TEXT2
□ペンギンとバナナ
1ページ/1ページ
「不動ー!」
あ、やっべ見つかった。鬼道ちゃんの怒声が聞こえた方に背を向け走り出した。どうせ捕まるとは思うけど。
フッと角を曲がろうとしたら誰かに衿元を掴まれた。誰だよ。こんな時に。
「っ離せ!誰だよ!」
「鬼道さーん!いましたよー」
さ、…佐久間……。まじかよ。こんな時に…というかこいつ、鬼道ちゃんの仲間か…!
「すまない、佐久間…」
「いえいえ鬼道さん、いつでも頼ってくださいね」
「ああ、頼む」
そうして佐久間は去って行った。あんのやろ!後でボールぶつけてやる!絶対に。だ!
「さて不動…これはお前だな」
「な、なんのこと?」
「バナナなんか書くやつはお前しかおらん!」
「バナナなんかっていうなよ。なんかって!」
バナナをばかにしたら俺が許さねぇ!あんなに美味いもん他にはないぞ。
「で、なんでこんな事した」
鬼道ちゃんはマントを広げて見せた。そこにはでかでかと俺の書いたバナナが残っていた。
「鬼道ちゃんにバナナ好きをアピールしたくてさ」
「それでもなぜ俺のマントなんだ!」
「一番目立つかなー。と」
鬼道ちゃんが怒りに震える。やっぱ油性で書いたら消えないからかな。という金持ちなんだからマントくらい買えよな。
「目立ってどうする!」
「まぁまぁ、似合ってるって」
「お前…明日覚えとけよ…」
な、何がだよ。そう聞く間もなく鬼道ちゃんは立ち去ってしまった。一体明日何があるっていうんだ。
「おはよう不動」
「はざーす」
「不動…そのユニフォームどうした」
必死に笑いをこらえて聞いてくる綱海を睨みながらも、視線を追ってユニフォームをみてみると…。
「なっ!」
そこには、I Love 鬼道 の文字。背中には背番号を打ち消すくらいのペンギンが描かれていた。
鬼道ちゃんを探して睨むと、鬼道ちゃんも俺を見て。ニヤッと笑いやがった。でも背中のマントに描かれたバナナがよく似合ってて俺も笑った。
「お前ら、仲いいんだか悪いんだかわからねぇよな」
「るせ、綱海のくせに」
「はは、あ、立向居ーっ」
立ち去る綱海を見て思った。お前らよりは、俺達の方が進んでるさ。
その後キラーフィールドをやるたびに笑いが起きたとか起きなかったとか。