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Side 拓也


「ピカピカになったら、八神の機嫌も治るかもな」

目を合わせないようにして笑うバンに俺も声をかけてやる。ふと、こんな表情を見た事があると思い出したが、朝から機嫌の悪い八神
に付き合っていたら怯えもするだろうと思い直した。

「……ピカピカ」

ヨッシャ!スッキリサッパリしてやるぞっ!と檜山が体中真っ黒になって戻って来たのは、もう夕方近くだった。
ピッカピカにしてやるぞーとバンの手を取ったがバンはスルリと逃げてしまった。そしてジンの後ろに。ジンはバンを護るように腕で包み込む。

「自分で……」

へらへらと笑いながら逃げるバンに、八神は風呂くらい一人で入れるだろと檜山を怒鳴り、まず檜山から入ってこいと追い出した。

「熱い湯しか出ないから、気をつけろよ」

ほかほかになった檜山は風呂場にバン達を案内して、バスタオルと八神が調達してくれた新しい下着を手渡してやり、バン達を風呂場に残して部屋へと戻った。

「お前、いい加減に機嫌直せよな。あの二人に当たる事ないだろ」

「当たってなどいない。お前らにムカついているんだ」

一日中不機嫌そうにウロウロしていた八神を俺がたしなめてみるが、八神が聞く様子はない。

「あいつらの事、なんにも分からないクセに」

「なんだと」

「止めろ二人とも。とにかく……と云うか、遅いな」

檜山が本気で怒り出す前に俺が慌てて二人の間に立った。

「のぼせてないか?」

二人を風呂場に置いて来てから、一時間が過ぎていた。

「めちゃめちゃ汚れてた、かな?」

軽い口調だが檜山も立ち上がり、戸口に向かう。

「おーい、ぶっ倒れてないよなー?」

大きな声で様子をうかがい、檜山は浴室の戸を開いた。

「あ……」

覗き込む檜山に、二人は振り返るとバンが眉を下げながら笑みを向けた。

「……」

「ピカピカにっ、ならなくて……」

ゴシゴシとタオルで身体を擦るジン。ジンの体を擦るバン。の腹や胸、普段は目にしない肌についた痕に俺達は固まる。バンの身体には三つほどしかないその痕。比較するとジンの身体にはその何倍もあって。その中には怪我も見受けられた。

「もう良いから。充分だ」

横から覗き込んでいたが俺が檜山を軽く押しのけると、二人の手のタオルを奪いバスタオルをかけてやった。

「ピカピカ、に」

「ん。もう充分にピカピカになってるから」

困ったように笑うバンをバスタオルでくるむと俺は抱えるようにして、風呂場から二人を連れ出した。
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