道草少女
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ミュウツーが去ったあと、すぐさま立海へ向かった。勿論、仲間を連れて。学校の敷地へ入るとそこには多くの生徒が散らばっていた。皆ロケット団への勝利に歓喜していてそこらじゅうで笑い声が聞こえる。
彼らはどこにいるかとキョロキョロしていると頭を何かにつつかれた。
振り返るとそこにはピジョンが
大きく翼を羽ばたかせ嬉しそうにしていた。
そしてその後ろの方から、ニコニコと走ってくる人たちが。
「せんぱあああいい!!!!」
「赤也!」
目の前に来るとすぐさま泣き始めた。彼は意外と泣き虫なんだなぁと、微笑ましくなる。
「「アコちゃん!!」」
「アコ!」
すると続々とみんなが集まってくる。真理ちゃんも明日香ちゃんも沢山泣いたのか目の周りが真っ赤っか。それでもまたブワリと涙が溢れ出していた。ブン太も安心したような、あの太陽みたいな笑顔でこちらへ来る。その後ろには仁王や幸村真田など、テニス部の面々と思われる人たちも。
「先輩、無事でほんとに良かったっす!」
「ありがと!みんな知ってると思うけど、私さダイゴさんに頼まれて潜入捜査してたんだ。だから、失礼なことも迷惑になることも沢山したと思う。特に幸村くんには。」
「あの時の試合だね」
彼は目を細めて、でも眉を少し下げ寂しそうに呟く。
「あれは小杉のポケモンに制御装置がついていたから、どうにかして破壊しようと思ってね。それでも、二回目の試合は本気だった。あの時のバトルを帳消しにできるくらい真剣に、本気でぶつかろうと思ったの」
「いや、俺もそういう事情があるとはしらなくて、大人げない行動をとったしね」
お互い様ってことで、そう二人で声が揃ったときみんなが笑った。
「皆は、これからどうするの?」
学園がなくなった今、一人ひとりが自分で道を歩いていかねければいけない。大半が旅に出るのだろうが、今までこういう生活をしていたら覚悟もそれなりに必要だと思う。
「私は家が花屋だからそこを手伝いながら、お店をつごうと思ってるの」
「私はブリーダーを目指すよ!昔からの夢だったの」
「そっか、今度明日香ちゃんの花屋さんいくね、真理ちゃんもきっといいブリーダーになれるよ!」
「うん!」
「待ってるからね!」
三人でギュッと抱きしめ合ったあと、二人は他の友達のとこにも言ってくるねと、去っていった。
「君たちは?」
「俺たちはとりあえずみんなで旅にでも出てみようかなって」
「この大人数で?」
「ああ、俺たちはトレーナーであり、テニスの選手だ。プロを目指しながら旅をする」
「先輩も俺たちの試合見に来てくださいね!」
「うん、勿論!」
みんないい笑顔をしている。
ふと目の前に仁王が来る
「仁王もありがとう」
「ぴよ、うまくいって良かったぜよ。俺でも流石にハラハラしたなり」
「本当?」
「どうじゃろな」
にやりと笑う彼はやはり食えない男である。でも彼の協力がなければここまで上手くことを運べなかっただろう。本当に感謝している。
「なぁ、アコ・・・」
「?」
ブン太がすこしたじろぎながら話しかけてくる。一体どうしたのだろうか。心なしか、ほほも赤い気がするが。
「あのさ!俺!・・・・俺、強くなってまた会えた時には言いたいことがあるんだ!!
だから、まっててくれねぇか・・?」
「言いたいこと・・・?うん、その時はよろしくね。
まってるよ」
「おう!」
彼にはやっぱり、その太陽のような笑顔が似合うと思う。キラキラしていてあったかい。
次に来たのはジャッカルくん
「こうして、話すのは二回目か?」
「そうだね」
「赤也のこと、ありがとな。びっくりしたぜ、まるで別人みたいだった!」
「うん、私もそう思う」
「お前が、赤也をあそこまで強くしたのか?」
その話に気づいたのは真田に、柳というひとそれにメガネをかけた人
「俺は柳蓮二という、ずっと気になっていたんだ。赤也がどうしてここまで変われたのか」
「うむ、俺からも礼を言わせてくれ」
「そんなこと、」
「いや、おかげで俺たち立海はまた新しい階段へ進める」
「そっか、ならよかったかな?」
「はじめましてですよね、柳生と申します。こうして話すのは初めてですが、いつもあなたの試合見させていただきました」
「はじめまして、そしてありがとう」
「いえ、私もいつか、あなたと戦いたいです。その時はよろしくお願いしますね」
「うん、楽しみにしてる!」
そして最後、涙を無理やり引っ込めた赤也。後ろには炎月とピジョンもいて、静かにしている。
「赤也とはなんだかんだで一番付き合いが長かったかな。色々ありがとね」
「俺のほうこそ、沢山お世話になりました!!」
頭を深々と下げる彼の頭を優しくなでると、また嗚咽が聞こえる。本当に泣き虫なんだなぁ。こっちも悲しい気持ちになってくる。
[ピビョ]
ピジョンが鳴き、そちらに目を向ける
[俺の心は決まりました。
この男と旅に出ます。旅に出てまた、あなたとバトルします。]
そっか。ピジョンも決めたんだ。ゆっくり頷き、微笑むとピジョンは赤也のふくらはぎを思い切りつついた。
「いって!!!なんなんだよ!!ったく」
「仲間になりたいってさ」
「え!?」
「じゃあ、私はそろそろ行くね」
そういい、流星の背に乗る。
バサリバサリと宙に浮き始め、みんなを見下ろす形になる。
「またね!!」
大きく彼らに、いや、生徒たちみんなに聞こえるように叫び手を振りあげて飛び立った。
小さくなる彼らを見届け、シンオウへ旅立った。
完
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