短編

□お見舞い
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久々に風邪をひいた。
何とかは風邪をひかないって言うから大丈夫だと思ってたのになー。

窓の外を見るともう日が沈みかけていた。

今日一日学校を休んで、もう熱も下がってほぼ元気になった。

学校を休めるのは嬉しいっちゃー嬉しい。
だけどずっとベッドの中にいるということにももう飽きた。
それに景吾にも会えない。


もう一度毛布をかぶる。
するとだんだん近づいてくる2つの足音が聞こえた。
そしてノックと共に母の声がした。

「亜紀、跡部君がお見舞いに来てくれたんだけど。開けてもいい?」

え、今パジャマだし髪もボサボサだし…。

「ちょっと待ってっ。でも少し話したいからそこに居てもらって。」

ドア越しでもいいから声が聞きたい、そう思った。

「わかったわ。私は夕ご飯の準備してくるわね。」

そう言うと多分母であろう足音がだんだん聞こえなくなっていった。

「亜紀、もう大分よくなったらしいな。」
「うん。」

景吾の声…。

「…花と果物持って来てやった。開けるぞ。」
「ちょっと待っ…」

私の声も聞かず部屋の扉が開き景吾が入ってくる。

「俺様に『待て』なんて命令するとはいい度胸だな。アーン?」
「だってパジャマだし、髪もボサボサだし…。それに風邪うつしちゃダメだし…。」

そんな言葉とは反対に景吾に会えて喜んでいる自分が居る。

「そんなことは関係ねーよ。俺はお前の顔が見たかったんだよ。…ホラ、花と果物だ。」

そう言って渡されたのは大きな花束といろいろな果物が入ったカゴ。

「あ、ありがと。」

正直、風邪ごときで…。
と思ったけど彼の気遣いが嬉しかった。

「明日は学校来れんのか?」
「うん。もう熱も下がったし、行くつもりだよ。」
「そうか。まぁ無理すんなよ。」


「あんまり長居しても悪いからな。そろそろ帰る。」
「そっか来てくれてありがと。」

…おでこに柔らかい感触。

「完全に風邪が治ったら唇にしてやるよ。」

彼はニヤリと笑いながらそう言い、部屋を出て行った。

-end-

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