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□05/18 早起きは三文どころの得じゃない。
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『ふふふ、静雄くんおはよう!』
静「…あ、おはようございます。つか先輩早いっすね、まだ七時半なのに。」
新しいクラスの日直は朝早く行って黒板を綺麗にしたり、一校時の授業の準備の手伝いをしたり、軽く教室の掃除をしなければいけないらしい。
そして俺は今日日直の当番だった。
『だって静雄くんが日直なんだもん!お手伝いもしたいし、一緒に学校行きたいなって、』
朝は弱いけど早起き頑張りました!と多分駅から俺を追いかけて来た先輩はビシッと敬礼のポーズをとっていた。最近よく敬礼されている気がする。
静「あー、ありがとうございます……って何で知ってるんすか?俺が日直だってこと」
『んー?愚問だな、静雄くんよ!静雄くんのことで私が知らないことは静雄くんが寝るときどっち向いてるかくらいだよー』
静「………」
『ふへ、うそうそ。でも冷たい目の静雄くんもかっこいい』
静「…はあ」
『溜息つくと幸せ逃げちゃうよ?ほら、静雄くんとこの担任の野田っち。私去年担任だったからね、日直の当番制度知ってるんだよ。』
当番が回って来たのは静雄くんのクラスの男の子が教えてくれた!と笑った先輩の顔に朝の太陽がきらきらあたって素直に綺麗だと思った。
梅雨だってのに今日はうんざりするくらい晴れている、
『あ、私も黒板消しパフパフするよ』
静「じゃあこっちのお願いします」
『まっかせといてー』
失礼な考えだが、思った以上にちゃんと手伝ってくれるらしい。黒板消し同士を窓の外に手を出して叩き合わせている。
『っ…、うわ、風こっちに…!あ、目に入った!っしず、お、くん!いだだだだだ、いたい!』
静「え、あの先輩、落ち着いて…!」
外から風が吹いてチョークの粉が目に入ったらしい。先輩は慌ていて目をつぶったまま黒板消しを振り回していた。
静「先輩、とりあえず黒板消し置いてくださ…あ、いたっ」
ぶんぶんと振り回していたのは俺の居場所を確認するためだったらしい。俺に黒板消しが当たり居場所が分かったらしくそれを放って腕に縋ってきた。
『わ、ごめん…!っ〜、黒板消しを甘く見てたよ…!いたたた、あ。コンタクト外れちゃった、』
今日のワンデーのやつだったのになあ、と片手で俺のワイシャツを掴んでもう片手で目をこすっていた。
静「あ、だめですよ。擦っちゃだめです。ちゃんと洗わなきゃ、」
『んー、連れて行ってもらっていい?』
いつもなら"静雄くんの筋肉ー!"とか言って近づいてくるのに相当痛かったらしい。水道までつくとバシャバシャと目を洗っていた。そろそろ他の生徒が登校してくる頃だろうか。
『ん…もう大丈夫。ありがとう、静雄くん』
静「いえ。先輩って目悪かったんすね、」
『そんなんだよねー、結構悪くってさ。コンタクトしてないと歩くの怖いくらいで。』
いひひ、と先輩は笑っていた。何がいひひなんだろうか。そんなことなら今日一日過ごすのに支障をきたしてしまう。
静「…すいません、俺が手伝わせたから」
『えええ?!なんでそうなるの?!勝手に来て勝手にやっただけだからね!静雄くんは何も悪くないよ…!』
静「でも…」
これから授業だってあるのに、テストが近いからノートだってちゃんととらないといけない。朝話していた感じだと今日は体育があるらしい。歩くことさえも怖いなら体育は出来ないだろうし、
『あ、じゃあ!』
静「?」
『教室まで送ってほしいなって。あ、何なら帰りも一緒に…なーんてね。えへ、』
静「え、そのつもりっすけど…」
『うん、だよねー…って、え!嘘?!いいの?え?!』
こくりと頷けば、うわぁとぽかんと口を開けたまま空を見ていた。
『じゃ、じゃ、じゃあお願いします…!』
静「うす…あ、荷物持ちますよ。」
『え、何その紳士的行為…!素敵だあああ』
静「あ、先輩そっち壁です…!」
『いでっ!』
朝一ランデブー?
(たんこぶは逢瀬の印。)