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□絶対忘れない
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「アタックファンクション!」

力強く響くバン君の声。どんなに強力な相手にだって勝てそうだ。僕まだまだ未熟みたいで、バン君の実力には敵わなかった。
だからこそ練習と言いたい所だが…昨日から調子が悪かった。体当たりすらちゃんと避けれない。

「く…っ」

やっぱり僕には才能という物がないのだろうか。
僕だけの愛機。ゼノン。こいつもいつかはエンペラーみたいに壊れてしまうのか。そんなの嫌だ。僕はゼノンでバン君に勝ちたい。オーディーンを撃ち破りたい。
そんなことを考えながらも黙々とCCMを動かしてバン君に応戦する。
結果が出る前に拓也さんが召集をかけたから僕たちは練習室を出た。
長い廊下を歩くなか、どうしてもしんどくなって、目の前がチカチカしてきた。とっさに前を歩くバン君に助けを求めるが、もう、遅かった。


次の瞬間、僕は医務室のベッドの上にいた。

「ジン!」

バン君の心配そうな顔。

「ジン、廊下で倒れたんだぞ?」

「…すまない」

意識が戻ったということで僕は練習に参加させてもらえた。いったん会議とのことだったから研究室に集まった。

「予定表だ」

「はい」

受け取った瞬間、急に頭が痛くなった。ガシャンッとCCMとゼノンが音をたてて手の平から落ちた。思わず頭を押さえる。

「ジン!?」

アミさんが駆け寄ってきた。みんな心配そうだ。

「…ぅ…ぅぁっ…」

さっき打ってしまった所だ。どうしたのだろう。

「大丈夫か?」

「…ぐっ…だ…大丈…夫…です」

痛みが少し治まったようだ。これが「激痛」という物なのだろうか。仙道君に支えられながら僕は椅子に座った。おかしい…どうしたんだろうか僕は…。
プリントを拾ってもらう。もう少ししたら練習だ。とにかく落ち着こう。落ち着けばどうにかなる。


「はぁ…」

そろそろ練習だ。行かなきゃ。そう思い練習場に向かう。

「ジン、調子が悪いのなら帰ってもいいぞ」

拓也さんが僕を気遣ってかそう声をかけてくれた。

「いえ、大丈夫です」

それを断ると僕は練習場まで急いだ。アミさんを待たせてるかも。

「ジン!来たわね!」

相手をしてくれるのはアミさんだ。

「行くわよ!」

「ああ…」

そう言ってパンドラが先制攻撃を仕掛けてきた。それを何とか避けると、僕は体制を持ち直そうと距離をとった。するとなぜか頭がまた痛くなった。

「ぅ…ぁぁ…!」

頭を抑えてふらつく。ぎりぎり強化ダンボールにはぶつからずに済んだけど、僕自身は崩れ落ちるようにその場にしゃがみ込んだ。

「ジン!」

アミさんが走ってくる。そしてCCMでみんなを呼んだ。すぐにみんなは来たが僕は立ち上がることが出来なかった。

「だ…いじょ…ぶ…です…から…」

途切れ途切れに物を言ってまだ酷い頭の痛みに堪えて、バン君に助けて貰いながら立ち上がる。

「やっぱり体調わるいよな…」

心配そうに
声をかけてくれる。

「…いや…ちょっと…疲れただけ、だ」

頭をさすりながらごまかす。

「…少し休んでおきなさい」

拓也さんにそう言われて僕は迎えに来てくれたじいやに引き渡される。

「しっかり疲れをとるんだぞ」

低い声で言われて僕はただ頷くしか出来なかった。




部屋で休憩していると頭は大分楽になってきた。けど、体は重いままだ。
…疲れているのだろうか。もしかしたら…病気?でも今、こんなにも大事な時に悠長に病院に行っている暇などない。御祖父様を止めるためにも、バン君のお父さんを救うためにも、僕が強くならないと。そのためには練習しないと!

「ダメですよ?」

え?

「今、練習しようって考えてましたよね?」

何でわかったんだ…。と僕は笑ってそうだね。としか言えなかった。

「じゃあ着替えてくるよ」

そう言って立ち上がった刹那、僕は酷い目眩と吐き気に襲われた。

「ふ…ぅっ…!」

その時じいやがすぐに気付いてくれて、すぐにトイレに連れて行かれた。

「げほっ…ぅ…ぇ…」

「ずっと我慢してたのですか?」

背中を摩りながら優しく聞いてくれた。

「ちが…うんだ…さっき…立ち上がっ…たら…きゅ…に…」

「後で薬持って行きますから部屋で寝てて下さい」

…結局…今も迷惑かけているんだろう。
その後部屋に戻って休んでたら日頃の疲れのせいか、はたまた頭の痛みのせいか。僕はいつの間にか眠っていた。

そんな事を何日か続けた翌日の朝からというもの頭の痛みは増し度々吐き気や目眩に襲われるようになった。

「ぐっ…ぅっ…ぁぁぁ!」

練習…シーカーに行かなきゃ。ふらつく足でタイニーオービット社へ向かった。

「バトルスタート!」

声が頭に反響する。ぐらぐらと。僕はその場に崩れた。

「ジン!?」

郷田君がよぶ。みんなもその大きな声でこっちを見た。まだ、ぐらぐらする。

「大丈夫か?」

ああ。と言って起き上がった瞬間。酷い頭痛に襲われた。

「ぁ…ぁぅ…ぐっぅぅっ…はっ…ぅぁ…ぁぁぁ!」

すぐに拓也さんがこっちに来る。そして僕は拓也さんと一緒に病院へ行った。



結果は検査入院。そんな…嫌だ。僕は練習しないといけないのにっ。

「それじゃあ…バン達に入院すると言っておく…安静にしておくんだぞ」

また声が反響する。ぐわんぐわん。そして僕は返事をする前に意識を手放した。
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