道草少女

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 眩しいくらいの笑顔で会場に応えるダイゴさん。いきなりのことに動揺が隠せない私は、必死にダイゴさんに視線を送った。
でもいまここで応えられても困るのは私のほうだ。それでも、私はこの状況がわからなくて、説明を求めていた。

そんな私に答えるかのように、司会をしている生徒が説明を始めた。

「えー、今回はダイゴさんが我が校興味を持って下さり、視察も兼ねて来てくださりました!
そしてぅああ!!」

司会の進行を遮るように、ダイゴさんがマイクを奪い取り話し始めた。
その反動でマイクがキーンと甲高い音を立てて、生徒の大半が耳をふさいだ。だがそんなこと気にせずに彼は楽しそうに話していく。

「皆さんはじめましてー、ツワブキダイゴです。

今日はみなさんのバトル楽しませてもらいますね!そしてこのバトルで一位に輝いた子にはなんと僕と戦える権利がもらえまーす!」

ね、司会の人?
とダイゴさんはニッコリと司会の人に笑いかける。司会は、はいと緊張したように応える。顔はどこか嬉しそうで、きっと話しかけられたことに感激でもしているのだろう。
でも、よく考えれば彼は今実質ニートだ・・・。そんなにかっこよく彼らには見えるのだろうか。

そしてまた会場の生徒たちもダイゴさんのバトルが見れるとのことに一気に熱気に包まれた。バトル参加者もやる気が増したようで、「マジかよ!?」「チャンピオンとこんなところでバトルできるチャンスが!」などざわざわとしている。

赤也、真田くん、幸村くんも、瞳がギラギラしていて獲物を見つけた野獣のようだった。


それにしてもだ。一位の栄光を勝ち取ったものは強制的にダイゴさんとバトルことになってしまう。元々優勝しようとはあまり考えてはいな方が、これは確実に一位以外で、かつ、学園代表になるような順位になるように計算していかなければいけない。

こちらとしては嬉しいのやら悲しいのやら、思いつきで行動していたら本当にやめてほしい。

「そおおれでは、早速第一試合を始めたいと思いまあああす!!
第一試合!・・・・」

私と相手の少年の名前が呼ばれ、私たち以外の選手はみんな待機場所へ去っていく。
相手の少年はやる気満々で目の輝きがそれ相応のものだった。

私の相手ではないんだろうけど、ダイゴさんがそれを見ているというのはどこか腑に落ちない。
どうもあのずっと笑っているのが苦手だ。きっと社交辞令なのか大勢の人がたくさんいるからああしているのだろう。
現に、あの洞窟であったときや、ライブキャスターでの通信の際はあんなに笑顔ではなかった。


憂鬱になりつつも、バトルステージの端にゆっくり歩いていく。
溜息を吐いては相手に失礼だから表には出さなかった。だがその代わり、体の中にモヤモヤがそのまま吐き出された感じになる。

審判の声で相手は手持ちのポケモンを出してきた。相手のポケモンはサイドンだ。
相性的には悪くない。むしろいいほうだ。
私もおどけたように蘭を繰り出し、審判の試合開始の合図を待つ。


審判の声とともに、先制攻撃を繰り出した。



・・・・・・・


ダイゴside


僕がこの立海に来たのはある意味思いつきだ。

シロナから紹介されて一緒に作戦を実行しているアンコちゃん。彼女には知れば知るほど興味が沸いてきた。
ポケモンとの会話ができる。アンコちゃんのポケモンたちだけが人型になれる。

最初の興味はとても大きいことだった。
こんなこと、興味のないやつのほうがおかしいだろう。けれどもそれは徐々に彼女はどんなポケモンが好きなんだろう。バトルはどのくらいの腕前?石に興味はあるだろうか。どういうときに笑う?
彼女に対しての興味は大きいものから少しずつ小さなものに変わっていった。

そして思いついたいろいろなこと。僕のことをどう思っているだろうか。彼女の驚いた顔を見てみたい。彼女に会いたいなぁ・・・。



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