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□ありがとう
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「やっと…終わったんだな…」

「はい。これでLBXはみんなの夢と希望に戻りました」

「嬉しいけど…さみしいね」

ミゼルを倒して、俺たちは平和を取り戻した。世界中の仲間のもとにLBXが戻って、笑顔が戻った。それはとても幸せなことで、俺がずっと目指していたものだった。LBXが戦いの道具にならない。そんな世界を作るために俺たちは今まで戦ってきた。

「ああ…」

でも、この戦いが終われば「さよなら」が待っている。俺たちは戦いのために集められたから。ただLBXが好きだから集められたわけじゃない。

「荷物まとめろよ」

そんな指示が聞こえてさらに俺たちは別れを実感した。日本に戻れることは嬉しい。母さんや父さんとまた一緒に暮らせるんだ。アミやカズとまた一緒に学校に通って、郷田や仙道ともたまに遊んで、拓也さんのところに新しいLBXを見に行ったり。ヒロやランと言う仲間だって日本にいる。今まで通り、もしかしたらそれ以上の楽しい生活が待っているというのに。なぜか、心に引っかかる。

「日本に戻ったらまた勉強かー」

カズがそんなことを漏らした。アミはいいじゃない。と笑っている。勉強が嫌なのだろか。違う。日本に帰ってしまって、本当に普通の中学生に戻って、それは幸せなことなのに。ただの別れじゃないような気がして、そんな気がして、なぜかとっても切なくなる。まだこのメンバーで旅をしていたい。世界中のまだ見に強敵と戦ってみたい。

「俺…」

「バンくん!今日はね、ジェシカくんが最後の晩餐だって、ご飯が豪華だよー」

落ち込む俺を察したのかユウヤが話しかけてきた。最後の晩餐か…。今日今から食卓を囲めばもう明日にはさようならだ。なんだか一人で泣きそうになって、ぐっと拳を作った。
世界を守って、LBXを救って、これでいいはずなのに。なのに。悲しいことじゃないのに、嬉しいことなのに、なんで、俺は…。

「バンさん!」

「ヒロ…」

「もう、なんて顔してるんですか…」

そう言って苦笑するヒロ。俺、きっと今ひどい顔してるんだろうな。ごめん、とつぶやけば、もうみんな待ってますよ!なんて言って俺の腕を引っ張る。
やめてくれ。今行ったらきっと俺は泣いてしまう。別れたくないと喚き散らしてしまう。だから、今は…!

「ヒ…ッ」

「バンさん、今まで本当にありがとうございました」

そう言ったヒロの目には少し涙が滲んでいて、最初に会った頃には想像もできなかったような愛が溢れた微笑みをしていた。
みんなさみしいんだ。
そう思った。俺だけじゃないんだ、きっとみんなもさみしい。だからジェシカだって豪華なご飯を作ってくれたのかもしれない。ユウヤだって、みんなのところを回っていたのかもしれない。俺は今まで沈んでいた心が少しずつあったかくなるのを感じた。さみしいのは俺だけじゃないんだ。みんなはっきり言わないだけでさみしいんだ。

「ヒロ、ありがとう」

「はい…!」

二人でみんなが待つ食堂に入った。みんなはやっと来たかという感じだった。そして本当に豪華な食事が並んでいて、俺はすぐに席に着いた。全員でいただきますをして、それを頬張った。

「美味しい!」

ランやアスカがニコニコと食べている様子を見ながら俺は隣にいるジンに話しかけた。

「明日で…お別れだな」

「ああ、バンくんは日本に帰るのかい?」

「うん、ジンは?」

「僕はもう少しここに残るよ」

「そっか…っ」

なんだかジンと話していたら胸が締め付けられた。別れたくない。簡単な話しかしてないのに、頬を何かが滑った。それが涙だと気づくのには随分と時間がかかった。ジンが困ったような顔をしているのがわかる。俺のせいで悲しい最後になってしまう。それが嫌で俺はなんとか笑うとごめんと言った。

「バンくん…ぼく、」

「いや、大丈夫だから、ごめんね?」

「おい、何泣いてんだ」

「バン…」

みんなが俺に気づいた。しまったと思ったときにはもう遅くて、ワイワイ騒いでたのが嘘のように静まり返ってしまった。俺は慌てて涙を拭うと大丈夫と笑ってみせたが、それが逆に痛々しかったのかなんなのかみんなは困ったような、苦いものを食べているようなそんな顔になった。

「バン…だけじゃないよ」

「え…?」

「俺らだってみんなとバイバイすんの嫌だし」

「みんなそう思ってるよ」

みんながそう言って俺の周りに集まってきた。俺はとうとう我慢できなくなって泣いた。アミやラン、ヒロも泣いてた。するとユウヤが俺の手を取った。

「バンくん、たくさん人がいる中で僕たちが出逢えた事ってすっごく素敵な奇跡じゃない?」

「俺はみんながいるからこれからも走り続けられるけどな」

アスカがぬっと顔を出した。俺はいよいよ涙が止まらなくなって、うんうんとしか頷けなかった。みんなは強いよ、そう考えられるんだから。俺ももっと強くならなきゃ。

「バン、たとえ私たちが遠く離れたところにいても心はひとつよ」

「そうそう、どれだけ強い相手と戦ってたってみんながいると思ったら強くなれるだろ」

「僕たちとの絆を信じてくれ」

「みんな…!」

なんだか不思議な力がみなぎって。
涙を拭うと笑った。本当の笑顔。そして言った。

「本当にありがとう」

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