまった!」

不意をつかれた。絶え間なく攻撃しなきゃいけなかった時に、考え事なんかしていたから。サイコキネシスにより宙に浮いた蘭に一斉攻撃が浴びせられる。声にならない叫びが出た。もちろん蘭は戦闘不能、落ちていく姿も、自分の走りも、相手の笑う声も、すべてがスローモションに感じる。蘭を地面に打ち付けてはならないと、腕を広げながら思いっきり飛び込む。蘭は無事に抱え込めたが、肘や膝は打ち付けることになる。痛いけど、蘭の方が今は痛いはず。

「ごめん、蘭・・・!」
[しょげた顔すんじゃないわよ・・・、でも、ごめん]

もう、なすすべがない。逃げ用にも既に周りを囲まれて、満足に立ち上がることもできない。ニヤニヤしながら何人かの下っ端が前に出てくる。わざと聞こえるように、煽るように、下っ端同士で話し始める。

「おい、こいつシンオウのチャンピオン倒したことあるらしいぜ」
「はは、マジかよ。ポケモンこれしか持ってねぇのに?」
「しょせんはガキだってことだよなあ。てゆうかこいつ幸村にすら負けてんじゃねぇか」
「あ、お前たち。後で俺に賭けた分よこせよ」
「あ〜あ、先生は本当に厳しいですねえっと」
「しっかし、まあ、チャンピオン倒したって言うから見てみれば、ただのランターンだもんなあ」
「もっとレアなポケモン持ってたら、俺のもんにしてやったのに」
「おめーじゃむりだよ!!」
「「「ぎゃはははははは」」」

どうしていつもこんなふうになってしまうんだろう。またみんなに怒られるんだろうな。説教で霙はずっと怒った顔するし、しばらくの間は火六が、何するにも一緒に行動してくるだろう。蓮華は泣き続けるし、流星はナンパしにいかないし、静と白夜は背中から離れてくれそうにないだろうな。でもそれも、生きて帰れたら。みんなのもとに行きたい。

「さあてと、アポロさんに差し出しに行こうぜ」
「え、でもアポロさんはワイリーさんに渡しに行ったんだろ?」
「いやあ、一応だよ、一応」

髪の毛を鷲巣かみにされ、上体を無理やり起こす形となる。いたい、髪がブチブチと抜けてしまいそうだ。そのまま引きずられそうになるため足に力を入れて、踏ん張ってみる。けれど、そんな力、今更出したってないに等しいもの。ズル・・・ズル・・・とワンテンポ置きながら、連れて行かれた。
その時だった。

「「うわあああああああああああ!!!」」

下っ端の叫び声が聞こえた瞬間、黒い二つの物体が後方に飛んでいった。同時に赤い何かも目の端に映る。一体何だ?
地面からはドドドドドド!!!と何かの走る音が聞こえる。これはポケモンが走っている音だろうけど、その足音は段々大きくなる。何かがこちらに近づいてくる。

「ひ!な、何だあいつらは!?」

私を引きずる下っ端が情けない声を上げる。けれど、その何かを排除するため、ポケモンに指示を出す。
だがそれも虚しく、ポケモンお叫び声が聞こえたあと、下っ端は「こっちにくるなああ!!」と叫び、倒された。彼の手も離れ、上体は地面に打ち付けられる。
痛い、何が起こっているんだ。そんなこと思ってる時に聞こえてきた声は、どこか懐かしく感じた。

「先輩!!」
「あか、や・・・!赤也!」
「俺助けに来たっすよ!」

彼の顔は太陽のように輝いていた。そして彼のポケモンも同じように顔を覗き込んでくる。
けれど前見た時とは随分違っていた。

「ゴウカザルに、進化したんだ・・・」
「はい!」
[安心しろ、守ってやる]

以前聞いた時とは違う、頼りがいのある声だ。二人とも嬉しそう。このふたりはもう大丈夫。そう感じたとき、心は不思議と満たされた。

「先輩は、こいつに乗っててください。蘭はボールにしまっといて・・・」
「このピジョン・・・あの時のか」
[あなたを助けに、それに私以外の他の者たちも、自分の自由を取り返すため戦っています]
「・・・うん、そか」

その言葉を聞いたとき、さっきまで無くしそうになっていた気持ちが、むくむくと蘇りつつあった。
戦わなきゃ。何もできなくても、その気持ちを忘れちゃいけない。

「ありがとう、赤也も、炎月も、ピジョンも・・・ありがとう!」
「へへ、先輩お礼を言うのはこっちっす。炎月も進化できた。それに、先輩からの問題、やっとわかったんす。

炎月、一掃するぞ!ニトロチャージ!!」

その炎は、炎月の体にまとわりつき、ものすごいスピードで突っ込んでいく。その速さは目では到底追いきれなくて、でも、壁や天井を足場としてうまく使っているのはわかる。それにニトロチャージは自分のすばやさも上げる。本当に、わかったんだ。そう実感するのはすぐだった。

「炎月は身軽だし、そのスピードを勢いとして力を倍増させる。スピードがスピーカで、力が音ってことっすよね!
それに、炎月のこういう戦い方、すげえ楽しそうなんす!」

そう力強く言う彼の瞳はキラキラと輝いていた。

「先輩、このまま突っ切るっすよ!」
「うん!」

炎をまとった炎月を追い、先を急いだ。



20150817
い、忙しい・・・!!
けれど赤也が成長して助けに来るってのが、書きたかったところなのでいまは満足!!
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