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□ミラクル自販機
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「ねぇ、ジン喉渇いた」

「え、」

「そこの自販機でジュース買っていい?」

「あ、うん」

春先暖かくなってきて、厚着で歩けばすこし汗をかいた。…ジンと歩いてるから緊張してるのかもしれないけど。

「何がいいかな」

「…これなんてどうだい?」

ジンが指し示したのはコーヒーとか紅茶とかのコーナー。俺、コーヒーとか少し苦手なんだよな…。と思いつつもその辺に目をやると、ランダムという缶ジュースが。

「ねぇ、これ…」

「僕も思った」

二人で息を呑む。大きな期待と小さな不安。買う、べきだろうか…。

「いいや、これにしちゃえ!」

もう、半分はやけくそだ。お金を入れてボタンを押す。……………あれ?

「出て来ない…」

「なんでだろう?」

ジンが自販機をコンコンと叩く。しかし、無反応。一体何なんだ。ここまでの冒険をさせておいて。

「おーい?」

「バン君、出て来ないね…」

「なんでだー?」

そう言ってボタンを連打した時、自販機から盛大な音がなった。

「な、ななな何!?」

「まさか壊れたんじゃ…」

ガコガコガコガタンッ!!
自販機が少し傾くくらいの衝撃とともに、取り出し口から缶ジュースが溢れ出た。自販機のボタンは次々と売り切れ表示に切り替わる。

「わわわわ!」

「と、とりあえず転がって行かないように!」

俺とジンは必死に溢れ出る缶ジュースたちを止めた。そしてやっと止まったかと思うと手元には数十本の缶ジュースが落ちていた。

「これ、どうする?」

「放置はダメだろう…」

「持って帰るの!?」

「それしかなさそうだな」

でも、こんなの抱えきれないよ!袋もないし…。一体どうしろっていうんだ。

「とりあえず、そこら辺の人に配ろう」

「貰ってくれるかな」

「一か八か、当たって砕けてみよう」

砕けちゃダメな気が…。でもとりあえず持てる分だけ持って大通りに繰り出した。

「どうぞ」

「貰ってくださーい」

案外好評ですぐに缶ジュースは売り切れた。…でもなんでか大きなお姉さんに人気だったなぁ…。写真も取られてたみたいだし。まぁ、いっか。

「バン君、まだまだあるよ」

「この量なら袋さえあったら運べるよね」

「うーん…どうだろう」

「まぁ、でも袋貰いに行こう」

「そうだね」

その辺の人に聞いたら快く袋を譲っていただいた。しかも予備まで。いい人だ。

「は、入るかな」

「予備も合わせればなんとか…」

袋に詰めると、結局予備まで使っちゃった。でもこれで持ち運びが出来る。

「重っ!」

「これは…キツいね」

液体だからかかなり重い。これを持ち運ぶとなると結構な重労働だぞ…。

「アミ達に配ろうか」

「そ、そうだね」

ちょくちょく止まりながらも、アミ達の元に向かった。

「わ、あんた達これどうしたの?」

笑いながらも2本ジュースを貰ってくれた。次はカズだな。

「カズー!」

「なんだー?って…どうしたそれ!」

事情を説明すれば、今からゲーセン行くからといってマーヤさんのぶんまでジュースを貰ってくれた。

「次は、郷田と仙道!」

どうせ二人一緒にいるだろうと、郷田の家まで向かう。そしてインターホンを鳴らすと仙道が出た。…やっぱりな。

「これ、おすそ分け!」

インターホンにそう言うと、ドアの前に10本ジュースを置いておいた。きっと飲んでくれるよね。

「さ、ジン逃げよう」

「ああ」

そそくさと退散する。後ろから怒声がしたのはきっと気のせい。次はどこに行こうかな…。

「郷田三人衆!」

「ミカ!」

「卓也さんと八神さん」

「真野さん達」

「北島の店長とサキさん」

「ハッカー軍団」

「オタクロス」

「ユジンさん達」

他にも沢山の人のところを回ったけどまだ手には15本の缶ジュース。どうしようかな。

「どうしようか?」

「天馬君に送り付ける?」

「え?」

「嘘、冗談だよ」

なんだ、とジンが笑った。ちょっと本気で考えただなんて言えない…。さぁ、どうしようかなー。

「とりあえずそれ、飲もうよ」

「…そうだね」

一口、口に含むとすごく美味しかった。そういえば俺、喉渇いてたんだっけ。

「美味しい…」

「これ飲んで、もう一踏ん張りだね」

「ああ」

いっきに飲み干して、缶を捨てると、ジンを引っ張り俺は走り出した。

「駅前行くよ」

「な、なんで?」

「バトルするんだ」

そして駅前につくと、やっぱりみんなLBXバトルしてる。よし、頑張るぞ。

「俺達とバトルしよう!」

そう叫べばみんな振り向いた。ジンは状況が飲み込めなくて焦ってるけど。

「山野バンと…海道ジンだ!」

みんなが口々に俺達の名前を口にする。アルテミスとアキハバラキングダムをしてから有名になった気がする。

「俺達に負けたら、このジュース飲んでね」

そこで初めてジンがハッと頷く。
二人で前を見据えると挑戦者は沢山いるらしく、すぐにバトルはスタートした。

「よし!」

「これで全員だな」

全員を倒し、ジュースも全てなくなった。これで、よしだ!
ふぅ、なんだか喉が渇いたなぁ。

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