道草少女

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そこに広がる光景は、一瞬で理解することは難しかった。
ゆっくり一つずつ確認しよう。まず、目の前に見える後ろ姿。学生服を着て水色の髪をしている彼は、私たちの探していた、ダイゴさん。その少し前にいるポケモンは彼のポケモンであろうメタグロス。辺はかすかに土埃が舞っておりバトルをしているようだ。そしてその相手は、炎を吐き続けるヘルガー。相性は最悪なはずなのに、苦しそうにしているのはヘルガーの方だった。やはりチャンピオンは格が違うと、改めて感じる。そのヘルガーの主はこれまた、水色の髪をしている。だがその髪は短く、ダイゴさんよりも色が少し暗い。そして彼もまた、ヘルガーと同じように苦しそうな、悔しそうな表情をしている。アダイゴさんと、ここ立海のボスとも言えるアポロが今、その戦いを終えようとしていた。

「これで終わりにしようか、メタグロス、大地の力!」

メタグロスが大きく足を振りかぶり、裁きの鉄槌のようにそれを大地へ打ち付けた。その威力は凄まじく、その一撃の風圧だけで私たちも吹き飛びそうになる。だが、メタグロスの凄さはそれだけではなかった。振り下ろした足元が割れ、土の塊が柱のように飛び出しきた。その柱は足元だけでなく、敵であるヘルガーの下にもだ。もちろんそれは直撃。その一本でヘルガーは伸びてしまうほどだった。
そんなことはおかまいなく、メタグロスは残りの足三本分を繰り出した。風圧と、大地の揺れで立っているのは困難で、顔を腕で覆い、膝をつき、おさまるのを待った。ダイゴさんと別れたすぐ後の揺れはこの揺れだったのではないかと思う。現場でこの威力。周りも相当な威力だっただろう。

攻撃が終わったあとでもなお、足元のフラフラした感覚はまだ治りそうにはなかった。赤也も私と同じ感じだったが、その目と口は大きくあいていて、心ここにあらずといった感じだ。
レッドさんはというと、表情も何も変わらずその場にしっかりとたっていた。相棒のピカチュウも彼と一緒に真っ直ぐとそのバトルを見ていた。その立ち姿は、やはりどの人間とも風格が違っていて、ひどく眩しく感じた。


「みんな、大丈夫だったかい!?」


突然の呼びかけに、はっとなり顔を慌てて向ける。ダイゴさんは何やら心配そうな顔をしてこちらを伺っていた。「大丈夫っす」と、やはりまだ少し放心中の赤也の声が聞こえる。驚いても無理もないだろう。正直私も驚きを隠せていない。
各リーグのチャンピオンも皆同じレベルなはずなのだ。勿論、シロナさんも、ダイゴさんも、ワタルさんも。それなのに、今の技を見ただけで、何故シロナさんに勝てたのか疑問に思えてくる。

「アンコちゃんは?」
「あ、」

こちらに目が向き、私も自力で立ち上がり「大丈夫です」と返事をする。
無事が確認し、真っ先に向かったのはアポロの下。彼は土の塊に巻き込まれたのかところどころボロボロで、擦り傷も見受けられる。意識はあるようだが、立つのも辛そうな状態であった。

「さて、サカキはどこにいるんだい?」

ダイゴさんの言葉から感情なんてものは感じ取れなかった。
その声はアポロには届いているようで、サカキという名前を聞いた瞬間、目がうっすらと開く。
サカキはロケット団の大ボスである。彼と幹部を捉えられさえすれば、今回の事件は終わる。立海にいないとすれば他校か、もしくは別の場所か。

「青学と氷帝は結構前に潰してね、どちらにもサカキはいなかったと聞いている。
それにサカキに一番近いのは君だろう?今、居場所を吐いてくれるとこちらとしても助かるんだけど・・」

そう言われても彼の表情は何も変わらなかった。表情が読めないのはもはや特技なのだろう。それでもこの状況ならなんかかしら反応を示すはずだ。

だが、暫くしてからだった。ふふふ、と口元を釣り上げて笑い、こちらを見た。その怪しい笑いに、嫌な汗が出てきた。

「私たちの最終的な目的ってなんだと思いますか?」

突然の質問に反応できない。目的とはこの学園で行っていたことを考えればわかるんだろう。だが、それを私たちに聞いたところでどうなるというのだろうか。
その時不意に、ロケット団の企画書やワイリーの言葉、そして改造ポケモンの報告書が頭をよぎる。そして、意識を失う前。ちょうどアポロとあって少し話した時のあの言葉。

「究極のポケモン・・・」
「そう!その通りです、覚えていたんですね」

ふと漏れたつぶやきに嬉しそうに反応してくる。そのまま上機嫌に彼は話し始める。

「究極のポケモンがいればどうなると思います?伝説、幻おも凌ぐのです。きっと直ぐに世界はそのポケモンの支配するものとなるでしょう!さて、そのポケモンにトレーナがいたらどうなると思います?そのトレーナーこそが世界を支配するんですよ!そう、世界を自分の手の上で転がして遊べるんです。好きにしても何も言わない。究極だからこそ反撃もできない。
素晴らしいとは思いませんか?力があれば世界をひとつにできるのです。サカキ様はそれをお望みだ。
そして長年の研究で分かったことは、やはり人造のポケモンは難しい。0から1ができるのと同じように難しいのです。ですが、そこに既にやり方が書いてあったとしたらどうです?」
「何が言いたいんだい?」
「ふふふふ、我々はその“やり方”を使うんですよ」

どういうこと・・・。頭を悩ませる私たちにアポロの笑い声が嫌に響く。そのこととサカキとが何の関係があるんだろうか。ダイゴさんも口元に手を当て考えている。

「こっち」
「は?」

不意にグッと腕をひかれる。何が起こったのか。レッドさんに腕をひかれそのままワープした。出てきた場所は先ほどのワープ地点の密集地。何かわかったのだろうか。だがこんなところで止まってどうするのだろうか。
様子を伺うと三つのボールから、リザードン、カメックス、フシギバナを出した。あまり大きな部屋でもないのでギュウギュウになりつつある。未だにどうするかわかっていない私に、衝撃な言葉が聞こえてきた。

「一斉に天井に向かって破壊光線」
「は?」

そう言った瞬間目の前は真っ白になる。それと同時にレッドさんに覆われた。
ひどく大きな音と、先程と変わらないくらいの振動がまたも襲う。そう感じるも、同時に彼の腕の力も強くなり、今更ながら守られているのだと気づく。

音も振動も止み、覆う力も少し弱くなる。目を開け上を向くとかなり近い位置に彼の顔が有り、顔に熱が集中するのがわかる。

「大丈夫?」
「う、はい」

体を押し返し、熱の集まった顔を隠すためスカートの土埃を払うふりをする。
よし、大丈夫。そう自分で確認し改めて顔をあげると、そこは瓦礫の山と、空から入る光で不思議な景色へと変わっていた。
三体で破壊光線は地上と繋げるためだとはよくわかったが、果たして三体も必要だったのだろうか。

「行こう、サカキはハナダの洞窟にいる」
「ハナダのどう、うわっ!」

同じように腕を引っ張られリザードンへと無理やり乗せられる。彼もその後ろへ乗り、すぐさま空へと飛び出した。


20151110
更新明日しますします詐欺申し訳ありません
リアルがかなり忙しいです
次回最終回になる予定です
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