水無月の夢

□6月13日
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家族三人で訪れた本家では、猩影
のためにお部屋とお布団を用意してくださっていた。

「ありがとうございます…本当に助かります」

部屋に案内してくださった雪羅さんにお礼を言うと、にっこりと笑顔が帰ってくる。

「よくあることだから、気にしないで」

「よくあること…なんですか?」

雪羅さんの言葉に首を傾げると、そりゃあね、と笑われた。

「何百年もここにいれば、誰に跡取りが生まれたなんて話しはよくあるのよ」

「なるほど…だから、こんなに良くしてくださるんですね」

こんなに沢山の妖が集まるんだし、何百年も、と思えば、よくあることなんだろう、と納得しながら、猩影をお布団に下ろす。

「いろんな妖が覗きにくるだろうから、疲れたらこの札を部屋の前に置きなさいね」

「お札?」

手が空くのを待っていたかのように渡されたそれを見て、首を傾げた。

「立入禁止?」

お札に書かれた文字をそのまま口に出すと、雪羅さんがニヤリと笑う。

「ここでは、これが置いてある部屋には入らないって決まりがあるの。だから、疲れたら遠慮せずに使うのよ?」

「へぇ…ありがとうございます!」

ぺこりと頭を下げると、雪羅さんは総会の支度があるから、と名残惜しそうに部屋から出て行った。

ふぅ、と一息ついて猩影を見つめながら、そういえば狒々様はどこにいるのかしら、と頭を過る。

「よぉ、姫」

すると、いつの間に部屋に入ってきていたのか鯉さんが話し掛けてきて、ビクッと身体を震わせた。





→おまけ&つぶやき。
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