BOOK!!


□05/18 ガールズではないよトーク。
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静「くっそ、俺は体育祭実行委員じゃなくて安全委員だろ」

新「静雄が安全委員とかちょっと矛盾して…いひゃい!いひゃいよ、しるお!」



予定表を確認すれば明後日は体育祭だった。この学校は前々日にテントやら備品の用意をして前日は全体確認、そして当日を迎える。そんな流れだった。わざわざ高校の体育祭で全体確認なんていらないと思うけどなあ。



新「はー、でも静雄も災難だよね。クラスの体育祭実行委員が盲腸で入院って、タイミング悪すぎでしょ」

静「ああ、ジャンケンに負けたの含めてな。じゃあ新羅、お前は向こうのスプリンクラーの調子見てくる係りな、」

新「ええ?!道連れなの?!」



そう言うとじゃあこのテントの骨組み運ぶか、と静雄が重そうな鉄の棒を何本も持ち上げるもんだから反論するのはやめた。僕がやったら何往復もかかりそうだし。というより委員じゃない僕が道連れにならない方法はなかったんだね。とほほ。



新「こんな場所のスプリンクラー動かしてもほとんど木に当たっちゃうだけなのに。」



静雄に渡された地図を見てそんな独り言を呟く。仕方なくスプリンクラーの確認をしようと校庭の隅まで来るとそこには先客がいた。



新「…あれ、●●先輩?」

『ん?あ、その声は静雄くんのマブダチの新羅くんだね!』

新「マブダチって…」



今でもそんな言葉使う人いるんだとつっこみたくなったが、少し先輩の様子が変なのでやめておいた。



新「、?先輩どうかしたんですか?なんか見えにくそうですけど」



僕の方を向いた時も座ってはいたけどぐっと首を伸ばして目を細めていたからおかしいと思った。今までこんな感じだったっけ、



『えー!分かる?実は今朝ワンデーのコンタクトをダメにしちゃって…今ほとんどはっきり見えません状態なのよー』

新「へえ。先輩って目悪かったんですね、」

『ふふ、静雄くんにも同じこと言われた!』



そう言えば、今日は静雄のなまえがあまり出てこないなと思う。いつもならTPO関係なく静雄に夢中になってしまうのに。



新「あーえっと、静雄は向こうでテント組み立ててますよ。臨時の体育祭実行委員になっちゃって…」


『ええ?!私も体実だよ!うわ、委員会一緒なんて運命なのにコンタクトのせいで一緒に準備出来ないなんて…!泣きたい』


けど静雄くんには力作業が似合う、と落ち込んだと思えばすぐにうっとりとした表情になった先輩はやはりいつもの先輩だった。



新「え、じゃあ先輩ここのスプリンクラー係りですか?」

『え、うん。新羅くんも?』



それからここに来た経緯を話せば、早く終わらせて静雄くんを見に行こうということで一致した。 僕は前者だけなんだけど。



新「えーっと…まずは蓋を開けるって書いてあります。開きます?」

『うんともすんとも開きません!』

新「えー…あ、ほんとだ。びくともしない。」



うわあ、前途多難。
先輩は静雄の名前を連呼しだすし(こんなんだったら静雄の話が出てくるまで待つべきだったと思う。)、相当目が悪いらしくあちこちで木にぶつかったりつまづいたり。



新「じゃあ先輩取っ手の左側持ってください。僕が右側持つんでせーのであげましょう。」

『了解した!』

新「いきますよ、せーのっ!」



ばこっ、ぶしゃー

…………。どうやら、今学校全体で水の出を確認したらしい。遠くから周りの人大丈夫ー?という先生の声が聞こえる。僕らは全く大丈夫じゃないよ。目の前に居たんだから全身ずぶ濡れさ、



『……おうふ。新羅くんぐっしょりだね、』

新「ですよねー」

『うーん……みんなのとこ行って着替えてくるかっ…くし!』

新「あ、先輩僕のジャージ着てください。風邪ひきますよ、これ置いといたから濡れてないですし」

『いやいや、新羅くんが着なさいな。私は大丈夫だか…』

新「あ…、だだだだめです!着てください、早く!」

『えっえっ何事?』



いいから!と半ば叫ぶように言って先輩にジャージを着させる。何だ、このベタな展開。上着を着ていなかった先輩の下着がくっきりと透けている。あ…こういうのセルティにやってほしい、



『ん、新羅くん?』

新「あ、すいません。強い口調になっちゃって…」

『いや、大丈夫だよ。むしろありがたいんだけども…どしたの?』



えーっと…と言葉がつまる。正直に言ってしまうのもいかがなものか。



新「えーっとですね、ほら。風邪ひいたら先輩が静雄に会えなくなっちゃうなーって…ははは。」

『っ新羅くん……!君が天使に見える!ありがとう!』


新「あは、それほどでも。」



きらきらした目で見てくる先輩に少し罪悪感が募る。それから服を乾かすためにその場で日に当たることにした。



『ねえ、新羅くん』

新「ん?なんですか?」

『新羅くんってさ彼女いるでしょ。』

新「えっ、」



あれ、セルティの話したことあったっけ。というよりなんでこんな話になった?今静雄の筋肉の話ししてたよね…?



新「あー。一緒に住んでるんです、今」

『まじでか。同棲とな…!うわ、先輩だー!』

新「えっと、なんで分かったんですか?僕そんな話ししましたっけ、」



首を傾けて先輩を見てもんー、とかおー、とか微妙な返事しか返ってこなかった。が、視線を投げかけると笑って話し始めた。



『いや、なんか新羅くん女慣れしてるなーって思ってね。あ、勿論いい意味の方でね!静雄くんの得体の知れないストーカーにでさえも優しいのだなあと……えっとなんか変なこと言ってごめん』

新「え、いや謝らないでください!得体の知れないなんて思ってませんし…」

『ほんと?ふふ良かった、私静雄くん愛が大きすぎて引かれてたらどうしようって思ってたんだー』



安心した!と言って先輩はすぐに笑顔になった。でもごめんなさい、ストーカーだとは思ってます。



新「あ、そういえば先輩ってなんで静雄のスト……静雄のこと好きになったんですか?」

『お!聞いてくれますか、新羅くん!』



元々気になっていたからこの際だし聞いてしまった。流れ的にも自然なはずだし。危うくストーカーと言いかけたけれど、



『今でもハッキリ覚えてるんだけど、1番最初は電車の中で会ったんだよね』



心なしか先輩の顔が先程よりも緩んでいた。こうやって見るとストーカーになんて全く見えないのに、



『その時私今よりも髪が長くてね、いつも結んでたんだけどその日はちょっとまあ…寝坊しちゃっておろしたまま電車に乗ったのよ。』

新「へえ、先輩髪長かったんですね!」



今は肩くらいに切りそろえてあるからその後切ったのだろう。さらさらと風になびく髪が綺麗だった。



『うん、胸くらいまであったよ!でね、一本遅かったから満員で…もみくちゃにされてるうちに髪の毛が引っかかって取れなくなっちゃったんだよね。』




それを取ってくれたのが静雄だったらしい。正確にいえば髪の毛が静雄のワイシャツのボタンに引っ掛かって取れなくなったみたいだけど。



新「…え、それだけ?」

『違うよ!最後まで話聞いて!』



先輩に胸ぐらを掴まれて首が絞まり変な声が出た。なんか●●先輩と静雄ちょっと似てると思う(ちょっと暴力的なところが)、なんて言ったら調子に乗るだろうから黙っておくけど。



新「で、何でしたっけ。…引っ掛かっちゃって、」

『そう!それでどうしても取れなかったから、切ってくださいって静雄くんにちっちゃいハサミ渡したんだけど』


こくりこくりと頷く。先輩はふぅと深呼吸した。静雄は何したんだろう、ちっちゃいハサミぶっ壊してその怪力に惚れたとか?……こんなこと言ったらなんか静雄に怒られそうだから辞めておこう。



『私の髪じゃなくて静雄くん自分のワイシャツのボタンを切ったの。本当は髪の毛切ってって意味だったのに、綺麗な髪だからもったいないって………』



だんだん声が小さくなったと思って先輩の顔をのぞけば、しゅーっと音が出そうなくらい顔が真っ赤だった。思い出し赤面…?
にしても、静雄が。あの静雄がそんなフェミニストだったとは。まあ無意識の行動なんだろうけど、



『あー思い出したらすごく静雄くんに会いたくなった!そろそろ行こう、新羅くん』



そう言って僕の手をとってにこやかに歩き出した、が先輩は目の前の木に正面衝突した。



新「え?!大丈夫ですか?って先輩そっちも木です!」

『ぅおっ?!もう何ここ!木多すぎない?森かっての!』

新「いや、木3本しか立ってません!」

『まじか』




馴れ初めと言いますか。
(さてどちらが輩なのか、)




(おい、新羅終わ…あ。)
(?!静雄くん来てくれたの?!)
(色々あったけど終わったよー)
(って先輩が着てるの新羅のジャージっすよね)
(うん、貸してくれたのー)
(へぇ、…おい新羅。これ持て、)
(え、無理無理…!ぐは、っ重!)
(じゃあ私静雄くん持つー!)
(?先輩それ俺じゃなくて木です)





 

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