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どちらかがあの男の人に喰われなければならないのだ。そう。どちらかが。それなら、僕しかない。
「バン君、僕がいくよ」
「え?なんで!」
もういいのだ。トキオブリッジのあの事故で両親を失い、学校も辞め、友達もいない。行く当てもなくさ迷って、叔父さんに引き取られて、そこでは沢山酷いことをされた。そして売られたのだ。もう希望なんてあるはずがない。あるのはちっぽけなプライドと眩しいほどの光…バン君だけだ。だから、何をされてももう大丈夫だ。
「ジン、俺がいくよ」
「いや、僕じゃないとダメなんだ。バン君、君はなにもしなくていい」
バン君を守ることを目標にしよう。友達だと言ってくれたバン君を何がなんでも守り抜かなければ。そうだ。僕は海道ジンだ。パパに言われたじゃないか。大切な人はどんなことがあっても守りなさい。と。
「ジン…!ダメだよ。傷つくだけだよ」
「大丈夫。もう慣れてるから」
本当は怖くて仕方ないけど、もう汚れてしまった僕一人が傷ついて済むなら、バン君一人が傷つくより僕が傷ついた方が何倍もましだ。
「慣れてるって…」
「ちょっとね…」
叔父さんにやられたときのように我慢すればいいんだ。僕が我慢すればバン君は無事に助かるのだから。
「ジン…ダメだよ」
「大丈夫。バン君は何もしなくていいんだ」
「ジン!」
バン君に腕を捕まれる。大丈夫だよ。バン君はなんにも心配しなくていいんだ。ただ目を閉じて、耳を塞いでいてくれればいい。そうだな…寝ていてくれるのがいいかもしれない。
「大丈夫だよ」
「そんな、ジンだけがなんて」
「バン君は…僕の存在意味なんだ。だからお願いだ…僕が行く」
そう。バン君を護ることによって、僕の煤けた人生がまた光を取り戻すような気がしたんだ。それに、それしか僕はしてあげれない。
「ジン!そんな事ないだろ?ジンにはジンの人生があるんだから!」
「もう、遅いんだ…もうダメなんだ。取り替えしはつかないんだ…だったら行けるところまでは一人で行く」
だからそんなに心配しないで。きっと最後にはすべてうまくいく。って何かの本で読んだんだ。だから僕達も最後にはうまくいくんだよ。
「決まったか?」
男の人が戻ってきた。心臓がドクリと脈打つ。僕が行きますと言えば男の人は満足したかのようにゲージの扉を開け、僕を引っ張り出した。
「ふ、いい度胸だな」
「ジン!ジン!!」
そのままベッドに放り投げられ、手を縛られた。声が出ないようにタオルを噛まされ後ろで縛られる。
「ん、んっ」
「怖いか?」
正直怖い。今にも逃げ出したいくらい。でもバン君を見たらそんなこと考えるな!って思う。ごちゃごちゃした意識のまま男の人は僕の服を脱がしはじめた。バン君が何かを叫んでる。
「五月蝿いぞ!今度騒いだらこいつを殺すからな」
そう忠告されバン君が黙る。この時殺されていたらどれだけ楽だっただろうか。バン君はへなへなと座り込んでしまって。そして静かに泣き出してしまった。ああ、僕が悲しませているんだ。これが終わったら平気な顔をしてバン君に笑いかけてあげよう。そうして心配ないんだ。と言って、バン君がもうこんな顔しなくていいようにしないと。
「初めて…じゃないな?」
ズボンを下げて僕のお尻を覗いた男の人がそう言った。そうだよ。初めてじゃない。叔父さんに襲われたんだから。まぁでも使ったのは3回だけだし、それからもう半年は経っている。お前には充分だ。そう思ってキッと睨む。
「いいなぁその目…」
ニィッと笑ってガリッと僕の鎖骨の辺りを噛んだ。思わず苦痛の声が洩れる。痕が…残ってしまう。
「もうお前は割れ物だ。後は砕けるしかなかいんだよ」
これからも嬲られ、汚され、もう再生不可能だ。そんな事解りきっている。なのに、どうしようもなく悲しくて。もう、無理だ。こんな事になってしまったら。
少しでも助かりたいと希望を持つ僕がどこかにいる。
もうすべてが嫌で嫌で堪らなくて、どうせ無理なら全てを投げだして、人生を放棄して落ちぶれてしまいたい醜い僕の中に。
嫌だ。違う。もうそんな希望は意味を持たないんだ。全てを投げ出してしまえばいい。ズタズタになって、それでも生きて、絶望すればいい。捨てれないちっぽけなプライドを持って。
「さ、楽しいショータイムの始まりだ」
ああ始まった。絶望のショータイム。
さようなら。僕の人生。もう二度と正しく清らかなものになる事はないでしょう。さぁ、今からは絶対に深く暗く堕ちるだけ。
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