短編
□所詮そんなもの
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同じクラスの亜紀は箱学自転車競技部のマネージャーだ。
なんでも2年の葦木場のことが好きらしい。
亜紀は背が低いから高身長に憧れるのはわかる。
だけどあんな天然巨人のどこがいいのか…。
あいつは休み時間になると俺の前の席に座って話をしてくる。
ほら、今日も来た。
「荒北くん聞いてよ!昨日ね、拓斗くんと話したの!」
俺のことは苗字で呼ぶのにあいつは名前かよ…。
「フーン。それで何話したのヨ?」
「『もし俺たちに子供ができたら身長はどうなるんですかね?』だって!」
あいつは天然だから深い意味もなく言ったんだろう。
「本当に拓斗くんって可愛いよねー。」
それは弟的な可愛さじゃないのか、俺はその言葉を飲んだ。
俺があいつの気持ちを否定したいだけなんだろう。
俺は「アー。」とか「フーン。」とか適当に相槌を打つ。
それでも亜紀は楽しそうに話を続ける。
何で俺なんだ。話くらい誰にでも聞いてもらえるだろ。
なんで俺がこいつの話なんか聞かなきゃならないんだ。
亜紀の照れる姿やはしゃぐ姿、普段は見られないあいつの顔を見られて嬉しい反面、辛くもあった。
俺が気持ちを伝えたらこんな姿も見られなくなってしまうんじゃないかと思うと怖い。
だったらこのままでいいのかもしれない。
-end-
→あとがき