トキヤ×音也

□奇跡が起きたあの日
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 周りの人が騒いで、 救急車のサイレンが響いていた、 数分前に一緒に話をしていた相手が…自分の目の前で人が体が浮いた、 自分を庇うため、 自らの命を捨てるように…


…なんで?


 音も無く頬を伝い落ちていく雫は、 絶望的に見えた。 どうしてこんなことになってしまったのか、 目の前には血の海が広がっているのか、 血の上にピクリとも動かなくなった体が転がっていた、 全く思考がついていかない、 突然、 視界が暗くなった、 そして…意識を手離し、 その場に倒れ込んだ



◇◇◇



 気付いたのが病院のベットの上、 クラクラする頭を無理矢理叩き起こし、 どうしてここにいるのかを考えていた。 自分の周りにいる看護師はよかった、と胸を撫で下ろしていた



「トキヤ…」



 ボソッと呟いた名、 先程まで一緒にいた人の名前…今は何処にいる? 何で自分はここに居るんだと考えていた。 完全に意識が戻ってきた時、 音也が咄嗟に看護師を呼び止めた



「トキヤは…?俺と一緒にいた人は何処にいるんですか…? ねぇ……何処にいるのっ…!!」



 必死になって看護師に問いていた「手術中ですけど、 もうそろそろで終わる頃ですよ」そう言われて、 居てもたってもいられなかった。 気付いたら自分の足が勝手に動いて、 さっき聞いた手術室へと足早に向かっていた

 着いた頃には、 もう手術は終わっていた。 音也は手術担当の人に走り寄り、 ガシッと白衣を必死になって掴んでいた



「トキヤは…無事なんですかっ…?」



 大丈夫だよと頭を撫でてくれた、 そこでホッとした



「しかし…」



 ドクン…



 嫌な予感がして止まなかった



「意識が戻っていないんだ、 意識が戻るのはいつになるか私にもわからない」



 その言葉を聞くまでは



「成功したんですよね…? なんでですか!!」

「この病院に運び込まれてきたとき、 すでに大量の血を流血していたから、 助かったぐらいが奇跡なんだ、 最悪…」



 それ以上…聞きたくない



「もう二度と、 目覚めないだろう」



 自然と涙が込み上げた、 ポタポタと床に落ちていく。 それって…もう会えないってこと? 大好きな声を聞くことも、 俺のことを優しい目で見つめて微笑んでくれることもなくなるってこと…? そんなの嫌だ…っ、 嫌だよ……ッ!



「どうにか、 ならないんですか…?」

「こればかりは医師である私にもどうにもでしません」

「そんな…っ」



 トキヤがいなくなったら…そんなこと考えてもいなかった、 もし…このまま目を開けなかったら…永遠に会えないの…? そんな思い浮かべたくない言葉が次々と浮かんでくる、 そんな事ばかり考えていたら、 頭が急に真っ白になり、 気が付いたら目の前に翔や真斗たちがいた



「お、 音也…大丈夫か?」

「気をしっかり持ってください」

「みんな……」



 心配そうに音也を見つめていた、 そんな優しさが嬉しくて、 今日で何度目かわからない涙を流した、 声を殺して泣けなかった



「うっ…、 トキヤが…トキヤがぁ…目が覚めなかったら…このままいなくなったら……っ、 嫌だぁっ!」



 泣いても泣いても枯れることを知らない涙、 真斗は音也を優しく抱き締め背中を撫でた。 その後、 どのようにして寮に帰ったか覚えていない

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