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□インフル
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そして翌日。体温を測るともう熱はない。身体も怠くない。少しの咳と鼻水くらいだ。これならもういける!

「ジン、もう大丈夫、今までありがとう」

昔はインフルエンザが治るまで一週間もかかるなんて信じられない。今の薬はすごいんだな。

「よかった…」

「あのさ、お風呂借りていい?」

「え…?っあ、うん!いいよ」

バスタオルを渡してくれて、脱衣所まで案内してくれた。すぐ入って、出てきたら何かしてあげれたらいいんだけどな…。

「じゃあ服は僕のを使って」

「いいの!?」

「うん、その間に今着てるのは洗っておくから」

「ごめん…」

おお…また気を使わせてしまった…。最悪だ…。さっさと入ろう。

「ゆっくりしてね」

一応肯定の返事をするが、そんなにゆっくりしてはいられない。早くジンに恩返ししなきゃ。

浴場に一歩足を踏み入れれば、広い。何処かのホテルみたいなお風呂が広がっていた。
シャンプーで頭を洗って、タオルで体を擦る。うわ、ジンとおんなじ匂いがする。なんか嬉しい。
そんなこんなでお風呂を上がるとジンの服が用意されていた。体をよく拭いて袖を通す。ぅ…肩幅が狭い…というか全体的に動きにくい…よくこんな堅苦しい服を来ていられるな…。なんて思った。

「あ、バン君はやかったね」

「ジン、ありがとう」

「タオル、かごに入れといて」

「うん」

タオルを入れて、ジンのもとに走る。ジンは家庭科の教科書とCCM、料理本を並べて朝ご飯を作っている。いつもああやって作ってくれていたのか。ああ、今熱かったでしょ、また火傷した。

「バン君出来たよ」

「…ありがとう」

おいしそう…。ジンが飲み物を持ってきてくれて、俺を座らせてくれた。あれ?またお世話になってない?

「ジンは食べないの?」

「あぁ、うん、食欲なくて」

「大丈夫?」

「うん」

それから俺は完食し、(これはもう治ってるな)ジンはお皿を洗ってくれた。手の傷が痛々しい。今度こそ何か役に立つぞ!

「バン君、何かするかい?」

「じゃあバトルする?」

「いいよ」

わ、やった!Dキューブを展開させて、オーディーンとゼノンを向かい合わせる。バトルスタートだ。

「いくよ!」

簡単に攻撃を仕掛ける。ジンはそれを軽くかわしていくが、いくつ目かの攻撃がジンに当たった。

「くっ、」

ジンが後ろに下がる。何か仕掛けて来るな。と思ったら必殺ファンクションで。なんだか今日のジンってば、単調な攻撃しかしてこないぞ。

「必殺ファンクション!」

「ならこっちも!必殺ファンクション、グングニル!!」

ガキンッと重い音がなって、必殺ファンクションどうしがぶつかる。これは見物だと思ったがすぐに勝敗は決した。俺の勝ちで。

「ブレイクオーバーだ」

なかなかゼノンをとらないジンにそれを渡してやろうと近づくと、ジンがゆっくり傾いて、俺にもたれ掛かってきた。

「ジン…?」

さっき使ったシャンプーの匂いが鼻をくすぐるが、今はそれどころじゃない。
思わず両腕で抱え込み体を支えると、それとほぼ同時にジンの足はガクガクッと力が抜け体を支え切れなくなった。

「大丈夫、ね、ジン!」

とりあえず、抱えてる状況ではなにも出来ないから、近くのソファに寝かせる。息は荒く、体温も高い。じわりと汗をかいているくらいだ。赤くほてった顔は苦痛に歪められていて、意識はない。俺は直感した。俺と同じだな。と。
とりあえずここでは寒い。ジンの部屋に運ぼう。お姫様抱っこで運ぶ。ああ、なんでこんなに軽いんだ?

ベッドに寝かせると少し楽になったのか、さっきまで歪められていた顔がましになった。

「はぁ…何で俺気づかないかな」

こんなになるまで我慢してたってことは、熱があっても、俺の看病してくれた訳で。ふと、ずっと動き回っていたことを思い出す。あぁ、ダメだな俺。

「ごめんね、ジン」

しんどいのにご飯を作ってくれたり、薬や氷枕や冷えピタを用意してくれて、さっきは俺のわがまま(LBXバトル)までしてくれて。なんて優しいやつなんだ。裏を返せば無理しすぎ何だけど…。

「んぅ…っ…は、」

ジンが目を開けた。赤い瞳がこちらを見るが焦点があってない。

「、バン……君…」

「ジン…」

「ごめ……お昼、作る…か…ら」

声が掠れた。さっきまでどれだけ気を張って、気丈に振る舞っていたかがよくわかる。何でそれに気づかなかったのかは不明だけど。

「いいよ、というかダメだよ」

「げほっ、ごほ、」

「ほら寝てて!」

とりあえず、氷枕とか用意しなきゃ。でも、何処にあるんだろ。

「氷枕とかってどこにあるの?」

「いい、よ…いらない…バン君はなにもしなくて、いいから」

「バカ、俺はジンにいっぱいしてもらったのに、何もやらないなんて最低だろ…」

「ごめん…」

で、どこ?と聞けば、廊下に出て、3階の奥から二つ目の部屋にあるって言われた。はやく取りに行かなくちゃ。
俺は部屋から出ると、走り出した。ガチャンッとドアを開け、言われた棚を開けると、俺が寝ているときにも使った氷枕と、冷えピタが置かれていた。それを片手に俺は体温計も手に持ち、キッチンに向かって走った。
その後ジンの寝てる部屋にたどり着いて、ジンの枕もとに氷枕を置いて、おでこに冷えピタを貼る。体温計も脇に挟んで、後は体温が計られるのを待つだけ。

ピピピと体温計が鳴って、示した温度は38.9度。これは辛い。俺、無理させちゃったな…。

「はぁ…は、…ん、ぅ…」

「ジン、薬はどこにあるの?」

「…ない」

「え?」

いやいや、ないって、逆にそれはないでしょ。だって俺飲んでたし。

「きょ、のバン君ので…最後」

「………」

嘘だろ!!?マジかよ!!何てったって俺…、もう、え、最悪なんだけど。嘘だろ…。なんだそれ。

「大丈夫、大丈夫…薬なんて…なくてもっげほっ」

「ごめん…買ってこようか?」

「インフル…エンザの…薬は、病院に行かなきゃ…」

じゃあもう病院行く?なんて聞いたら、じいやと八神さんにばれるとまたうるさいから。と笑った。そんなに無理して強がらなくていいよ。ジンの強さと自分の弱さと情けなさに少し泣きたくなった。

「じゃあ今日はもう寝て。喉が渇いたらここにポカリと、何かあったらCCMで呼んで」

「ん…ごめんね」

「俺、ご飯作るから」

「っ、いいよ…!」

「大丈夫」

部屋を出てキッチンに向かう。まぁお粥くらいなら作れるよねきっと。
コトコトとお鍋の中でご飯を煮ていく。美味しかったらいいんだけど…。俺にご飯を作ってくれてる時、ジンもこんな気持ちだったのかな。

「…はぁ、」

ため息が出た。はやく良くなってもらわないと。学校に間に合うように。

「ジン、」

出来たお粥をジンのもとに持っていく。冷まして食べさせてあげると美味しいといってくれて、すごく嬉しかった。

「何で、無理したんだよ」

率直に聞いてみる。だって無理しなければこんな事にもならなかった訳だし。まぁ、俺が言える立場じゃないけど。

「バン君の方が…しんどそうでさ…」

「ジン…ごめんね」

「僕なら大丈夫…」

大丈夫じゃないよ。普段こんな弱いところ見せないから余計に心配になる。

「それでも、看病とか…」

「なにかやってないと…気が紛れないから…しんどいのがもろに…」

「そっか」

「じいやが…帰ってくる前に、治さないと…また迷惑、かけちゃう…」

「じゃあ俺が全力で協力するから」

「ありがとう、早くバン君も治してね」

そう言うとジンはまた寝息を立てた。ああ、必ずジンの事助けてみせます!
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