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□俺がついてる
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熱っぽいとは思った。でも浮かれてるだけだと思った。少し身体が怠そうなのも、昨日遅くまで電話していたからだと思った。その顔の赤さも寒さのせいだと思った。
だって今日は元旦なわけで。俺はジンと初詣に行く約束をしていて。頭の中ではお餅を食べたり、甘酒を飲んだり、おみくじを引いたりして、楽しい予定でいっぱいだった。

まだ夜も明けない元旦の朝。ジンはクリスマスに俺があげた髪の毛の色と一緒のマフラーをして待ち合わせ場所に居た。俺はすぐにジン見つけて急いで駆け寄った。

「ごめんねジン。待った?」

「いや…大丈夫だよ」

手を握るとその手は冷たくて時間に遅れたことを後悔した。

「ジン…寒くない?コートとマフラーだけでしょ?」

「…ぁ、うん大丈夫」

その仕草はふらふらと色っぽくて俺を射抜くのには十分すぎた。

「…ん?あ、仙道!」

俺は遠くに白と紫の髪の仙道を見つけた。横には郷田。後…郷田三人衆…。
手を振ると仙道達もこっちに気づいた様で寄ってきてくれた。

「バン!」

「よう!明けましておめでとうだな」

「…というか…お前等もこんな早くに来たのか」

「そうだよ」

だってジンと出来るだけ長く一緒にいたいもん。だったら早起きも全然嫌じゃないよ。

「元旦までこいつらと一緒かよ」

「文句言わない」

まぁそこで、なんやかんやと話しをしてみんなとはそこで別れた。アミやカズも来てるのかな。そんなことを思いつつジンとお願い事をしに行く。

手を二回ならしてお願い事を祈る。…ジンとずっとラブラブでいられますように。…うん、なんだかいけるような気がしてきた。

「ジンはなんて祈ったの?」

「バン君がずっと…僕の事好きでいてくれますようにって…」

自分で言って自分で赤くなってるよ!なんだかこっちまで恥ずかしくなるな。でもね、ジン、そのお願い事は絶対叶うよ。だって俺嫌いになる事なんて絶対に出来ないからさ。

「ジン、好きだよ」

「バン君…」

ギュッと抱きしめ合う。朝早くて人はまだあんまりいないから誰も俺達の事を見ない。
あぁ、幸せ。と思うと同時に少し違和感を感じた。

「ジン、暖かいね」

「そう、かな?」

暖かいと言うよりも熱いに近いような気がする。なんだか嫌な予感。

「もしかして、熱ある?」

そう言うと少しだけジンが目を見開いた。それで、あぁ、これは。と確信したけど。

「バカ!熱あるなら言ってよ、」

「大丈夫だから」

全然大丈夫そうに見えないよ。ごめんねジン、俺浮かれてて気づかなかった。

「まだ帰りたくない…バン君と一緒にいたい…」

いつもならその言葉で俺は一日中明るく過ごせるくらい幸せだけど、今はそうもいかない。

「無茶して倒れたほうが、今日帰るよりも俺は嫌だよ」

「…ごめん…」

「とりあえず今日はもう帰ろう?治ったらまた違うところに遊びに行こ」

「うん…」

そう言って帰った。だけど…。

「ジン?しんどい?」

「……いや…大丈夫だ」

執事さんに迷惑かけたくないと言うから電車に乗っているとジンがもたれ掛かってきた。顔も赤いし息も少し荒い。

「ぅ、ふぅ…」

なんで気づかなかったんだろ。ずっと一緒にいたのに。昨日から体調が悪かったのかも。いや、悪くないと熱なんて出ないよな…。それなのに俺、ずっと電話して…。俺のせいだ。
と悶々と考えていると、目的の駅に着いてしまった。こうなったら何よりも早く家に送らなきゃ。

「ジン歩ける?」

「ああ…」

足どりはふらふらで今にも倒れそうだった。しかも初詣に行く人達で道が大混雑している。

「ジン、一回路地に入ろう」

「わかった…」

ジンの手をぐいっと引っ張るとジンはよたよたと俺について来た。

「海道邸に行くにはこの道を抜けてあっちの駅で電車に乗らなくちゃいけないんだよね…」

「そうだ」

「じゃあ俺の家に行こう。その方が近い」

そう言って歩きはじめるとジンが手を引っ張った。

「ジン?」

「バン君、そんな元旦に迷惑かけれない」

「どういう事?」

「君のご両親だって…何かと忙しいだろ」

「大丈夫、毎年昼頃には暇になってるから」

じーちゃんとばーちゃんのところには明日に行くし、朝早くに初詣に行って、近所の子供にお年玉をあげて、おせちを食べて、その後何かとやっててもどうせ暇になるんだ。

「でも…っ」

「大丈夫だって、ジン早く」

路地を抜けるともうすぐそこだ。でも走れないから早足で家に向かう。

「着いた」

急いでインターホンを鳴らす。すると案の定もうエプロンを着けた母さんが出て来た。

「あら、ジンも一緒?ちょうどいいわ暇だったのよ」

「違うんだ母さん……」

今までの経歴を全て話す。すると母さんは大変だったわねぇ。と言ってから家に上げてくれた。

「ジンは俺のベッドで寝てて」

「すまないバン君…」

「何言ってるんだよ困った時はお互い様だろ」

ジンをベッドに寝かせて布団をかける。きっと風邪だから風邪薬と、体温計、冷えピタを取りに行く。

「ジン、お待たせ」

部屋のドアを開けるとジンは寝ていた。でも息は大分荒いし、顔は真っ赤、身体だって小刻みに震えている。

「ん…ぅ…」

「熱、はかるよ」

「マ……マ…?」

あぁ、聞いてはいけなかった。ジン、君はまた、あの時の事を夢に見ている。もういない両親を思い浮かべ、熱が出てうなされる度にこうやって呼んで、手を伸ばす。

「助け、て……パパ…」

ほら。何度俺がついてるって言ってもダメじゃないか。ジンがこの悲しみから逃れられる日はいつ来る?

「ジン、起きて」

「ん……マ……バン、君?」

「ほら、風邪薬飲んで」

「ありがとう…」

そんなに悲しい顔をするならずっと俺だけ見ていてよ。

「ジン、俺がついてるからね」

「ありがとう、バン君」

そうやって君は無理矢理笑うんだ。いつも、ずるい。

「ずるいよ、ジン、いつもそうだ。無理矢理笑って」

「バン君…?」

「俺は早くジンに元気になってもらいたいんだ!ジンがもう悲しまなくていいように」

「バン君、僕は大丈夫だよ」

「どこが?ジン、悲しいときは泣きなよ、それで、嬉しい時は一緒に笑おう?」

「バン君…でも…」

「ジン、悲しいのは我慢しても消えないんだよ。だから泣いて?泣いて発散しよう」

「そんなこと言ったら……ぅ、ふっ…ぐすっ」

「俺とならいつでも泣いていいよ。でもその分一緒に笑おうね」

「うん……!」

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