World Adapt(小説)

□kidnapping
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***
さらに二日後。

二人はリミテーションの麓、スラム街に来ていた。

辺りを煤だらけのマントを身に纏った人が通り過ぎて行く。
中には裸足の人や、足枷を付けた人がいた。

アムテスタとは雰囲気が違いすぎ、美春は怯えてしまう。
その瞳には好奇心といったものは感じず、ただ不安だけしか感じられなかった。



「ここは、イミト?それともデリカ国?」

「ここはどちらにも属さない。
話によれば、ここは国を追い出された者や故郷を失った者などの集まりによって出来た町だ。
だからここの治安はあまり良くないし、どちらの国も干渉していないんだ。」

「そう…。」


美春はそれきり目を伏せて、前を見ようとしない。

アムテスタでは平然と歩いて、すれ違うたびに声を掛けていた少女とは大違いだ。
ここの空気に慣れなくて、黙ったままなのか、それとも…。

どちらにせよ、このままではいけないと思ったアルは、美春を近くの噴水に座らせた。
ちゃんと管理をされていないせいで、水が泥で濁り、不透明だ。


「美春、リミテーションの入り口を聞いてくる間、ここで待っていてくれ。」

「え、アル、何処かに行くの!?」


美春は怖がってしまい、アルの服の袖を掴んで引き止めた。
その手の力は決して強くなかったが、アルはそれを振り払おうとはしなかった。

「少し喉が渇いただろう?果物を買ってくる。」

「…うん。分かったよ。」



アルの優しい言葉に安心したのか手の力を緩めた。

それが分かったアルは美春に微笑んでから、人込みの中へと消えて行った。
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