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□ローカル線での
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ガタンゴトン…

電車に揺られ僕は御祖父様の所へ向かう途中だった。今日は迎えが来れないみたいだし、タクシーに乗ってもいいが、生憎そんな気分ではなかった。しばらく景色を見ているとポスリと肩に重い感触が伝わった。ふとそちらを見ると茶色のもふもふした物が肩に乗っていた。

「え…?」

服装や髪型、持ち物からして男のようだが、綺麗な顔付きと、細くて華奢な身体は女の子でも十分に有り得るようだった。
すぅすぅと吐いたり、吸ったりする息からこの人は寝ているんだと確信した。
持ち物のナナメ掛けかばん。ポケットからはみ出してるCCMを見てこの人もLBXをするんだ。とすこしため息を吐いた。
それより、今の時間。学校帰りだろうか。それとも遊んだ帰りかな。いいなぁ…。

「あのー…」

起こすのは可哀相だが、乗り過ごしてしまうよりはいいだろう。肩を揺する。

「ぅ…ーん…」

ゆっくりと瞼が開き、瞳が見えた。……なんて綺麗な色なんだろう。ぼーっと見とれているとこちらに気づいたらしく、

「ぅっわっ…!すみませんっ俺、寝てっ…」

慌てて肩から離れる。…面白い人。

「いえ、」

ローカル線だし、まだ乗り過ごしてないはずだ。僕も御祖父様の所へ行かないといけないけど、なんだか今はこの人の方が僕は気になる。

「今からどこ行くんだい?」

「学校帰りだけど…秋葉原に行こうかなって」

なるほど。なにかパーツでも買いに行くのかな…。また僕も行ってみよう。

「どこの中学なんだい?」

「ミソラ二中だよ」

ミソラ二中か。聞いたことないな。この子が僕の家の近くに住んでるんだったら、じいやにコミュニケーションを教えてもらって、絶対仲良くなれる自信があるのに。

「あのさ…名前は?」

「僕は海道ジン。中1だ。僕もLBXをしてるんだ」

「そうなの!?俺は山野バン!中1、LBXはレンタルだけど楽しいよ」

「…そうなんだ」

いいなぁ…本当に。僕だってもっと楽しい学校に行きたい。いくら経済学やLBXを教えてもらっても、つまらない。御祖父様が喜んで下さらない限り。

「うん!よろしく、ジン」

その後意外にも下りる駅は同じで、そこまでずっと話していた。最後に僕が国会議事堂に向かうタクシーに乗ろうとすると、送ってくれたバン君は何やらメモを取り出して

「ジン、俺のメアド。また連絡して!」

なんて嬉しいい事をしてくれるんだ。顔を綻ばせて差し出されたたメモを受け取ると、

「後で送るよ…ありがとうバン君、嬉しいよ」

手を差し出したらバン君はそれを握ってくれたからギュッと握手を交わしてすぐタクシーに乗った。

「お客さんどちらへ?」

「国会議事堂まで頼むよ」

動きはじめたタクシーの中から後ろを振り返ると、笑顔で手を振っているバン君の姿が。
……やっぱり家まで送った方がよかったかな。
心の中で囁き僕は御祖父様の元へと急いだ。

帰ってメールはすぐ打った。またバン君といつか会えるのかな…。案外すぐだったりして…。そうだと良いけどなぁ…。





「ジン、お前に仕事を頼みたい」

「何でしょう御祖父様」

御祖父様が僕に仕事を頼むなんて、久しぶりだ。絶対成功しなくては。

「この写真の子供なんだが…こいつの監視を頼みたい」

見せられた写真に写っていたのは…山野バン君。…………なぜ、御祖父様。

「また詳しくは話すが、とりあえず中学を転校しなくてはならない」

「はい」

「公立中学校だが目立たず頑張りなさい。それと…山野バンと同じクラスに転入させておく」

「はい、御祖父様」

「ではもう下がっていいぞ」

「はい、失礼します」

あぁ…何でこうも僕はツイてないんだ。せっかく友達が出来たと思ったのに。ごめんねバン君、君とはもう笑えない。

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