水無月の夢
□6月15日
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「瑠衣さん、お忙しい中すいません…」
朝、洗濯をしていると、猩影
を抱いた奥様が話し掛けて来た。
「奥様!どうかなさいましたか?」
洗濯物を擦る手を止めて問うと、奥様は何故か内緒話のように口元に手を当てて、声を抑えて話し出す。
「実は、そろそろ私、家事のお手伝いに戻りたいのですが…」
「え?」
「だって、もう猩影を産んでからひと月経ちましたし…だから、ちゃんとお手伝いしたいんです!」
奥様がそう言いにきたのは、ほんの少し前の話。
ちなみに、奥様は俺が断る前に逃げるように去って行った。
(きっと、断られるってわかってたんだろうなー…)
今日は狒々様が牛鬼様たちと出掛けているため、狒々様の目を盗んで来たんだろうけど…
…奥様は、家事に関しては俺に決定権があると思っているのか、俺に言えば良いと思っているが、実は…いや、実はも何も、狒々様がこの屋敷の中ではすべての決定権を握っている。
狒々様は、奥様には子育てに専念して欲しいと言っていたのを聞いていたばっかりに、どうしたものかと頭を抱えた。
…まぁでも、まずは狒々様に言ってみるしかないよな…
狒々様の気持ちひとつなんだし。
はぁ、と溜息を吐いて、洗濯をする手に力を込める。
ごしごしと洗濯物を洗い終えると、ちぢこまった腰をぐーっと伸ばした。
→おまけ&つぶやき。