BOOK!!


□素直。
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『え…折原先輩?なんでここに、』




俺が名前を呼ぶと驚いたようにこちらを見た。


シズちゃんにはいつものように見ただけでイライラする。俺を鋭く睨み付けるその目も●●と二人で笑いながら話していたその存在自体にも。けど目を丸くしてこちらを見る●●にも珍しく苛ついた。




臨「俺がここにいるとなんかまずいことでもあるの?」




我ながら嫌味な言い方だと思った。そしていきなり現れて苛ついている自分にも、その感情を抑えられない自分にも苛ついた。




『いや、あの…そういう訳じゃないんですけど。えっと、』




すぐに否定してほしかった。ただ話していただけだと、そう●●が言えば多少はこのイライラはおさまると思ったのに。




静「なんでもねーよ、ただ●●と話してただけだよ」




呼び捨てするんだ、
ほんの些細なことなのに苛々がつのる。




臨「…珍しく行き先言わないと思ったら俺に隠れてシズちゃんに会ってたんだ。ねぇ、●●。」




●●が少し怯えていて不安そうな目で俺をとらえた。今こんな立場じゃないならすぐにでも抱きしめて頭をなでてやりたい。まあ今まで抱きしめたこともないけれど、




『ちがくて、隠してたとか…そういうんじゃなくて。あ…の、静雄先輩とは、その…』




静雄先輩だって。
何それ、俺にだってまだ恥ずかしいから苗字で良いですかなんて言っていたのに。





静「そんな●●のこと責めんな、悪ぃことした訳じゃねぇだろ」




いつものシズちゃんならとっくにテーブルでも持ち上げて店内はめちゃくちゃになっていてもおかしくない頃なのに怒りを抑えてるのは●●が前にいるからで。暴れてほしい訳じゃないけど今はそんな気遣いでさえ鬱陶しい。




臨「悪いことしてないって、え?一応の彼氏に黙って他の男について行くことの何が悪くないの。さっぱり理解出来ないよ、」




あぁ、言い方がキツ過ぎた。もろ●●のこと責めてんじゃん。最悪だ、




『っあの、もう静雄せんぱ…行ってくださ、い。時間だし、あとはもう大丈夫ですからっ。待たせちゃ悪い、です…』




静「でも…」




行ってくださいと今にも泣き出しそうな声と笑顔で言う●●にシズちゃんは渋々といった表情で席をたつ。




臨「なに、逃げんの?」




どこまでしつこいんだろうと自分でも思ってしまう。なんでこんな気持ちに、この気持ちは何なんだろう。




静「あのなぁ、今俺が思ってることとお前が思ってることが同じなんて絶対考えたくねぇけどよ。勘違いも程々にしとけ、」




俺の横をシズちゃんが通るときボソッと言われた。それからシズちゃんはじゃあなと言って●●の頭を少し撫で出ていった。




臨「…………。」




少し落ち着いてくると今まで言ってきたことがどれだけ●●を傷付けたかを推測できて、妙に焦りを感じた。嫌われただろうか、なんと声をかければ良いのだろう。





『…の、あの。先輩、』




臨「へ?」




まさか彼女から話し始めるとは思わずに間抜けな声を出してしまった。




『えっと、ごめ、んなさい…行き先言わないで出てきちゃって、ほんとに隠してたとか、そういうつもり、な、くて。ごめ、なさい。それ、と静雄先輩に怒らないで、下さい。私相談にのってもらってて…っ、』




ぽろぽろ、と●●の目から涙が溢れてくる。感情をはっきりと出した●●をあまり見たことがなくて。どうしようかと焦る気持ちをどうにか抑える。ごしごしと目を擦る様子から泣いてるところを見られたくないのが分かった。




臨「とりあえず…外、いこ。」




こくりと頷いた●●の手をとり店を出る。●●が飲んだであろうジュースの代金はシズちゃんが払っていたみたいだ。






♂♀





人気の少ない公園のベンチに二人で腰掛けた。●●はまだ泣いていてこういう時にどう接したらいいか分からない俺はとりあえず隣に座って横目で●●を見ていた。





『…泣いちゃってごめんな、さい。なんか、我慢できなく、なっちゃって…ごめんなさい、』




臨「うん、」




ここで俺も謝ればいいのに、変なプライドが邪魔する。こんなときぐらいそんなプライド投げ出せばいいんだ、他人事のように考えて俺はまた黙った。





『先輩は…』





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