BOOK!!
□平和島家長女です。
1ページ/1ページ
『こら静雄!またびりっびりじゃない、ワイシャツ。もー』
静「だから悪りぃって…」
『ほら、泥も付いてるしお風呂入っておいで』
静「ん、」
高1の俺の5歳上の姉、
不本意ながら習慣のようになってしまった臨也との喧嘩のあと家に帰れば大学から帰ってきた姉にいつも怒られる。ナイフやらなんやらでできた制服の切れ目を縫うのは大変らしい。いつもブツブツ言いながら縫ってるし。
そう言ってはいるものの次の日になればきれいになった制服がハンガーにかけてあるのを見ると素直に嬉しい気持ちが湧いてくる。
『静雄ー、タオル持ってきたよ』
静「は?!な、いいいきなり入ってくんなよ」
『はい?!何言ってんの、タオル持ってきたの。』
静「えあ、あぁ…ありがとな。」
脱衣所に入って服に手をかけたところでいきなりドアが開き、タオルを持った姉が入ってきた。すぐに出ていくと思い、少し様子をうかがっていたが出て行く素振りが全くない。
静「…出ていかねーの?」
『え?何で出て行くの?』
静「いや、…俺風呂はいるし」
『うん、知ってる。だから来たんじゃん』
静「…は?」
姉には少し掴めないところがあった。
飄々としていてたまに突拍子もないことを言う。今のがそれだ。一応お互いに"お年頃"な訳だし、そういう気が無くとも、風呂場に2人きりはまずいのではないかと思って出て行くように促したつもりだった。
それになんかちょっと気恥ずかしい気もしなくもないし…
『あ、何?恥ずかしいの?』
静「ぶっ!んなこと言ってねーだろ…!」
『はは!そんなムキになるなってー!静雄血管きれちゃうよー?』
静「切れねぇだろ…」
『ふふ、よし!髪の毛洗ってあげるから早く脱ぎな。静雄手も少し切れてるから痛そうだし、』
静「…は?」
『さっきから"は?"しか言ってないよ?』
静「いや、だって…」
『大丈夫、大丈夫。男の裸なんて見慣れてるってのー』
静「……」
呆然、茫然、ぼうぜん。
姉の口からそんな言葉が出ると思わなかった。
裸を見慣れてるってのはつまるところそういうことだよな、
身内の、しかも姉から聞くとどう対応していいのか分からない。ちょっと…いや、かなりショックだった。口には出さないが慕っている姉がまさかそんな風になっているとは、
『髪の毛砂でがっさがさだね。』
静「…」
少し抵抗したものの結局大人しく髪を洗われている。が、そんなことはもうどうでもいい。さっきの発言がかなり効いたようで全く他のことが考えられなくなった。
『臨也くんとはさ、もう少し仲良く出来ないの?』
静「ああ、」
『静雄は仲良くしたいと思ってるの?』
静「ああ、」
『じゃあ今度うちに呼べば?』
静「あ…は?何で臨也をうちに呼ぶんだよ。あいつはいつかぶっ殺す。」
『…?静雄話聞いてなかったでしょ。適当に相槌打ってたな、このやろ』
静「え、…悪りぃ」
そういうとシャンプーで髪を洗いながら姉はため息をついた。
どうしよう、もういっそ聞いてしまえばいいのか。でも変に思われたらどうしよう、
『何、静雄。さっきからぼーっとして、…あ。さては好きな子でもできたか!気になってる子?もしかして彼女?』
静「…あのさ、」
『うん、なにー?』
静「さっき見慣れてるって言ったのはつまり…そういうことなのか?」
『え?そういうこと…?…どういうこと?』
姉、強し。
ここに来て鈍感になるとは。
察しろよ、なんとなく。身内とそんな下世話な話したくないだろ。
静「いや、だから…見慣れる程ヤってんのか。男と、」
『ヤって……ぶっ!いやあ、さすが思春期!考えることが下っぽいね!』
静「…何笑ってんだよ」
笑われるとは予想外だった。
が、この様子だと俺の予想は外れたらしい。あーなんか安心した、と同時に恥ずかしさが込み上げて顔に熱が集まる。
ていうか下っぽいって何だよ、
『違うよ、私大学で運動部のマネージャーやってるから着替えとか普通に外でしてるの見て慣れたってこと』
静「…」
『お、さては静雄安心したな?良かったねえ、姉のビッチ疑惑が晴れて』
静「うるせえ、そんな話すんなよ。女だろ…」
『はは、静雄顔真っ赤!我が弟は初心だねー、…あ。ちょうど幽帰ってきたみたいだしあとは自分で流せるよね、じゃ。』
静「、っおい!」
お騒がせSISTER。
(幽おかえりー)
(姉さんただいま。…で兄さんは何でタオルだけ巻いて顔赤くしてんの?)
(え…あー、いや、)
(ちょ、聞いてよ!静雄に髪の毛洗ってあげるって言ったらさー!)
(ああ、だからか。)
(静雄ったら思春期真っ盛りすぎてね!)
(…今日から一週間姉さんに近付いちゃだめだからね、兄さん)
(は?何でそうなるんだよ…!)