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「っ怖いんだ僕、バン君を失うのが。嫌だ。ねぇ、どんなことでもするから、僕が護るから、僕を一人にしないで」

初めてジンの本音を聞いたような気がする。そんな事を思っていたのか。

「ジン、こっちに来なよ」

「バン君…ゔっ!」

バンがガリッとジンの首筋に噛み付いた。ジンの首筋は血が流れ、一瞬なにが起こったのか俺達に理解できなかった。

「おい!バン、なにやって…」

檜山が叫ぶ。しかしバンはいたって冷静。対するジンは痛みに顔を歪めながらもふ、と安心したように笑った。

「ジン、俺だけはジンを裏切らないよ」

「バン君…」

「……っ」

向き直ったバン。するとスッとバンから緩い笑みが消えた。何の感情持たないようなバンの表情に檜山は目を細めた。

「それ、本当のお前の顔か」

小さくバンが頷いた。目は檜山を見ていた。

「今、何を思ってる?」

「ジンの事」

「そうか。」

檜山はそう言うとバンを横に立たせた。そして、拓也をこっちに呼んだ。

「檜山、」

「わかってる」

ジンは首筋を押さえながら濁った目を下にむけている。バンはというもののジンの横にスタスタと歩いて行ってしまって空いている方の手を握った。

「ジン、俺達は何もしないよ」

「最初は誰だってそう言う」

ジンがボソリと呟く。そりゃそうだろう。初対面からなにかすると予告するやつなんていない。

「そう言って、バン君に酷いことをしようとしたり、僕を殴ったりするんだ」

「いいや、しない」

「嘘だ」

人をここまで信用出来なくなってしまったか。一体どれほどジンの心はボロボロなのだろう。

「嘘じゃない。…もし、俺達が一度でも酷い事をしたら、その分お前達が俺達に酷いことをしていいぞ」

「なにを…」

「とにかく信じろ…俺達はお前の味方なんだから」

ギュッと二人に抱き着く。ジンは最初こそ体を強張らせ、目をギュッと閉じたが檜山が大丈夫大丈夫と続けて囁きつづけるせいか徐々に上がった肩が下がっていった。

「本当に…信じていいの…?」

「ああ」

「バン君…」

「ジン、大丈夫だよ。きっと」

「そうだよね…」

ふ、と笑った二人の本当の笑顔はすごく綺麗だった。

「お前らは今日から俺達の家族だ」

「家族…」

「そうだな、檜山」

「さ、お前ら。バンとジンが家族になったお祝いだ。今日の夕飯は盛大にしよう」

キッチンに戻ると拓也が夕飯を作りはじめた。まだまだこれから傷は癒していかないといけない。だけど、これからはどうか俺達と一緒に。




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出会い編、完
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