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□寄道少女-弐-
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「結局なんもねーな」
「他の皆もどこ行っちゃったんすかね」
「ゴーストタイプのポケモンに襲われてなければいいんだけど」
 
火六を先頭に真ん中の廊下を歩くとそこは個室が続いているようで、一つづつ中を見て回ることになった。どれもベットとクローゼット、小さな机があるだけ。だが、中は嵐が通ったかのように荒れていて、探し物をするのには大変な状態だ。
そして残るは一番奥の部屋とその手前の部屋。手前のほうから順に見ていく。
 
「何処もおんなじ感じだね」
「ここも探す意味あるのか?」
「一様ね」
 
やる気の無さそうな青峰くんだが、なんだかんだ言ってきちんとしてくれる。黄瀬くんもビビりながらではあるものの、高いところとか、狭いところとか隅の隅まで見てくれる。
 
「というか、君達の大切なものって何?」
 
今更の事だが、彼らの宝物がわからない。私はもちろんナイトに閉じ込められた白夜が宝物なんだが、彼らは一人一人あるのか?それともまとめてひとつ?二人とも顔を見合せ考えるが、返ってきた言葉は
 
「そういえばなんすかね」
「わかんねぇ」
マジか。あ、ここに来る前に声とかは?
「ここに来る前さ、なにか声とか聞かなかった?変な声。ゲームしようみたいな」
「それも」
「ねぇな」
 
完全に手がかりがない。ここは他の皆も見つけて聞いていくのがいいのだろうか。あらかた探し終えて、キョロキョロしていると「あ」っと言う声が上がる。青峰くんが壁に顔をくっつけて何かをしている。なんだろう。穴でも開いているのだろうか。気になって近づき声をかけようとした。

「うわあああああああ!!」
 
叫び、後ろへ退いた。
 
「どうしたの!」
 
説明ができないのだろうか、口をパクパクさせ見ていた場所に指をさす。黄瀬くんも来たようで、いっしょに目を向けると案の定穴が開いていた。おそるおそる覗き見る。位置的には隣の部屋。つまり次に探索する部屋になる。が、中はここと同じ様子で目につくようなものはない。彼はいったい何に驚いたんだろう。

「何が見えたの?」
「こ、子供がいただろ!」
「え、俺たちじゃない誰かがいるんすか」
「ごめん、子供なんていなかったけど……」
「はぁ!?嘘だろ!もっかいみてみろ!!」

 じゃあ今度は俺がといって覗き見る黄瀬くん。暫くしていないっすけどという言葉が返ってくる。その言葉に青峰くんの顔が、真っ青に染まる。なんだなんだ?子供がいただけでそんなに驚くのか?あ、もしかして自分が見た子供が、いないということに驚いている?いや、そしたら私達が覗く前に叫んだことの説明がつかない。

「一体どーしたんすか」
「こ、子供がいて、キョロキョロしてたんだけどよ、いきなり俺の目元まで近づいてきやがった」
「はあ?」
「ほんとーなんだよ!!!その顔やめろ、ぶっ飛ばすぞ!!」

 そういって黄瀬くんはヘッドロックをかけられていた。理不尽なんて叫んでるけど、確かに今の顔はイラッときた。
ここで争っていても仕方がないため、隣の部屋へ直接見に行くことにした。
 
隣の部屋は今までと同じようで荒れていて、対して変わった様子が見られない。そして、目的の子供はいなかった。
 
「いないっすね」
「嘘だろおい!!じゃあ俺の見たのって……っ!!」
「いや、もしかしたらこの部屋から出ていったのかもしれないし、ここの屋敷のポケモンたちのイタズラって可能性もあるから、ね?」
「そ、そうか」

ほっとした様子の青峰くんに、黄瀬くんがちょっかいを出して、またヘッドロックをかけられていた。学習能力低くない?いや、それよりも青峰くんがみた子供が気になる。思い出してみよう。ここは森の洋館。シンオウ地方でも極めて有名な心霊スポットだ。まさか、本当に幽霊なのか?いやいやいや、幽霊と呼ばれるものは大抵ゴーストタイプのイタズラという結果が出ているはず。そんな、訳はないだろう。

嫌な予感がするがそれに気づかないふりをして、部屋を出ようとした時、背後からドンドンドンッ!!となにかを叩くような音がけたたましくなった。ひぃ!と二人は私の後ろに隠れ、火六は私の前に出て戦闘体勢をとる。どこだ?音のでどこを目で追うとそこには床に倒れたクローゼットが。扉が床とくっつくような倒れ方をしているため、中に何かがいるとは考えにくい。が、それでもずっとドンドンドン!ドンドンドン!ドンドンドン!と音がなる。確実に何かがいる。火六に目で合図し、恐る恐るクローゼットへ近づく。二人は「やめたほうがいっすよ!!」「やべーよ!やめとけ!」なんて否定的なことをいうが、そんなもの知らんぷりだ。彼等の仲間もまだ行方不明だし、大切なものに限っては何なのかもよく分かっていない。そんな状態でこの中のものを見過ごすことはいけないと思う。
クローゼットまできて、どう中を確認するべきなのだろう。壊すのは中のものも傷つく可能性がある。クローゼットを起こすのがいいだろう。
ドンドンドン!ドンドンドン!と音がやまない中、クローゼットに手をかけると、振動が伝わるのがわかる。やっぱりここになにか。
火六とともに力をかけ、側面を持ち上げ扉が見えるように起こす。(ほぼ火六のお陰なのだが)
そして扉に手をかけ、中がすべて見えるよう開けた。

「あれ、君」
「んっーー!!!んー!」
「あっ!」
「あぁ?緑間ぁ?!」
 
猿轡を噛まされ中にぎゅーぎゅーに押し込まれた緑間くんがいた。
 
20171105
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