BOOK!!


□三歩下がって
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こここここここここここここここここここここれって…っ!?



『俗にいうアダルトビデオ…略してAVってやつですか…!』




見つけてしまったああああああああぁぁぁぁ…!
彼女なんだから気を利かせて部屋を掃除してあげて静雄さんに褒めてもらおうとした私が馬鹿だったー!まさか静雄さんの部屋からこのようなものが!
うわぁ…いや、静雄さんも健全な二十代男子。逆に無い方がおかしいのかな…
そう思ってパッケージを見た。うう、ちょっと罪悪感。




『…ちょっと待った。爆乳ってなんじゃい、おいコラ静雄さん』




パッケージに書いてある明らかな文字の羅列。

"家庭教師は爆乳女子大生"
"爆乳物語"
"爆乳が好きなんだ!"


くっそ!最後の何叫んでんだよ!いっそ清々しいわ!爆乳、爆乳って…Aカップ女子への嫌味か!?ああ、そうですか。はあん…静雄さんはそんなに爆乳が好きだと。彼女の私が貧乳なのが気にくわないと…!




『はっはー。静雄さーん。私に隠れてこのようなものをご覧になっているのね。ははは、私はこんなことじゃ怒らないよ、だって私心広いもん。乳は小さくても私の心はこのお姉さん達の乳ぐらいでっかいし。だから静雄さんに電話しよう』




ふん、怒ってないし。携帯がミシッとかいったの聞こえてないし。ていうか静雄さん早く出ろし。




静《…もしもし、》




あぁ、静雄さんの低い声今日も素敵だ…じゃなかった!爆乳だ、爆乳!




『もしもし。静雄さん、●●です。あなたの彼女のAカップの▲▲●●です』


静《…ん?おう、どうした?》





うわぁ、無視した。Aカップ無視した!Aカップの乳は小さすぎて目にもとまらないどころか聞こえもしないのか…!




『静雄さん、私今静雄さん家にいるんです。お掃除してます。エライでしょ、イイ子でしょ、褒めて下さい。』


静《お…おぉ、ありがとな。助かる》


『…そうですか。助かるんですね。じゃあ静雄さん、これを聞いても同じ事が言えるのかあ゛…!』


静《…?》




静雄さん、私は傷ついたのだよ。
私はビデオの再生ボタンを押す。
リモコンがミシッとかいってる?そんなのもどうでもいいんじゃい…!




『…では、耳の穴かっぽじってよくお聞きくださいね。


"…んぁ、あぁ!だめぇ、ソコ気持ちいいのぉ…あぁ"
《っ●●…!》
…はい、なんですか静雄さん。』




あぁ、静雄さんの焦った顔が浮かぶ。ついでに顔は真っ赤なんだろうなあ。なんて悪い子だ私は。でも…これだけは譲れない!世間一般ではでっかい乳が正義かもしれないけど静雄さんの中では貧乳が正義であってほしいもん!




静《…っ●●、お前それ…》


『見てます。見てますよ、静雄さん。テレビに穴があきそうです』


静《あの、なぁ…》


『静雄さんは、静雄さんはこれ見たんですか?』


静《…、》


『俗にいうアダルトビデオ、略してAV。見たんですか?爆乳を眺めたんですか?』


静《あー、見て…ない》


『見て…?』



静《見…た。》


『そう…ですか。』




見たんだ。いや、見るよ。見るよね、うん。ほら、しっかりしろ私。乳は小さくても心はお姉さん達の乳ぐらいでっかいんだろ。乳も心もちっちゃくてどうする。
でもそれよりも静雄さんが嘘ついた。




『…静雄さんの、ばか』


静《っ●●、》


『っ…ばか。ばか。ばかばかばか…うぅ、ばか。静雄さんやだ…やだやだ。静雄さんなんか…ぅ静雄さんなんか…っ!』




あれ、静雄さんなんか何て言おうと思ったんだっけ。
あれ、なんで私泣いてるんだっけ。
こんなこと言って静雄さん呆れてるんだろうな。ガキだって思われた。ばかなのは私だ。静雄さんに、静雄さんに…

嫌われた。




「っ●●!」


『…ぅえ?』




ばんっと玄関の方から聞こえたと思えばぎゅうっと暖かいものに包まれた。




『ぁ…静雄、さん』


静「●●…何泣いてんだよ、ばか」


『だって…だってぇ…うっ』


静「…俺が悪かった、な?」


『っ…だって静雄さんが、嘘ついた』


静「…ごめんな」


『だって…私はっ、静雄さんが一番すきなのに…』




あーくそ、出てくるな涙。




『っ静雄さんは、おっぱい大きいお姉さんばっか見てて…っ』


静「…、」


『私は、おっぱいおっきくないもん…。でも私、私静雄さんのことすきなんだもん、うぅ…』


静「ごめんな。俺も好きだから、●●…俺もちゃんと、●●のことすきだから。」





こんな風に面と向かって言われたの初めてかもしれない。こんな風にぎゅうっと抱きしめられたのも初めてかもしれない。なんて返せばいいんだろう。あれ、思いつかない。




『…静雄さん、』


静「、ん。」


『くそ野郎。』


静「…は」


『ばか。変態。おっさん。はげ。くそイケメン。足長。おっぱい星人…静雄さんすき』


静「…俺もすきだ」


『…知ってる。』




静雄さんはじっと私を見て少し笑ってキスしてくれた。




『…静雄さん、』


静「ん?」


『私の目、目見てください。』


もう一度静雄さんと目が会う。
うわぁ整ってるなあ。あ、そういえば静雄さん今日サングラスしてない。目綺麗だなあ…




『静雄さん、繰り返し唱えて下さいね』


静「…?何を?」


『"貧乳が好きで好きで仕方ない"
"貧乳ラブ"
"貧乳万歳"
はい、どうぞ。』


静「は?!」


『言えないんですね…静雄さんは爆乳至上主義なんですね…もういいです、ぐすん』


静「あ…ばか、泣くなよ」


『いいです、どうせ貧乳の私は爆乳のお姉さんには勝てませんよ知ってますぐすん』




おおお、静雄さん焦ってる焦ってる。わたわたしてる。




静「…が好きで好きで仕方ない…ラブ…万歳、」


『一番大切な貧乳が聞こえないんですけど。嫌味ですか』


静「…ひん」


『ひん?』


静「貧乳、が好きで好きで仕方ない」


『はい、次』


静「…貧乳、ラブ」


『もういっちょ』


静「だー!くそ!●●の貧乳万歳!これでいいか!」


『上出来です。よくできました、ふふ』






三歩下がって三.五歩位進む
(これは死活問題なのだよ。)


(トムさん、これ)
(おーどうだったよ爆乳のねーちゃんは)
(やっぱ小さくないとしっくりこないです)
(おーおー。●●ちゃん効果か?)
(っす)






 

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