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□インフル
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あれ、なんだか…頭がぐらぐらする…。朝からしんどかったけど、まあ大丈夫で来たからかな?やばい、立ってられない…。
「…バン、君?」
右半身に衝撃が走る。俺倒れたんだ。ごめん、ジン。ここジンの家なのに。そう思いながらも俺は意識を失った。
あれ…?なんだか暖かい。でもどこか冷たくて気持ちいい。誰だ…?重い瞼をこじ開けると、そこにはジンがいた。
「ぅ…あ、ごめん…」
「大丈夫?」
うん。と言おうとしたら声がかすれた。インフルエンザだなこれは。
「熱、高いね」
「うつっちゃうよ…ごほっごほっ」
周りを見渡せばさっき遊んでいた部屋ではなくて、ジンの部屋だった。ジンが運んでくれたのかな。それだったらまた迷惑かけちゃったよ…。
「今日はじいやも誰もいないんだ」
「そう、なの?…ごめんね…」
「いいんだ」
「俺のCCMで…家に…」
連絡して迎えに来てもらわなきゃ…。これ以上迷惑かけるわけにもいかないし…。一応家にかけるがでない。次は母さんのCCMだ。呼び出し音が流れるが、一向に出ない。出る気配さえない。…何でなんだよぉ…。息子、今インフルエンザで友達の家にお世話になってるんだけど…。
何か今日あったっけ?えーと…あ!!そういえば、ばあちゃんが山で猟して銃ぶっ放してギックリ腰になったとか言ってたな…。それで入院したから行ってるんだっけ。じゃあ帰ってもいないじゃん。
「でないの?」
「うん…」
「家にいない?」
「うん…」
「ここにいなよ。僕も寂しいし」
「え…いいの」
「ん、いて」
なんだか今日のジンってば…やけに色っぽく見える…。俺、頭まで菌にやられちゃったかな。
その後もジンは、冷えピタや薬を持ってきてくれて、挙句の果てにおかゆまで作ってくれて、本当、申し訳ない…。でも美味しい…。
それに、ご飯を食べ終わったら片付けてくれたし、また薬を持ってきてくれた。それを飲んだらすぐ寝かされ、母さんより看病してくれてるんじゃないかな。
「ん、ぅ…」
「あ、おはよ…」
朝、起きる。学校…どうせ休みか…。ジンはもしかして…俺につきっきり!?
「ジン、ちゃんと寝た?」
「うん」
本当かなー…。なんだか顔が疲れてる感じがするけど。
「どう?楽になった?」
さすが日本の医療は日々進歩してるって言われるだけあるね。薬飲んだらすっごく楽になった。
「うん」
「よかった…」
俺が倒れてからもう何時間も経っていた。でもそれだけジンに世話させてるてことだよな…。
「もう大丈夫、ありがとうジン」
そう言って起き上がろうとすると、あわててジンに止められた。
「だめだよ!まだ寝てなくちゃ」
「でも…もう大丈夫だよ」
もう大丈夫な感じするんだけどな。確かにまだだるいけど、最初の時みたいな揺れはもうないし…。
「とにかくまだ休んで」
とジンは言って、また朝ご飯と薬を持ってきてくれた。何か焦ってない?
「バン君が心配なんだ」
「大丈夫だよ」
まだ微熱があるけど、倒れる訳でもないし、ジンの方がしんどそうだよ。
「せめて熱が下がって、怠さが収まるまで休んで」
「う、うん…」
朝食を食べ終わった俺に薬を飲ませてくれて、また布団をかけてくれた。
本当、申し訳ないよ…。
「バン君、寝ててね」
「ジン?」
「僕、ご飯作って来るから」
「いいよ!」
だって…どう見てもその手、絆創膏だらけじゃないか。怪我したらLBX出来なくなっちゃう。それに俺のためにそんな事しなくてもいい。
「大丈夫、すぐだから」
ニコッと微笑んでジンはキッチンに向かった。早く治さないと…。なんだ?汗をかいたら早く治るんだっけ。
「いくぞオーディーン!」
オーディーンの動作確認をしたら汗をかくはずだ。一緒に体を動かして汗を流す。ジンに見つかったら怒られるだろうからほどほどに。
小一時間程経ってガチャリッとドアノブが回された。俺は急いでベッドに潜り込む。
「お待たせ…」
「あ、ああ…はぁっ…おかえり…はぁっ」
や、やばい、息が上がってる。不自然だよね。ジンはサイドテーブルにご飯を置く。
「バン君、息が乱れてるけどしんどいの?」
「あ、いやそんな訳じゃないんだ」
「無理しちゃダメだよ。汗かいて…体も熱くなってる。ゆっくり休んで!氷枕持ってくる!」
「あ、ジン!」
タッと走って行ってしまったジンの後ろ姿を見送り、ほかほかといい匂いを漂わせるご飯に手を伸ばす。きちんと薬までついてるし。…というかまた手の絆創膏、増えてたよ…。
「お待たせ!」
帰ってきたジンは俺の枕の横にそれを置き、ご飯を食べる俺を見た。
「美味しいかい?」
「うん」
「よかった…」
その後きちんと薬を飲んで、俺はまた寝かされる。オーディーンと身体を動かしたからか、さっきより身体が軽い。これなら明日には熱も治まるだろう。本当、最近の医療ってすごいや。
「バン君、あったまるからこれ飲んで」
おやつ時にジンが持ってきてくれたのはなにやら暖かい飲み物。
一口口に含めば、程よいハチミツの甘さと、爽やかな生姜の風味が広がった。
「美味しい…」
「はやくよくなってね」
「ごめんね、本当…」
「僕がしたいからやってるんだ。バン君は気にしないで」
そういうとジンは俺の飲み終わったマグカップを持って行ってくれた。母さんまだ帰ってこないの?いい加減ジンに世話させるのは…。
そばにあった体温計で体温を測るとギリギリ微熱。ああ、もどかしい。
「はぁ……」
その後ジンは晩飯を作ってくれて、薬を飲ませてくれた。また傷が増えてるよ…。明日の朝には良くなってるはずだ。
「お休み、バン君」
「ああ、うんお休み」
電気が消える。明日はお風呂借りよう…。それで、恩返ししなきゃ。そう思いながら俺は眠りについた。
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