BOOK!!


□いじける、甘えられる。
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『夏だよね、夏なんだよ。ねえ臨也聞いてる?』



 臨也の部屋から外を眺める。こんだけガラス張りだと太陽の光がたくさん降り注いで暑くなるだろうに。光熱費洒落になんないよなあ。



臨也「聞いてるよ。」

『反応してくんなきゃつまらない。ねえ臨也、夏だよ』



 はあ、と臨也は溜め息をはいてやっとこちらを見てくれた。


臨「あのねぇ、もう夏は暦からすると終わるんだよ。あと少しで9月なんだから。」

『知ってるよ』

臨「じゃあ何事?」

『夏と言えば…?』

臨「……は?」



 呆れてる、呆れてる。臨也呆れてるよ。うっざ、臨也の顔うっざ。



『だーかーらー夏と言えば?』

臨「無駄な暑さ」

『違う!…違くないけど!』

臨「もう何なの?そろそろめんどくさい」

『情報屋さんなのに彼女の考えてることくらい分からないの?』



 ばか。臨也ばか。もうこっち見るなばーか。心の中で悪態をついてそっぽを向く。私めんどくさいやつだよなあ、



臨「今すごい失礼なこと考えたでしょ。いじけないでよ、」

『…めんどくさいから?』

臨「勝手に解釈しないで。ほら、おいで」

『……臨也がこっち来て、』



はいはい、と言って私の後ろにまわりぎゅうっと抱きしめられる。



臨「で、結局何だったの?」


『やっぱ分からないんじゃん!もう臨也いい、静雄さんと行くもん。静雄さんに着てもらうがっ…!』



 話している途中に口に指を入れられた。どういう状況だ、これは…!



『い…いひゃりゃ?ひゃへりにぎゅ』


臨「…ばか」


『っは、何事だい臨也さんよ』


 ぽそっと呟いて指を抜いてくれた。そのまま私の服を握って肩に顔をうめた。うええ、唾ついちゃったじゃん。



『臨也、』

臨「なんで俺といるのにシズちゃんのこと考えてんの、むかつく」


『え、っと…ごめん。』

臨「次はないからね。はい、じゃあもういいでしょ。言って、」

『ぅ………はい。えっと、来週のお祭りに臨也と浴衣着て行きたいです、はい。』



 臨也が固まってる。見えないけれどなんとなく肩越しに分かった。臨也にとってお祭りはNGワードだったのかなあ、



『あの、別に嫌なら嫌で…』

臨「…分かった。」

『は…?』

臨「だから行くって言ってんの。でも浴衣持ってないから買いに行く。それでいいよね、」

『あ、はい』

臨「いい子だね、」

『はい、いい子です』



 これは、なんという事態だ。
ぐりぐりと頭を押し付けられる。臨也の細い髪の毛が首筋にあたってくすぐったい。



臨「●●〜」

『…おうふ』



夏の暑さでついに頭がいかれたのかな。



『甘えたさんだね、』

臨「うるさい」



けれど臨也から甘えられるのもいいかもしれないと思った夏の終わりの昼下がり。






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