その他
□忙しくても
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今日も仕事がギッシリ埋まって休む時間がなかったなぁ、そんなことを思いながら、僕は長らく帰っていない自宅へと向かった。帰っても食事も睡眠もろくに摂れない日々が続いているけど、そんな弱音を吐いている暇は無い
しばらく車に揺られて自宅に着いた。車から降り、玄関に向かい、扉に鍵を差し込んで開けた、ここまではいつも通りだった
「あれ?」
誰かの靴がある、誰のだろうと思考回路を巡らせながら家に入り、いつものようにソファーに寝転がろうとしたその時…
「お疲れさまです、ハヤト」
聞き覚えのある声に、似ているけどどこか違う音色、顔の表情も異なるけど僕にとっては大切な人…
「え、嘘、トキヤ…?」
「嘘に見えますか?」
ここにいない筈の人物、だってトキヤは今忙しいから来られないって言ってたから、目の前にいるのが驚きだった
「トキヤは今忙しいから来られないって言ってたのに、なんでいるの?」
「今日明日はOFFなので、久しぶりに顔を出してみましたが、この部屋の散らかりようはなんですか」
「え?あ…」
そこには脱ぎ捨てたであろう衣類に洗っていない食器、カップラーメンのゴミなどが散乱していた
「もう少し清潔にしてください、帰ってからもこれくらいは出来る筈ですよ」
「はい…」
早速怒られてしまいました
「…とは言っても、あなたも大変なのはわかっているので、今回はこれくらいにしておきます」
「……トキヤがあまり怒らないのって珍しいね」
「ハヤトの今の生活を見ていれば、忙しくてまともに手を付けられないことぐらいわかります」
意外に吃驚した、トキヤは僕のことを見てくれてないって思ってた、トキヤはいつも叱ってくるし呆れたように溜め息をする…それに、恋人だと言うのに、恋人らしいことをすると嫌がるから、嫌われてると思ってた
ちゃんと…見てくれてたんだ
嬉しさのあまり、勢い良くトキヤへ抱き付いた、いきなり抱き付かれた当の本人は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ
「ハヤト…?」
「ううん、なんでもないよ、トキヤ…ありがとう」