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□約束してたしね
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寒い。今日は最近の中でも一段と寒い。俺はジンと待ち合わせをしていてその待ち合わせ時間にジンはもう15分も遅れている。
俺は手袋もマフラーも今日は忘れてしまった。だから手はキンキンに冷え、感覚もいつの間にか無くなってしまった。
建物の中で待っていればいいのだがジンと入れ違いになってジンを待たせるのは気が進まない。それに寒さで足が動かないのだ。
そこから20分。足がガクンと折れた。寒さで立つことも出来ずに、俺はその場にしゃがみ込んだ。
不意に頬を何か冷たいものが掠った。
「…雨…いや雪だ…」
雪が降ってきた。髪が濡れて体温が下がる。とても寒い。
そろそろ待ち合わせから1時間が過ぎようとしていた。俺もそろそろ限界が近い。
「けほっ…」
冷たい空気が喉に刺さるまだジンは来ないのか。そう考えた時だった。
「バン君!」
ジンの声が響いた。息を切らしてこちらへ向かってくる。
「ごめん!待ったでしょう?」
「いや大丈夫だよ…」
すかさず立たせてくれ、手を握り、自身のポケットの中に入れた。
「ごめん…」
「…気にしないで」
「顔色も悪いし、手もこんなに冷たい…何か暖かいものでも飲みに行こうか」
「ごめん」
「いや、僕が遅れなかったら…」
ジンは俺が無理矢理誘った用事に間に合わせようと昨日の夜からすべきこと殆どを終わらせてお祖父さんに了承を取りに行っていたらしい。
「俺が元々誘ったから。ジンは悪くないよ」
「いや、もっとはやく終わらせるべきだった」
そういいながらもカフェに入って温かい飲み物を注文してくれた。
「暖かい…」
「1時間も待たせてしまったか…本当にすまない」
「落ち込まないで。大丈夫だから」
温かい飲み物を飲んでいるとさっきまで寒かった体がぽかぽかと暖かくなっていくのがわかった。
「で、バン君…今日は何?」
そうそう。俺がジンを呼び出した訳をまだ言ってないじゃないか。
「カニワールド、行くんだろ?」
パッとチケットを差し出すとジンの顔がパァッと明るくなった。
「行く!」
「じゃあ行こう、そのために駅で待ち合わせなんだから」
「うん!」
電車に揺られ、最寄り駅につく。終始ジンは落ち着かないようす。本当カニが好きなんだなぁ。
「着いた!」
「カニさん!」
目が輝いてるよ。うん。でもこんなに喜んでくれたら俺もうれしいな!
「さ、入ろう」
「うん!ありがとうバン君!大好き!」
「ぇ!…あ、うん」
そんなこと言われたらカニなんかに集中できないじゃないか!