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□助けたのは…
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お医者様に言われた事は最悪だった。
「あまり激しい運動はしないで下さい…あと埃っぽい所にも行かないこと…」
「はい…」
それじゃあ
何も出来ないじゃないか。LBXバトルでたつ砂埃はどうしようもない。
「ちゃんと薬を常備するんですよ」
「はい…」
何が悪化なんだ…。少しお医者様の前で咳をしてしまっただけで…。今までは御祖父様に迷惑をかけまいと必死に堪えてきたし、これからも八神さんやじいやに迷惑をかけれない。だから今、こんな事をしている場合ではないのだが…。
「発作の感覚が狭まったんですよ!」
「すみません…」
「苦しい事は一番自分が知っているでしょう」
そりゃそうだろう。病人は自分なんだから。僕は所謂喘息持ちらしい。発作したら苦しい事は確かだが、あまり本気で戦えなくなるなぁ…ゼノンを飛ばすと埃は舞うし、叫ぶと体力は使うしで最悪だな。
「…とりあえず薬を処方しておくので、くれぐれも安静に」
「はい…ありがとうございました」
そう言って診察室を出て薬を貰うと家に向かった。
まぁ、最近息苦しい。と感じる事はあったけど発作は、上手く抑えたり薬を早く使ったりしてまだ一回しか起きてない。なのにあんな大袈裟に…少し気をつければ大丈夫だろう。
「ジン!今日は昼からだろ!一緒に行こうよ」
「バン君!」
今日はなんだか重要な会議があるらしくて昼から登校だ。
「行こうか」
「ああ」
そうして僕達は学校に向かった。そして席につくと女子が話し掛けてきた。
「あの…海道君…今日私たちが日直だよ」
クラスの男子が美人とか言ってる子だ…。えっと名前…名前は…何だっけ…。
「…そうだね」
「頑張ろうね」
「うん」
何が言いたかったんだろう?それだけのためにわざわざ言いにきたのかな?
「おい!一時限目と四時限目が交代で一時限目、体育だとよ!早く着替えろー」
クラスのお調子者の一人が教室に入って来るなりそう告げた。みんなは一斉に嫌な顔。
「マラソンらしいぞ!後15分で始まるってさ」
「「えっ!」」
そう言われるとさっきまで嫌な顔をしていたみんなが一斉に慌てはじめた。体育委員がみんなの指揮をとり急いで先生のもとにいく。
「じゃあマラソンするぞ…指定の位置につけー」
どうしよう…走ろうかな…お医者様はああ言ったけど最近は調子もいいし走ろう。
あ、でも薬、教室だ。まぁ、大丈夫だろう。苦しくなったら戻ればいい。そんな楽観的な思考で僕はマラソンに望んだ。いつもなら慎重に動くのに、今日はなぜか楽観的に考えてしまう。なぜだろう。バン君と二人で登校したからかな。
「よーい…スタート!」
みんなが一斉に走り出す。僕も快調に飛ばした。最初のうちは。
「はっ、はぁっ…はぁっ」
疲れた。そのせいか妙に息苦しい。やっぱり走るんじゃなかった。周りに人はもう居ないし、早く行かなきゃ。そう思いながら歩を進めた。
「けほっ…けほっけほっ」
やばい…咳が出始めた。ちょっと…苦しいかも。薬……ないのか…。
「げほっ!げほっげほっ!ごほっ」
苦しい。苦しい苦しい苦しい!息が出来ない。いやだ…こんな所で死にたくない…!
「ヒュッ…だれ…ヒュッ…ヒュー…助け…げほっ!けほっ」
「海道ジン!大丈夫かい?」
いきなり声をかけられたかと思えば傾いた体を抱き留めてくれた。
「ぐ…る゙し…がはっ…ヒュッ…ヒュー」
「その恰好だと体育の途中かい?校門はあっちだな…ちょっと我慢しろ」
そのままおぶわれて学校まで連れていってもらった。学校につくとすぐに先生が僕の鞄から薬を持ってきてくれてすぐに楽になった。
「は、はぁっ…はぁっ」
「ふん、馬鹿だねぇ…」
「すみ…ませっ…仙道、く…」
僕を助けてくれたのは紛れも無く仙道君だった。
「無理するなんて馬鹿らしい…俺が見つけなかったら死んでたかもな」
タロットカードを見ながらそう呟く。その通りだけど…。
「すまない…」
もう無理をするのはやめよう…。
「知り合いか?」
先生が仙道君に問う。まぁこんなに話していたらそうなるだろう。
「…まぁ…そんな所だね」
曖昧な返事。知り合いだと思うんだが…。シーカーの仲間だけど。
「そうか!」
「ジン!帰る用意持ってきたよ!って仙道!」
保健室の扉がガラリと開いたかと思えばバン君が入ってきた。手には僕の荷物。持ってきてくれたみたいだ。
「あ、ありがとう」
「じゃあジン。帰るぞ」
「え?」
「山野君もお腹痛いみたいだから二人とも早退ね」
そういう事か。バンはサボり…。いや、そうさせたのは僕か。…帰らなきゃいけないみたいだし帰ろう。
「仙道も行こう?」
「あ、ああ」
そのまま3人一緒に校門を出る。もうここら辺で
いいだろう。
「じゃあこの辺で」
「ああ」
「どこ行くの?」
「郷田のところ」
…いちゃつくんだな。止めはしないさ。また学校内に入ろうとした仙道君を見てそう思った。
「じゃあばいばーい」
「ああ、じゃあな」
そこで仙道君とは別れて僕達は家に向かって歩きはじめた。