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□寒いなんて口実
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俺達は今、冬休みを利用して拓也さんが用意してくれた施設にLBXバトルの特訓をしにきた。でも今日は最近の中でも一段と寒い。なんでも近年類を見ない寒さらしく、東京に雪が降っている。仙道なんてマフラーと手袋に分厚いコートを羽織っていた。

「バン!今日の特訓はなくなったぞー」

この声はカズだ。寒いからか。もしくは拓也さんの気遣いか。今日の特訓は中止…。仙道は救われただろう。いくら最新設備の屋内だと言ってもこの寮からは少し離れていて、行くまでに指がかじかむし、やる気もなくなる。本当…よかった。
さて、俺も寒い。こたつにでも暖をとりにいこうか。


「おーい…俺もまぜ…」

「ここはいっぱいだ…一階に行け…」

やっぱり…二階はダメだったか…。仙道と郷田に追い出された。となると残りは一階…。けど一階の部屋は出入口に近くて結構寒いんだけどな。
仕方ないけど今のままで居るよりかは幾分かましだろう。

「…はいはい」

ガラリとドアを開ければ
そこに人は居なかった。

「うわ…一人だ…」

そう言いつつもこたつに入り足を伸ばすと…ムニッ…何かに足があたった。

「ぅえ!?」

誰もいないはずなのに。何で…何が…。

「あ…あの〜…」

恐る恐る頭のあると見られる方向に周り布団をめくると そこには寝息をたてるジンの姿が。

「ジン!?」

よかった…
もし八神さんとかだったら。今頃俺の心臓は緊張と不安に爆発しているだろう。
でも何だか意外だな。ジンがこたつに入って寝ているなんて。よっぽど疲れていたのかな。そういえば朝食を残してたし、顔色も悪かった。しかし、大切な友達をこんな所で寝かせる訳にはいかない。乾燥してしまうし何より風邪を引いたら困る。

「ジン…起きろー」

ユサユサと体を揺らしてみるが起きる気配は全くない。

「ジンー」

少し強めに揺らしてみると、

「ん…んぅ…」

微かに声は聞こえたがまた規則正しい寝息が聞こえてきた。

「…おーい…」

さぁどうしようか。もし、ジンが風邪を引いたら…まぁ俺が手取り足取り看病してやるけどさ。

「起きろー」

ジンの黒と白の頭を撫でながら話しかけるとふにゃりと笑った。ような気がした。…なにこれ可愛い…。

「…くしっ…」

いきなりくしゃみをするからビックリした。ていうか、やばい!もう風邪引き始めてる。

「ジンー…起きろー…」

「ぅ…ふぁ…?」

きた!起きた!そのままジンはまだ焦点のあってない紅い目を擦ると

「……バン、君……?」

「こたつで寝るなー」

「すまない…ふぁ…」

注意をすると眠たそうな声で返事が帰ってきた。

「ジン…あのさ…」

「な、んだい?」

今にも寝そうだ…
こう言うときは…

「ちょっと待っとけよ…あ、絶対寝るなよな」

そう言い残して俺はあれを取りに行ったジンが完全に寝るまでにはやく行かなきゃ。




「ジンー」

「…………」

寝てる。机に突っ伏して寝てる。まぁ起きてもらうことにしよう。

「ジン…」

名前を呼んでから俺は手に持っていた氷をジンの顔にひっつけた。

すると

「っ!?」

小さな悲鳴とともに完全に目の覚めたジンの姿が。

「おー…起きた…」

「…冷たい…びっくりしたぁ……」

「こたつで寝ちゃだめだよ」

「すまない…って溶けてる!氷!」

「わっ!本当だ!」




その後何気ない会話を二人でしているとジンが外を見た。そして笑顔で

「あ、バン君見て雪だよ」

ジンに言われて外を見ると確かに雪が降っていた。

「わー!本当に降ったんだ!凄い!…」

この雪は俺達への。ジンへの。プレゼントなんじゃないだろうか。いつも影で努力するジンへの。

「バン君…寒いね」

「風邪かな?大丈…」

「違うよ」

半ば俺の言葉を遮るようにして言った。

「ただ…寒いから…隣でくっついてもいいかい?」

赤い顔で言うもんだから俺の心臓は高鳴る。あぁ、きっと俺はもうジンに溺れているんだと思う。
こんなにも無防備で、可愛い可愛い人。
計算でなければ尚更たちが悪い。

「いいけど…どうなってもしらないよ?」

「え…?」

質問させる訳もなく。俺はジンの隣ピッタリに座ってその柔らかい唇にキスを落とした。
そして耳元で

「…好きだよ…付き合って、ジン」

と囁き、耳にもキスを落とす。

「!」

「付き合ってくれる?」

疑問形だけど拒否権はない。だけど…ジンもきっと…。

「そんなの…ずるい…僕がバン君の事を好きなのを、君は知ってる癖に…」

「…そうだね…」

再びは唇にキスを落とせば俺達の繋がりが深く強くなった気がした。
寒いなんてあなたとひっつくための口実。

でもきっと…
あなたもでしょう?

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