BOOK!!
□04/21 噛み合わない二人。
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静「…あ、」
新「ん?どうかしたの?」
体育の授業が終わって着替えるために教室に帰ってきた頃、静雄くんはカバンをがさがさと漁っていた。新学期が始まってすぐの授業はだいたい長距離走で。体力のない僕にとっては苦痛でしかないが、静雄くんにとってはなんら苦ではないらしい。まあ毎日のように臨也と池袋中を走り回るのとは比じゃないんだろうなあ。
来神学園に入学して二年目、僕は静雄とまた同じクラスになった。なんだかんだで仲良くしている僕たちは5月にしては、陽射しが強いグラウンドから帰ってきた。
新「汗ふかないの?」
静「……や、…タオルがねぇ」
新「………ああ、また」
最近静雄くんの周りでは物がなくなることが多い、いや。実際はなくなっているのではなく第三者から盗まれている、と言う方が正しいのかな?普通に考えて静雄のものを盗めばそれはもう目も当てられないようなことになるんだろうなあと僕は考えていたんだけれど。まあそんなことが起こらなかったのにも理由があって。
新「…懲りないね。●●先輩、」
静「……はぁ」
僕や静雄くんの一つ上の●●先輩。
成績は学年で常に十番以内で、目立つような人ではないけれどふわふわしていて笑うと可愛かった、とクラスの子が言っていたのを聞いたことがある。成績優秀で容姿端麗、周りからの評判も良く理想的な女の子。のはずだったんだけど……
『ふふっ、静雄くん見ーっけ』
ストーカー気質なところがあった。なんの説明もいらず、そのままの意味で。理想的な彼女も蓋を開ければ神出鬼没で、目的のためなら手段を選ばない
静雄限定のストーカー少女。
静「…ここ男子更衣室ですけど、」
『ん?知ってるよ!体育終わりだから静雄くんが着替えてると思ってね、』
隠れて待ってました!と目を輝かせながら敬礼していた●●先輩は成績優秀者とは到底思えない。加えてタオルは静雄くんの匂いがしたと感想を述べた先輩に僕は苦笑する。
静「……●●先輩、出てって下さいよ」
『あー…でも静雄くんが汗拭いてから貰った方が…』
ああ、静雄くんの貴重な汗が頬をつたってる!と恍惚とした表情の●●先輩と大きく溜息をはく静雄の会話は全く噛み合っていなかった。
静「返してくださいよ、それ」
『じゃあ返すから使ったらまた頂戴!』
静「………何でですか、今までのも返してください、盗ったやつ」
『盗ったって、ひどいな!無期限に借りてるだけだよー!』
静「それを盗むっていうんです。」
『ふはは、真剣な顔の静雄くんも素敵だね!興奮する!』
そう言って●●先輩はにこりと笑った。静雄は先程から顔に手をあてていて見てなかったようだけど、周りでちらちらこちらを見ていた男子生徒は顔を赤く染めている。
静「興奮するとかいわないでください、先輩女なんですからね。そういうこと言うもんじゃないっすよ、」
『ええ、照れなくていいよ!あ、照れてる静雄も好きだけど!』
静「照れてないです。全く、」
『ツンデレ萌え!』
飛び出せ!
ストーカーガール。
(これは愛故の行動なのです!)