BOOK!!
□槍と盾。
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11月26日 日曜日
学校がなくて、今日は一日中雨です。
「ね、ね。正臣、クイズ出すから答えて下さいな。」
正臣のベッドに寝転がって適当に置いてある雑談をパラパラとめくる。オシャレな洋服を着てポーズを決めてこちらを見ているけど正臣の方がかっこいい。そう、正臣はかっこいい。
正「んー?何ー、●●がクイズとか珍しいじゃん。よーし、この紀田正臣が答えてしんぜよう!」
上体を起こして足元に置いてあった鞄の中から少し大きめの封筒を取り出す。さて、かっこいい正臣くんはどんな顔をするでしょうか。
「さて問題です。この封筒には写真がたくさん入っています、何が写っているでしょうかー。」
正「写真?えー、俺と●●のラブラブランデブーな写真とかー?」
「ふふ、ちなみに三択です。」
11月26日 日曜日
学校がなくて、今日は一日中雨で、彼の家に親がいなくて、それはきっと私たちにとっては色々都合のいい状況です。
「1.女の子と浮気してる紀田正臣。2.女の子と浮気してる紀田正臣。3.女の子と浮気してる紀田正臣。」
正「えっ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待った!え?何、浮気?え?てか写真?写真てそれ?え?」
「はい、これぜーんぶ証拠写真でーす。ばーん」
封筒を逆さまにするとベッドの上にたくさんの写真が広がる。
正「これ全部って…ええ、なにこれ」
「なにこれって、ねえ?まあ、綺麗な女の子がいたら声をかける。それがチーム男子のDNAに組み込まれた宿命?だかなんだか言ってたからね。多少のナンパは多めに見てきたつもりだよ。」
11月26日 日曜日
学校がなくて、今日は一日中雨で、彼の家に親がいなくて、それはきっと私たちにとっては色々都合のいい状況です。何をしてても誰にもきづかれません。
「だからって白昼堂々キスだのなんだのするのはちょっと理解出来ないんですけれども?!」
大きい声を出したって誰にもきづかれません。
正「待った!まじで!そりゃまあナンパは認める!いや、そんなしたつもりないけど!でもその、なに?キスとかはない!してない!断じて!」
「ふーん。しらばっくれるんだ、写真あるのに。嘘つくの?」
正「いや、ほんと。何で、」
「ネットでもね、"浮気 男"で検索かけると男は本能的に浮気するものだって書いてあるの。正臣がDNAがどうたらって言ってたのも頷けます。しょうがないものだとね。」
正「ちょっと、●●ちゃ〜ん?」
「でも!ここまで来たら流石にしょうがないよね男の子だもん、なんて言えないし、」
正「●●…?」
「信じたいけど、無理。どうしていいか分かんない。」
正「違うって、ほんとに。これは本当に違うから!俺だってなんでこんな、」
「正臣はかっこいいし友達もたくさんいるし、人気者だから女の子と仲が良くてもしょうがないってずっと言い聞かせてきたの。私なんかじゃ不釣合いなのは最初から分かってたけどさあ、」
泣いてる顔を見られたくなくて膝を抱えて顔をうずめた。
こんな話して私どうするつもりなんだろう。
写真見せて問い詰めて、次は何?
…ああ、そうか。別れるのか、な。
結論に辿り着いたところでさっきから黙り込んでいる正臣を見れば写真を一枚一枚手に取って穴があくくらい見つめている。
どうせなら穴でも開けてビリビリに破ってなかったことにしてください。
正「…一つ聞くけどさこれ●●が撮った写真?」
「え、違うけど…」
正「誰が撮った?」
「わかんない…けど臨也さんって人から貰った」
正「っはあ?!●●あの人とどこで知り合ったの?!」
「えっ…と、駅前で声かけられて。正臣の知り合いだって言ってたから着いてった」
正「もしかしてだけど、家とか行ってないよな?臨也さん家、」
「行ったけど…別に普通の家だったよ、ちょっと高級な感じだったけど」
一度驚いた顔をしてから、はあーっと大きな分かりやすい溜息をついてベッドの上まで体を乗り出して写真を突きつけてきた。あまりの勢いに背中が壁にトンと当たるのを感じた。
正「よく見て。この写真ちょっと不自然じゃない?」
「…ど、こが?」
正「俺いつも●●にキスするときこんな風にする?」
「そんなこと…、」
でもよく見てみれば少し変かもしれない。違和感がある。写真を最初に受け取ったときは気が動転していて全く気づかなかったけれど、
「ちょっと変、かも」
角度とか変な感じ。
正「俺も最初テンパったけど実際これ角度的にそう見えるとこから撮っただけでしょ」
「…うん。そうかも、」
正「俺のこと信じてくれる?」
ぐっと正臣の顔が近づく。近すぎて少しピントがずれた。
「うん、ごめんね正臣。酷いこと言って、」
正「ん、いや俺も勘違いさせるようなことしてごめんな。」
ふれるだけのキスをしてぎゅうっと抱きしめ合えば正臣がゆっくり体重をかけてきて二人でベッドに倒れこむ。もう一度正臣の顔が近づいてきて距離はあと5cm、…
〜♪〜♪〜♪
正「…ちょ、誰だよ。タイミング悪…わ、臨也さんだ」
「出ていいよ、電話じゃないの?」
正「いや、メール…はあ?!」
携帯をしまおうとした正臣を止めれば今度は携帯の画面を見て固まった。
「どうした?」
正「いや、これ…●●臨也さん家で昼寝でもしたの?」
「…あ、そういえばお茶飲んで話してたら」
眠くなってきて寝ちゃったかも、
といえば正臣は眉間に少し皺を寄せて私の手首を強くベッドに押し付ける。
「いたた、正臣…?」
正「他の男の前でうたた寝なんてダメじゃない?ね?●●ちゃん」
「えー…正臣なんかこわいなー、ははは。目が笑ってないよ?」
正「もうちょー優しい紳士な正臣くんはここにいねーから覚悟してね、」
「えっ、ちょ、…んっ」
11月26日 日曜日
学校がなくて、今日は一日中雨で、彼の家に親がいなくて、それはきっと私たちにとっては色々都合のいい状況です。何をしてても誰にもきづかれません。声を出したって誰にもきづかれません。浮気を問い詰めるにも愛を育むにも最良最適の場所です。
ほくそ笑む横槍と努力の盾。
(さっきの臨也さんから送られてきたのって?)
(●●の寝顔!!あの人まじ何考えてんだっての)
(うわ、恥ずかし。消しといてね)
(いや、臨也さんが撮ったのは気に食わないけど可愛いから待ち受けにした)
(………)