短編

□赤い愛
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※主人公が病んでます。


「蔵ノ介、痛い?」

僕の部屋にて、いつも巻いている包帯を外した蔵ノ介の左腕を前に僕は聞く。

「ん、大丈夫やで。」
「そう?せやったらもっとやっていい?」

答えを聞く前に手に持ったカッターを蔵ノ介の左腕に這わせる。

「いつ見ても蔵ノ介の血は綺麗な色しとるなぁ。舐めてもいい?」

蔵ノ介は眉間に皺を寄せたままやった。
その痛みに耐える顔も好きや。

僕は蔵ノ介の腕に顔を近づけ、ぴちゃぴちゃと傷口を舐める。

「僕このまま吸血鬼になってまいそうやわ。一生蔵ノ介の血舐めやんと生けてけへんかもしれん。」
「ホントに?嬉しいわぁ。」

そう言って微笑む蔵ノ介。
めっちゃ可愛い。

「じゃあここも切ろっかなー。」

もう一本、さっき切った近くに線を入れる。

僕は傷つけるのは左腕だけって決めてる。
周りの人に見つかったらマズイし、何よりも蔵ノ介からテニスを奪いたいから。
左が使えんなったら右を使うようになるかもしれんけど、今の蔵ノ介は左腕が大切やから。

もちろん僕はどんな蔵ノ介やって好きやからテニスしとる蔵ノ介も好きや。
やけど僕は蔵ノ介からテニスを奪いたい。
僕以上に好きな物なんてなくていい。
やから蔵ノ介の腕を傷つける。

テニスが出来んくなればいいのにってたまに思う。

そんなこと言ったら嫌われてまうやろうから言わん。
やけど蔵ノ介は勘が鋭いから気付いてるんちゃうかって思うことがある。
蔵ノ介は優しいから気付いても言わんのとちゃうかって。

「もっと声出していいんやで?僕、蔵ノ介の声聞きたいし。」
「でもあんまり大きい声出すと眞紀の親御さんにバレてまうやろ?」

流石や。
そんなとこまで気を配れる。

「やっぱめっちゃ好きや。」
「そんなん俺もやで、眞紀。」

そう言って蔵ノ介は右手で頭を撫でてくれた。

僕は一生この人を離さん。
絶対、何があっても。

-end-

→あとがき
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