BOOK!!
□始まりと終わり。
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『翔太ー、ぜんっぜん進まないね』
OZのシステム内部に侵入し一夜にしてOZを混乱に貶めた犯人。それが健二くんだという。まあこんなにOZが混乱してるなかでそんな情報正しいかなんて、ねえ。健二くんがそんな子には見えないし。そんなこんなで警察官である翔太が身柄確保をして今は翔太の車の中。
翔「青なのに何で動かねんだよ!」
『知らないよ、まあキレなさんな。ほれほれ』
翔太の髪の毛をサラサラと撫でれば顔を真っ赤にしてうっせえ、とそっぽを向いた。
それにしても健二くんが高校生、むしろ夏希より年下だったとは…幼さは感じてたけどまさかねえ。
夏「戻って!この先60km渋滞!」
理一がバイクに乗って夏希と共に私達を迎えに来た。翔太が車を路肩に寄せ家に帰る、のは良いんだけど…
『なんでまた膝の上なんだー!デジャブー!翔太変わってよ!』
翔「なんで俺なんだよ!」
あーもうまたこんなことにふざけるなよハッキングAIだかなんだか!
理一「…テロかもね」
夏「え?」
『理一、片っぽ貸して』
理一「ん、」
うわあ、この人機密電波盗聴してるよ。やることが滅茶苦茶だなあ。
―
佐「パスワードが書き換えられてて管理棟に入れない!」
帰ってきたら帰ってきたで大変だった。今日集まる筈だった親戚が問題が次々起こり帰ってこれないらしい。あぁ、万里子さん怒っちゃってるし。
『パスワード…あぁ、あの数字の羅列。健二くん、それ解けるんだよね?』
健「え、あ…まあ」
『準備して、』
一度自室に戻りパソコンを持ってくる。休み中にはパソコンなんか触れたくなかったが、仕方ない。緊急事態だし、
佳「そのパソコン、●●さん何する気?」
『んー…、ちょっとパスワードを軽くしようと。ごめんねパスワード解除までは流石にできないんだけどっと。よし、あーまだまだ多いけど頑張れる?』
はい!と潔く返事して計算に取りかかる。流石数学オリンピック日本代表!…になりそこねた子。あぁ、職業柄罪悪感…なんて言ってらんないか、
健「出来た!」
『さっすがー』
それからおばあちゃんが関係各所に一人一人電話をかけてだんだんとOZが復旧してきた。これで終わり…?
―
佳「…時間の問題だと思うよ、師匠」
OZが復旧して皆で机を囲む。にしてもすごいなハッキングAI、ラブマシーン。
うーん。こんなん作れる人って…はは、侘助の顔が頭を過る。まさかねぇ、まさか、ね。
侘「…シシシ、それは無理だね」
待て待て、こんな思考のときに声を出すな侘助。
佳「なんでそんなこと分かるんだよ、!」
侘「シシ、だってそれ作ったの…」
あぁ、やだやだ。
嫌な予感しかしない。
侘「俺だもん、」
まさか、まさかが的中した。
頼彦さん達が侘助と揉み合いになる。顔をあげると侘助もこちらを見ていて目があった。あれ、思っていた目と違う。
克「やめろ!ばあちゃんの前で、」
『…っ』
侘「っ、ばあちゃん今まで迷惑かけてごめんな。俺頑張ったんだ、この家に胸はって帰ってこれるように。」
本音だ、侘助の。本音、
親に褒めてもらいたい子供のような目をしておばあちゃんを見つめる。けど…
侘「これもばあちゃんのおかげだよ。ばあちゃんに貰った金のおかげで…」
それは間違って聞こえちゃうよ。
薙刀をもっておばあちゃんが侘助に詰め寄る。本当はこんなはずじゃなかったんだ
侘「…帰ってくるんじゃなかった、」
夏希が侘助を呼ぶ声がやけに遠く感じる。なんでこんなことに、そう思って空を見上げた。はずだった
『…え、ちょ!侘助!止まればか!』
黙って出ていくかと思えば私の手をひいていった。おいおい、注目の的だよ
『わびっ、…すけ。』
いきなり止まったと思ったら私の方に振り返って抱きしめられた。
侘「●●…俺はどこで間違った。………やっぱ何でもねぇ」
『…そっか、』
安い言葉なんて侘助には必要ないんだ。ほしいのは私なんかの言葉じゃないんだ。
『行っちゃう…んだよね』
侘「あぁ、ばか泣くな」
『…っばかは侘助、でしょうが』
侘「…じゃあな」
私には去っていく侘助の背中を見ることしかできなかった。
―
『…かゆ、い』
あの後散らかった居間をみんなで片付けていたけれど私はそんな気にはなれなくて部屋に戻った。途中でおばあちゃんの部屋に寄れば何も言わずに笑って頭を撫でてくれた。
あの時と同じ、私は無力だ。
『ん?ハヤテ?なんでここに…?』
朝早く、私たちが起きる前にハヤテのお散歩に行くのがおばあちゃんの日課だった。今ちょうどその時間なのに…。くぅん、となくハヤテの頭を撫でる。
『おばあちゃーん、お散歩の時間だよー。ハヤテが待ってるよー』
長い廊下を歩いておばあちゃんの部屋の前に着いて声をかける。くぁと欠伸が出そうになるのを噛み締めてもう一度声をかけた。
『…?おばあちゃん、●●だよ。ちょっと開けるね、…おばあちゃん?』
応答がない。
あれ、なんか違う。何が違う?
寝てるおばあちゃんのそばに膝をついて布団の上からゆすってみる。
え、あれ、なんで、どうして
『え……、っおばあちゃん?おばあちゃん起きて!おばあちゃん、おばあちゃん!』
なんで。
返事をしてくれない。
おはようと笑ってくれない。
『おばあちゃんっ!!っ…誰か来て!誰か…っ!』
返事をして、
おはようと笑って、
いや、イヤ、嫌。
『お願いだから…っ。息、して!』
私の声に気付いてみんなが起きてきた。
克彦さんが心臓マッサージをして、万作おじさんが来て、
それから、それから。
なつきの声が妙に頭に響いた。
万「みんな集まってるか。五時二十一分、」
_
声が出なかった。
みんながおばあちゃんを呼ぶのに私はそれをじっと見つめているだけだった。
息が上手く出来ない。
吸って、吐いて。もう一度吸って、もう一度。だんだん呼吸が短くなる、
理「…●●?…っ何やって、ちゃんと息しろ!」
『り、いち…私が、もっと早く気付い、てればおば、あちゃん助かったかな…私が早くっ』
理「●●!お前のせいじゃない、●●…っ」
『私また…』
独りになる、
羽のない鳥はきっとここから逃げ出せない。