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□寄道少女-弐-
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「もう少しゆっくり歩くのだよ!」
「あー?さっきは早くするのだよとかいってたくせに、ゆっくりってどういうことだよ!」
「早くというのは拘束を解くのを早くという意味で、今は早く歩けなんて言ってないのだよ!」
「だー、うるせえなぁ。他の皆もお前みたいになってるかもしんねえんだから、ちんたらしてられねぇだろ?」
「体がずっと拘束されててまだ硬直が完全にとけてないのだよ。これでは人事を尽くせん」
「はいはい、じんじじんじ」
「青峰!」
うるさい。非常にうるさい。え?これであと三人もいるの?そう考えるととても胃が痛くなっている。一番後ろをついてくる火六も非常にイライラしているようで、視線が槍のように刺さってくるし、何より不機嫌オーラが凄い。見ていなくても分かる。なんで前の二人及び隣にくっついている一人はこれに気づかないのだろうか。なんで原因でない私がこんなにびくびくしなくてはいけないんだろうか。ゆっくりという緑間くんはもう既にその速度についていけているし、青峰くんは対して変わってないけど。黄瀬くんは手を繋ぐだけに留まらず腕をくんで頭をすり付けてくる。もうスキンシップの激しさから蓮華が隣にいるような気がしてくる。
緑間くんは気がついたらあそこにいたらしく、その前のことはなにも覚えていないという。事情を話したら混乱はしていたものの、自分の状況から考えて嘘でないだろうと判断してくれた。
そして今は皆で一階へと向かっている。階段を降りていると、木が腐りかけているのだろう。ギシギシと嫌な音がなる。穴あいて足がうまったらやだなぁ…。しかも私だけの体重ではなく、黄瀬くんの体重もダイレクトに伝わるから余計に怖い。手を繋ぐ約束をしたけど、今だけ離れてはくれないだろうか。
「あ?」
「ん?」
なんだ?二人の足が止まる。そして同じ方向を見ている。その方向へ視線を向けると、一人の老人がいた。玄関のほうから一階の中央にある扉。すなわち、今この階段の下にある部屋へ入っていった。
「ちゃんと人がいるではないか」
「おい、あのじーさんに話聞こうぜ!」
「えー、寧ろ怪しすぎるじゃないっすかあのお爺さん!!」
「行こ」
「アンコっち男前…かっこいっす〜!!」
腕が締め上げられる、離してくれと思いながら、駆け足でその扉の中へ入った。が、そこには信じられない光景が広がっていた。
その部屋は大きな食堂のようで部屋一杯に広がる机には豪華な食事がところ狭しとならんでいた。超高級ホテル“ハノハノリゾート”のようだ。(いったことないけど)
それに対して周りには大量のゴーストタイプのポケモンが空中や床をふらふらしており、何やら嬉しそうにしていた。まるで彼らのパーティーのようで、場違いな感じが否めない。いったいこの状況はなんなんだ。
「うおおお!!」
「な、なんなのだよ!?」
「ひっ!!」
三人の大きな男は私の周りに密集し、その異常な光景にビクビクしている。いや、さっきまでの勢いはどこへ。それよりも先程のお爺さんがいない。部屋を見渡すと左奥のほうにドアがある。あの中に入ったのだろうか。人がいるなら話を聞いておきたい。
「皆あっちの部屋へいこ」
「…ませ」
「何かいった?」
顔を見合わせてブンブンと首を振る三人。なんだ?私の気のせいだろうか。それとも火六?火六のほうを見ても、首をかしげるだけで、返事をしたり話たりはしてなさそう。
「まぁいいや、離れないでついてきてね」
「おう」
「分かったのだよ」
「はいっす」
「はい」
まてまてまて。今何人返事した?
最初に青峰くん。次に緑間くん。次に黄瀬くんでその次が……?
ばっと後ろを振り返り、なにもいないことを確認して周りも見渡す。何もいない。ゴーストタイプのポケモン達も先程と同じようにふらふらしている。
じゃあ今のは?
「あの、ここです」
「っ!?!いやああぁ!!!」
と、肩を叩かれ、思わず大きな声をあげてしまう。
距離をとり、それを確認すると水色の髪をしていた少年がいた。
「あの、黒子テツヤ…なんですけど……」
四人目がいた。
20180108