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□思惑通り
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目の前に一枚の紫のカード。パッと裏返すとすぐに仙道君のタロットカードだってことがわかった。

「忘れ物…か?」

すぐにメールを入れる。すると30秒もしないうちに返信が返ってきた。…家まで持ってこい…か。
ここから仙道君の家に行くには電車に乗らなければならないからまず駅に向かう。

「あ、ジン!」

「あぁ、バン君」

名前を呼ばれ、振り向くとバン君が手を振って近付いてきた。

「どこに行くの?」

「仙道君の家だよ。忘れ物を届けに」

「ふーんそっか、」

なーんだ。と言わんばかりに素っ気ない返事。

「バン君、お母様が呼んでるよ」

「え?あ!ごめん!じゃあまたね!」

「うん」

バン君が走って行った。それを見て僕は切符を買いに行く。あ、もう電車が来てしまう。
階段を上ってタイミングよく来た電車に乗り込む。定時になり電車が動き出すと目的地まではすぐだった。

「えっと…」

仙道君の家はどこだっけ。確か黒いマンションだった気がするけど。歩いてみれば見つかるだろう。
そして駅からの一本道を歩いて5分。黒いマンションを発見した。
すぐに部屋番号を入力してロビーのドアを開けてもらう。そしてエレベーターに乗り込む。

「ここだな」

エレベーターを降りて仙道君の家を見つける。インターホンを鳴らすと仙道君はドアを開けた。

「よぉ、上がりなよ」

「…お邪魔します」

一人暮らしとは聞いていたが、シンプルで綺麗な部屋は仙道君らしいと思った。

「これ、」

「ああ、ありがとう…忘れるとはねぇ」

タロットカードを差し出すと仙道君はそれを束に戻した。

「お茶、飲むかい?」

と言っても紅茶かコーヒーしかないけどな。と言って用意しはじめた。二人分いれてくれるのなら聞く必要はなかったんじゃ。と思ったが、ありがたくそれを受け取る。

「なぁ、海道ジン」

「なんだい?」

「お前ってさ、ヤるときどんな顔するんだい?」

「!!?」

思わずいれてもらった紅茶を噴き出しそうになった。な、何でそんなことをいきなり。

「その綺麗な顔が歪むと思ったらそそるねぇ」

「ちょ、仙道君!?」

仙道君が僕の頬に手を滑らせた。なんだか本能が危ないと警告しているような気がする。

「なぁ、あそこで遊ぼうぜ」

仙道君が指し示した先はもちろんベッド。なんで、そんな、いきなり、僕の頭はいっぱいいっぱいで逃げることも出来ない。

「好きだよお前が」

僕はタロットカードを届けに来ただけで…、それでいきなり家に上がらせて貰って、……告白されて。

「お前は俺が嫌いかい?」

嫌いではない。寧ろ好きな方だ。お喋りでもないし、落ち着いた所がすごく素敵だ。

「いや、別に…」

「じゃあ好きなんだな?」

否定は出来ない。だって嫌いじゃないから。それに顔が熱くて心臓が張り裂けそうななくらい速く脈打ってるのは……。

「俺と付き合おうか」

有無を言わせない程の魅力。また頬を仙道君の手が撫でて、僕はついに頷いた。

「…はい…」

顔は真っ赤だろう。仙道君の恋人として僕はもっと頑張らないといけない。釣り合うように。

「上出来だ。さ、優しく扱ってやるよ」

仙道君に腕を引かれて、ベッドに押し倒される。あ、や、だめだ。頭のなかに警告音が鳴り響くが身体はそれに従わず仙道君の首に腕をかけた。

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