道草少女

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大きな音と共に、目の前は真っ白な煙に包まれた。
この状況。過去にも体験したことがある。そう、今と同じようなとき。シロナさんとヒカリちゃんが助けてくれたとき。
その爆風からか、煙の中に黒い大きな影が見える。何だあれは。もしやダイゴさん・・・?

「先輩!大丈夫っすか!?」

私よりも少し前にいた赤也は、すぐ隣まで移動してきた。炎月とピジョンがどうなったかは煙のせいで分からない。依然として大きな影は動かない。
敵か味方かもわからないこの状況で、何もできずにいた。
暫くしてから、煙も晴れてきて、黒い影にも色が付き始める。全体的に赤い。しかも、その大きなポケモンの前には人がいた。あと少し。あと少しで見える。

「ねぇ、あんたたち強い?」

声の主は目の前の赤い帽子をかぶった少年。そして後ろに控えているのはリザードン。
よく見ると少年の足元には、ピカチュウがいる。
まさか・・・

「れ、レッド・・さん・・?」

赤也は少々興奮気味に、けれどもどこか疑いをかけるようにその名をつぶやいた。
レッドさんと思われる少年はじっとこちらを見て動かない。ただいるだけなのにこの存在感。本物で間違いないんだろうが、現実味がわかないのも事実。

「っ!!炎月とピジョン!!」

そうさけび、赤也は付近の瓦礫を漁る。何度も二匹の名前を呼び、瓦礫の山を崩すと、戦闘不能状態ので見つかった。あんな強がりを言っていても、やはり体力の限界が近かったのだろう。炎月をボールへ戻し、ピジョンを救出しようとする。私も近くへ行き、手を貸しピジョンを救出する。
ふう、と一息つきレッドさんの方へ目線を戻す。ずっとこちらを見ており、どうやら待っているようだった。これはさっきの返事待ちだろう。

「あの、私たち、戦えるポケモンはもうすでに戦闘不能なんです」
「・・・・・」
「だから、えと・・・
てゆうか!私たち味方です!!ダイゴさんに潜入調査を任されてた者です!」
「・・・・」

ひたすら無言を決め込む彼はきっとマイペースなんだろう。もしくは何かを考えているのか。私ももちろんだが、隣にいる赤也もまた戸惑っているのが分かる。炎月をボールに戻し、ピジョンを抱えたあとも、チラチラと私とレッドさんの顔を伺って出方を待っているようだった。
先に口を開いたのは意外にもレッドさんの方だった。彼はリザードンをボールに戻しならこちらに近づき、こう言った。

「俺もついてく。あんたたち、ポケモンもういないんでしょ?」
「・・・まあ」

あいも変わらず無表情。ついてきてくれるのは心強い。このまま前に進んでロケット団でも出くわしてしまったら、それこそ終わりだ。それに彼の実力は今の一瞬でも分かる程の者。私も一瞬でひねり潰されるほどだろう。不幸中の幸いというのはこういうことだろうか。

「けど、交換条件として、この件が一段落したら俺とポケモンバトルしてよ」

ふ、不幸中の幸いというのだろうか・・・・


・・・・・


あれからともに行動を始め少し歩くと、ワープする為の丸い床がいくつもある部屋へと付いた。そこは突き当たりで部屋自体もそこそこ広かった。ここがいろんな部屋へ行くための分岐点なのだろう。
さて、どこへゆけばいいだろうか。

「レッドさんは何処からあそこまで来たんすか」
「ワープしたり、壁自体破壊したりしてきたからあんまり覚えてない」
「そ、そっすか」

レッドさんに聞こうにもこのとおりだ。私と赤也もどこがどこへつながっているかはわからない。つまりこれは全て運に身を委ねるしかない。

「じゃあ、適当に入っていこう」
「あ!俺、あそこの角のやつがいっす!」

それならばと、手を上げ元気よく主張する。その行動に少しだけ張り詰めていたものが緩んだ気がした。気持ちも少し余裕が出てきた気がする。
私たち三人は赤也の希望した左奥角のワープへ乗り、その部屋を移動した。
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