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パラレル






俺達はある日、二人の少年を拾った。

「拾った。って」

「拾った。というか、ついて来た。というか」

「なんか食い物やったんだろ」

温めたミルクをフゥフゥと吹き冷ましていた、緩くパーマがかった茶色い髪のバンは、自分の事だと気づくと顔を上げて緩い笑みを浮かべた。対してもう一人、黒い髪に白い前髪のジンはその真っ赤な目で俺達を一度睨んで、また目線を下に落とした。ホットミルクは減っていない。

月に一度の朝市の混雑に食料を失敬しに出た俺達は別行動をとり、昼過ぎに合流した時檜山はバン達を連れていた。
話しを聞くと、バン達は今まで働いていた所から別のお偉いさんに売られて行く途中で、脱走して来たらしい。といってもバンの恰好はジンに比べれば比較的綺麗だった。理由はジンの方が働いていたかららしい。よくわからないが。

「捜してないか?」

「見つかったらヤバいだろ人買いだぞ」

バンは、ひそひそと相談し合う三人からまた手の中のカップに興味を移し、フゥフゥと息を吹きかけている。ジンはバンの横にピッタリと寄り添ってまるでバンを守るかのようだ。
余計なトラブルはご免だと八神が冷たく言う。檜山は困ったように。でもどこか面白そうにバン達を見ている。

「けど、俺たちと同じだろ」

「……」

家族も、家もなく街の陰りに紛れて生きている自分たちと、人買いから逃げて来たバン達は変わらないと檜山は言った。
面倒を見る事は出来ないと分かっていても放り出すのもなんだかなぁと笑って言う檜山に、俺も八神も檜山が責任取れと言って、夕食の支度に取りかかった。

「どうして私もなんだっ!」

「ジャンケンに負けたから」

「檜山っ!お前が面倒見るのではなかったのかっ」

「俺だってバンと寝る」

ベッドが足りず、その夜は誰かの寝床を貸してやろうと八神と俺は目が合った瞬間に右手を突き合わせた。
運悪く負けた八神が喚いているが、俺はニヤニヤしながらバン達にお休みの挨拶をして自分の寝室に行ってしまった。バンと離れるとき初めて嫌だと口にしたジンの声が嫌に耳に残っていた。あれはなぜだろう。
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