長編
□cruel destiny第0章
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〜昨夜〜
夜空には雲ひとつ無く、月光がウータイの町を照らし、もの騒がしい昼間とは違い辺りは粛々としていた。
が、しかし…
ブシャァァァァァァァァ。
静かな夜の終わりを告げるように町中に鮮血が飛び散り、男のかすかなうめき声が上がった。
「止めろぉぉぉぉぉぉ!!俺が何をしたっていうんだ!!」
と男は目の前にいる「彼」に向かって叫んだ。
男はさきほど見事に足の腱を切られたらしく、地面に足を投げ出すような格好で「彼」と向き合っていた。
男の腱を切った「彼」は男の悲痛な叫びを無視し、男の左腕を容赦なく反対方向に折り曲げた。
ゴキ バキ
鈍い音が町に響き渡る。
男は腱を切られたときと同様に、激痛のあまり目をかっと見開き、声にならない悲鳴を上げた。
「分かった。俺が悪かった。だからもう見逃してくれよ!アンタも俺と同じ人間だろ、もうこんな事は止めようぜ!!」
男は涙でぐしょぐしょになった顔で「彼」に再び掠れた声で叫んだ。
すると、どうした事か「彼」はまるで蝋人形になってしまったかのように動きがピタリと止まった。
そしてそれから暫くのあいだ沈黙が続いたが、「彼」は身じろぎひとつする事は無かった。