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□愚痴
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「ジン今日ね、母さんがちょっと寝坊しただけで怒るんだよ」
「そうなの?」
髪を洗いながらバン君の愚痴に相槌をうつ。今日のバン君は愚痴ばっかりだ。
「ジン、まだ?早く入ろうよ」
「あと洗い流すだけだから」
なぜだか今日はバン君が家に来て、一緒にお風呂に入ると言い出して。バトルもそのままにバスルームに連れていかれた。
「わ、狭いね」
「バン君が入れといったんだろう?」
「ジンと引っ付きたいからね」
そこでニコリと笑ったけどすぐにまた愚痴りだした。今日は一体どうしたんだ?
「それでね、俺イライラして…………」
バン君の愚痴は止まらない。いつもはそんなこと言わないのに。
「バン君、どうしたんだい?今日はやけに機嫌が悪いじゃないか」
そう聞くとバン君はいったんキョトンとした顔をしてそれから少し怖い顔をした。
「たくさん嫌なことがあったから。でも、大半はジンのせいだよ」
「なっ…、え?」
僕のせい?しかも大半を占めているだって?僕はなにかしただろうか。バン君がこんなに機嫌が悪くなるようなことを。
「だってジン、今日ずっとカズの隣にいたじゃないか」
「え?」
そんなこと?……まさか、僕に対しての嫉妬?……あぁああぁ、嬉しい。
「他にも仙道とばっかバトルしてたし」
「それはバン君だってアミさんとバトルしていただろう?」
「ぅ…で、でも!それっ」
バン君が指を指したのは僕のおでこ。まだ少し赤い。今日、家で打ってしまったのだ。
「怪我した時、神谷コウスケにキスされてた!」
「あれは…」
偶然通り掛かったコウスケ君が僕のおでこにおまじないといってキスをした。それをバン君は怒っているみたいだ。それだけで機嫌を悪くするなんて、何とも可愛らしい。
でもあれはコウスケ君のただのスキンシップというか…とにかく違うじゃないか。
「あんなのズルイよ!ジンは俺のなのに!」
湯舟をバシャンッとバン君が叩いた。お湯が飛び散り二人にかかった。
「バン君、大丈夫だ。僕はバン君のものだ」
「でも、」
ここはもう、一か八かあれをやるしかない。おでこの事で怒ってるし、おでこにしよう。あぁ、心臓が口から飛び出しそう。
「こ、これで許してくれないか?」
バン君の濡れた前髪を掻き分けてそのおでこにチュッと触れるだけのようなキスをする。
「ジ、ジ、ジジっ…ジン!!?」
「照れないでくれ…僕まで恥ずかしくなる」
「今の可愛すぎ!もう一回やって」
「へ?」
「お願い!」
嫌だ!僕だって死ぬほど勇気がいったんだ!
「嫌だ…!」
「ちょ、もう我慢できない」
「え?ちょっ、バン君!?」
その後お風呂に入ったままおいしく食べられました。