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□明日には会える
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ガララ…と扉を開けるとあぁ、まただ。僕の机に落書きがされてある。油性のペンは落ちにくいのに…。そんなことを考えながら雑巾を取りに行く。授業が始まるまでに擦って、くっきりとは目立たなくして僕は席についた。
「よぉ、まだ死んでなかったのかよ」
わかってる。誰ひとり助けてくれないのは。誰だって目を付けられたくないんだろ。
机の中は…あぁ、やっぱり。糊塗れ。教科書も落書きされてるし。あーあ、早く帰りたい。
「ジン、ジン・海道」
来た。帰れ。グイッと僕の肩を掴む。骨が軋むほどの力で掴まれたもんだから思わず眉をしかめる。
「これ、やっとけよ」
「俺も」
「あぁ、俺も」
ガササッと僕の机に宿題を置く。勉強なら別にいい。こんなの三分で終わる。すぐに終わらせて突き返す。するとその態度が気に入らなかったのか僕の机を蹴った。
その瞬間見て見ぬふりしていたクラスの奴らが一気に静まり返った。
「なんだ?文句あんのか?」
「……別に」
「お前は一生俺らの奴隷してたらいいんだよ」
「………」
その時先生が入ってきた。みんなは一目散に席につく。……くだらない。
「はい号令ー」
「起立」
はやく、終われ。
昼休み、乱暴に連れていかれたのは中庭。壁に押さえ付けられる。掴まれた手首が…痛い。
「ほっそい手…今すぐ折ってやろうか」
「いつも辛気臭ぇ本ばっか読みやがってキモいんだよ!」
「その反抗的な目はなんだ?おまえのそういう態度がムカつくんだよ!」
はいはい。だから何なんだ。気に入らないなら放っておけばいいじゃないか。…馬鹿なんだな。
「あれ?このリングはなんだ?」
「!、やめろ!」
「おまえがオシャレとか似合わねぇから」
それは、それだけはやめろ!触るな、おまえ達が触っていいものじゃない。これはあの人の形見。唯一の思い出だ。今は亡きあの人の影が頭を過ぎる。
「何?大切なものな訳?」
ギャハハハと下品に笑うこいつらを無視して帰ろうとすると腕を掴まれた。
「おい、帰ろうとしてんなよ」
「黙れ、お前達に構っていられるほど毎日僕は暇じゃない」
言った瞬間、目の前の馬鹿共がぶちギレたのがわかった。面倒臭いから無視だな。
「なんだ?俺らが何の予定も無い暇人だっていうのかよ!」
つるまないと何も出来ないやつが…。笑わせるな。…耳が痛いんだ。近くで大声を出さないでくれ。聞こえているんだから。
「こら!そこ!何してるんだ!」
「ヤベッ先生だ!逃げろ」
先生が窓から注意するとあいつらは逃げて行った。……帰ろう。
そして次の日。学校に行く。するとまた僕の机に落書きされていた。ご丁寧に毎日毎日ご苦労な事だ。
「よぉ」
「っ!」
顔を向けた瞬間チョークの粉がドサドサッと上から降ってきた。息をすると器官に入ったのか咳込む。
「ははははっ!真っ白じゃねーか」
「けほっげほっ!」
服に着いた分を払うそして頭を払う。黒い服が薄汚れて灰色に見える。…最悪だ。じいやに何て言おう。
「これ、やっとけよ」
あー…もう嫌だ。しんどい。別に辛くはないけど。こんな低レベルな嫌がらせどうってことない。
今日もごみ箱から体操着を拾って。ぐちゃぐちゃにされ、砂塗れのお弁当は容器だけを拾う。隠された靴を探して、落書きを消す。何でこんな事しなきゃならない。僕が何をした。御祖父様が悪いことをしたのは知っている。沢山の人の命を奪ったことにはかわりない。でも僕は。ただ平穏に暮らしたいだけなのに。人はただ平等だ。あいつらは悪い事をしているのに何で咎められない。
おかしい。
どこかが狂っている。
どこかが歪んでいる。
いや、人為的にそうなったのかもしれない。
会いたい。バン君…今君に会いたい。今頃君は日本でなにをしているんだい?僕は…留学先…A国…ロンドンで頑張ってるよ。