水無月の夢

□6月6日
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「いやぁぁぁ!」

「…ふにゃ!ふにゃー!ふにゃー!ふにゃー!」

「はぁっ…は…あっ…ごめんね猩影…」

深夜、すっかり深い眠りに落ちていた頃。

姫の叫び声で目が覚めた。

「姫、どうしたァ?大丈夫かァ…?」

ごろんと姫のいるほうに寝返りをうって問うと、玉の汗をかいて息を荒げた姫が猩影を抱いている。

「すいません、狒々様…」

姫はちらりと儂を見ると弱々しく微笑んで、すぐに猩影に視線を落とした。

今にも泣きそうな顔で、猩影に乳を飲ませる姫をじっと見つめる。

「姫」

「は…っ、はい…?」

名を呼んでも顔を上げない姫を不思議に思って、そっと近付いた。

ぽろっ…

ひょいと顔を覗き込んだ瞬間、姫の瞳から涙が零れる。

「狒々様が無事で良かったです…」

「む?」

「夢とはいえ…狒々様が死んでしまうなんて…私…私…!」

成る程、儂が死ぬ夢を見たらしい姫は、まだ猩影に乳をやりながら小さく肩を震わせていた。

…儂が死ぬ夢とは、縁起が悪いのぅ…

姫の肩を抱きながら、思わず苦笑いする。

「大丈夫じゃ姫、儂は死んだりしねぇぞぉ」

「…はい…」

耳元で囁いてやると姫は安心したのか、小さく頷いて微笑んだ。

「すいません…こんな時間に、騒いでしまって…」

「キャハハ!気にすんなァ!」

笑いながら頭を撫でてやっていると、猩影
が乳を飲みながら眠っていることに気付く。

「姫、猩影
を寝かせて、儂等も寝るぞぉ」

「あっ…はい」

姫がゆっくり猩影
ん寝かせるのを見届けて、姫と共に布団に入った。




→つぶやき。
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