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□楽しいキャンプ…だったはず
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さっきから妙に息苦しい。みんなで山にキャンプに来て、ロッジに布団を敷いて、その上で枕投げというものをみんなでしてから。

「あ、ジン」

「ヒュー…バン、君?ヒュッ…」

「ご飯だよ」

「あ、あぁ…ヒュー…うん」

なんだか食べれそうにない。でも行かなきゃな。アミさんがカレーを作ってくれてるみたいだし。
一応薬持って行っておこうかな。そう思って部屋の奥にある鞄の方に体を向けた瞬間、CCMにアミさんから着信が入り、バン君達にははやくしろと呼ばれる始末。僕は薬を諦めてそっちに走った。

「もう、遅いじゃない!冷めちゃうでしょ」

「ごめんごめん、」

バン君が謝る。僕が遅かったんだけどな。まぁでもアミさんも笑ってるし大丈夫かな。

「あれ?大人組は?」

カズ君がふと周りを見渡してそう呟いた。するとアミさんが、ロッジですることがあるみたいよ。と言った。拓也さんと八神さんで何かすること?なんだろうか。しかし気にする事はないだろう。

「さ、もう食べましょ」

話し込むみんなにアミさんが呆れたように食事を促した。テーブルには用意されたカレーが並んでいる。きっと頑張って用意してくれたのだろう。

「そうだな!」

「いただきまーす!」

みんながカレーをがっつく。満面の笑みを浮かべて。美味しそう。いや、幸せそう。

「美味しい!」

「まぁ、私にかかれば当然ね」

そう言いながらもアミさんは嬉しそう。僕も食べたいんだけど…なんだか喉の通が悪い。

「おかわり!」

「郷田はぇーよ」

ビシッと仙道君が突っ込む。はは、と郷田君は笑った。

「うめーからよぉ」

「はいはい」

郷田君が差し出したお皿をアミさんが受け取る。カレーを注ぐとそれを返した。僕も少しずつ飲み下す。味はすっごく美味しいのに。

「ジン?食べないの?」

「けほっ…ヒュッ、いや、食べるよ…ヒュー」

深呼吸をしたら咳が出た。なんだかご飯が喉を通らないんだ。

「具合悪い?」

「大丈夫、大丈夫…っごほ!」

「ああ、もう水飲んで」

「すま、ない…」

バン君に心配され、水を飲んでると、バン君のお皿が空なことに気づいたみたいアミさんがバン君に声をかけた。

「バン!おかわりは?」

「いる!」

その後食事は楽しく終わって、みんなで遊ぼう。となったが、僕は走ったりしたら咳が酷くなりそうだったから、落ち着いたら合流する。と言ってテーブルの前に座った。
バン君達は走って行ってしまって。僕はポツンとそれを眺めていた。すると風が吹いてきて。花粉が飛んできたのか鼻がムズムズする。それにさっきより苦しい。
薬は取りに行けない。移動中に倒れたりしたらそれこそ終わりだ。ここを移動して少し休めば、大丈夫。すぐ治まるはずだ。

「ヒュッ…ヒュー…げほっげほっ…」

みんなに預けられた荷物を持って席を移動した。ここなら花粉は飛んで来ないだろう。
そして時間が経つ。休んでいるのにどんどん苦しさが増していく。咳も止まらない。息が吐けない。

「ジンー?どこー?」

その時バン君達の声がした。僕は机に突っ伏した状態である。移動しなければよかった。バン君、助けて。

「あ、いた!」

「もう、こんな所で!」

寝てると思っているのだろうか。違うんだ。うずくまってはいるが、体が動かないんだ。酸素が脳に回らなくて、意識が朦朧としてきた。

「…ジン?」

「…ぁ…ぅ…がはっ!」

ヒュッ、と喉から高い音が出る。最初から薬を使うべきだったんだ。あの時ちゃんと持ってくるべきだったんだ。マラソンの時大変だったのを全く活かせてないじゃないか。

「まさか…」

「ヒュッ、げほっ!ごほっげほっげほっ!ヒュッ」

「薬は!?」

「鞄じゃないの?」

「てことはロッジか!」

みんなの慌てた声がする。ごめん。僕が悪いんだ。ヒューヒュー音がしていたのに薬も飲まないで遊んで。

「仙道!どうしよう」

「今CCMで調べてる!」

はやく!なんて声もして、背中は摩ってもらい。また迷惑かけてるよ。だめだなぁ、自分は。

「コーヒーだ!ブラックコーヒー飲ませろ」

「わかった!」

アミさんが急いで備品のコーヒーをいれてくれる。そういえば効くんだっけ。もうわからない。意識が飛びそうなんだから。

「ジン、ゆっくり飲んで」

「ん、んぅ…こぽっ」

バン君がコーヒーを飲ませてくれる。飲んでる間も咳がでて少し零してしまったけど。

「全部飲んだよ?」

「けほっ、…けほっ…」

咳はましになってきた。だんだん息が通るようになる。た、助かった…。

「背中摩ってやれば?」

「ジン…っ」

バン君…ごめん。また迷惑かけてるよ、僕。今にも泣き出しそうなバン君を呆然と見る。

「…ヒュッ……ヒュー…」

「落ち着いてきたんじゃねぇ?」

「あ、呼吸が普通に戻った」

やっと呼吸が楽になってきて、僕は安心したのか力が抜けた。そしてそのまま眠ってしまった。





「寝ちゃった…」

「ったく、薬くらい常備しとけよな」

「本当、でもジンの事急かせたのは私達よ」

「「「う…」」」

「ま、一件落着でよかった」

「あと少し休んだらロッジに帰ろう」

「そうだな」

「拓也さんと八神さんに連絡しとかなくちゃ」

「あの二人、ロッジで何して待ってるんだろ」

「さあね」

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