オルディナリオ

□きっかけは落とし物
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食堂で男にしては高い悲鳴のような歓声が上がる。

「雲仙様だ。今日もカッコいい」
「雲仙様とお話ししてみたいなぁ」
「親衛隊が居るから無理だろうけどね」

食堂に訪れた皇莉に向けられるのは何時もと変わらない賞賛の声だ。
皇莉はそんな声など気にも止めずに役員専用テーブルに向かった。
その途中、皇莉はとある生徒を見つけて眉を寄せた。
その視線の先にいたのは肩口より少し下に伸びた黒髪を尻尾のように一つにくくり、友人らしい生徒と話して楽しげに笑う平凡な顔立ちの生徒だった。

「雨宮」

彼の名前は雨宮晴也(あまみやせいや)だ。
彼を見て皇莉が眉をひそめたのは二人が犬猿の仲だからだ。
とは言っても皇莉が晴也を一方的に嫌っているだけなので面識はあまりない。
皇莉は進学科で晴也は商業科とクラスが違うし、生徒会長である皇莉に対して晴也は風紀委員長だ。
人気投票で決まる生徒会と違って風紀は完全実力主義で水と油のように相容れないのだ。
それにこの二人は家同士も犬猿の仲にある。
だから面識が無くとも皇莉は晴也を嫌っていた。


「晴也、会長またお前のこと睨んでるぜ?」

晴也の隣に座る友人が苦笑を浮かべながら言ってきた。

「本当だな。毎回睨むの止めて欲しいんだけどなぁ」
「そりゃ無理じゃね?だってお前の家と会長の家仲悪いし」
「親同士のことで俺に当たられてもなぁ。仲良くしてくれとは言わないけど、睨むのは止めて欲しい」

溜め息を吐き、晴也は食事を終えて食堂から出て行った。
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