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□仲間の一員だろ。
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「わっ!」

ガッシャーンッ。ジンの叫びと沢山のお皿の割れる音が食堂中に響き渡った。
台所で用意していたコップを急いで机の上において、
アミとカズと一緒にちりとりと箒をつかんだ入口の近くで集まっている皆の間に入れてもらいながら真ん中に近づくと、…あぁやっぱり。
真っ青な顔で固まっているジンと見事に割れてしまったお茶碗の破片が広がっていた。

「ジン…」

「ご、ごめんなさっ!僕っ…!」

「気にしないで、ジン、誰にでも失敗はあるから」

そう言って顔を覗き込むと、ジンはやってしまったと反省した顔をていた。
そんなに気にしなくってもいいのに。お母さんに怒られるのが怖くてたまらない子供みたいなジンにくすぐったい気持ちで胸がいっぱいになる。
一旦ちりとりと箒を壁に立て掛けてそっと近くに座った。…うーん。やっぱり怒られるのが怖いのかな。ジンの背中がビクッと強張った。

二人と一緒に思わず苦笑いをしてしまった。

「俺も二人も怒ってないよ?」

「で、でも…お皿、」

「本当よジン。それよりも怪我してない?」

アミがポンッと背中を叩く。カズも気にするなと笑った。

「…いっいや、全然すっごく元気だよ」

「右手、血が出てる…!」

パッとジンが後ろに右手を隠す。ジンはこういうの慣れてないんだろう。さっきから口調がおかしい。何だか可愛い口調だ。

「見間違いだよ、ぜんっぜん平気だから」

「あ、こらっ!」

「っ!?」

走って逃げようとしたジン。それを止めようと思わず手をギュッと握ると、やっぱりだ。
ジンの痛そうな小声とヌルッとした嫌な感触に不安を覚えながらもその手を見る。
すると血でいっぱいの痛々しい光景が広がっていた。

「これ…どこが大丈夫なの?」

「…これくらいどうってことない、みんな気にしないで」

「バカ!どうってことない訳ないだろ」

「…ぅ」

…右手はCCMを操作する手だろ。それを怪我して…もし操作できなくなったらどうするんだ。秒殺の帝王の名が廃れてしまう。
それにもうジンとバトル出来ないなんて嫌だ。

「私、救急箱持ってくるね!」

「アミさ…!」

「ジン、これ以上何か言ったら俺達本気で怒るよ?」

「ぅ…」

「ジン」

座って、とわざと声を低くして言うするとジンは顔を下げながらゆっくりと腰を下ろしてくれた。
その顔はまたさっきと同じで蒼白だったけど、仕方ない。
だってまだその顔は俺たちがお皿を割ったから怒ってる。なんて思ってるんだから。

「…ジンは…どうして俺たちが怒ってるかわかる?」

「え、それは…お皿を…」

ほら、やっぱり。でもね、ジン、俺達がいいたいのはそんなことじゃ無いんだ。

「違うよ」

そっと血だらけの手をとる。ドクドクと嫌な音を立てている手の平には沢山の傷がぱっくり口を開けていた。綺麗な手がだいなしだ。
あぁ…どうしよう。手が真っ白。ねぇジン…痛いよね?

「ジンが心配だからだよ」

真っ白な手も、止まらない血も、必死で自分を守ってるその虚勢も、全部全部心配なんだよ。
大事な大事なシーカーの
メンバーで、大切な大切な人だから。だから無茶しないで。
ジワリと潤んできてしまった涙の膜にそっと自分を映す。そして、やさしく抱きしめて「俺にとってジンは大好きな人なんだから、頼って」と囁くと、ジンは鼻をグスと鳴らし、ますますその瞳を溶かしてしまった。

「僕、は…バン君やアミさんやカズ君みたいにっ、ぜん、ぜんっ…友達も居ないし、全然…強くないしっ…」

「俺らが友達だろ」

カズがジンに優しく問い掛ける。するとアミが、

「ジンのどこが強くないのよ」

と、にこりと笑ってジンに語りかける。

「御祖父さっ…も、お父さんもお母さんも…ユウヤも、守れな、くてっ」

「ジンだけが守るものじゃ無いだろ」

というより守るものじゃない。本来であれば今中学一年生のジンは両親に守られ、一心に愛を注がれなくてはいけないのだ。それでなくても海道義光に褒めてもらったり、話しをしてもらわないといけないのだ。
それをどちらも奪われ、一つはアンドロイドとなって敵に回っている。
そんなのあまりにも酷じゃないか。こんな、いくら大人びていたって俺と同い年のやつが背負うものじゃない。

「…お皿、割って…っ」

「バンもよく割っちゃうわよ?」

「僕は、もともと、敵っ…だから」

「もう誰もジンの事、敵だなんて思ってない。」

そんなやつがいたら、俺がそいつをボコボコにしてやる。ジンは俺の、シーカーの仲間だ。

「だ、だからっ、だからシーカーに必要ないんじゃないか、入ったらいけなかったんじゃないかって…っ!」

「そんなことない!ジンは絶対シーカーに、俺達にとって必要だよ」

「っひっぐ…バ、バンぐん…ぅ……っ」

ぎゅうぎゅうとジンを抱きしめて、肩に染みていくあったかい涙の分だけ、頭を撫でてあげた。

「大丈夫。ジンが頑張ってることも、みんながジンのこと大好きで必要だって俺達は知ってるから」

「みん、な…」

そのあと落ち着いたジン。お皿の破片も片付けてより結束が固くなった俺達。

「さぁ、手当しようか」

「え?」

アミが持ってきた救急箱から消毒液と脱脂綿を取り出す。カズがジンの手をとって俺がそれをジンの手に宛がった。

「…いてて…」

ジンは抵抗もせずにそれを見つめているが、絶対に痛いはずだ。見てるこっちも痛くなる。なのに何でこんなに平気そうなんだ。

包帯をぐるぐる巻いてピタッと止めれば、はい。完成。

「後で病院行くのよ」

「…うん」

三人で笑い合い、ジンを食堂に連れていった。

「手伝うよ…元はこれが目的だったし…」

「手。使えないでしょ?」

「う…」

「大丈夫だぜ後は運ぶだけだから」

そう言ってアミとカズがご飯を運びはじめた。


fin


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