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□違和感
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ずっと思ってた。何かが違う。って。
「君さ…目黒じゃないよね」
「えっ?」
見た目は目黒。髪型も声も喋り方も。でもなにかが違う。その微妙な変化に今気づいたんだ。
「黒木…だよね」
「何を言うんだ灰原ユウヤ」
「だって。目黒は…こんな戦い方しないよ」
ずっと会ってはいたが、久しぶりに目黒と戦ってみたら一気にスタイルが変わっていて、違和感の原因がわかった。これは…目黒じゃない。黒木だって。
「なんでこんな事…」
「……」
「ねぇ目黒は?目黒はどこに行ったの?」
「……」
「ねぇったら」
「うるさい!!」
見た目は目黒の黒木が叫んだ。僕はすこしたじろぐ。なんだ。なにがあったんだ。ふざけてはいけない空気が走る。
「目黒はもういない…」
「え?」
「いないんだ…!」
なんで。いないってどういうこと…。何だろう。怖い。知りたくないような気がする。否、知ってはいけないような気がする。
「………半年前に…事故で…」
「黒、木…」
声が震える。事故って、なんで。だから黒木は目黒の恰好をしているのか?忘れないために、自分への罰として。
「なんで目黒なんだ、私は悲しくて、もう、どうしようもなくて、それで、」
ポロポロと涙が黒木の頬をつたっては落ちた。僕は思わず黒木を抱きしめる。小さな黒木がしゃくりあげて、嗚咽を洩らすのを背中をさすって落ち着かせてあげる。
「灰原、ユウヤ…っ…」
「僕さ、成長したんだよ…もう普通の人間になれたんだ」
だから。だからさ、
「こうして黒木を守ってあげれる…黒木は黒木なんだから目黒にならなくていいんだよ」
「…ユウ、ヤ…」
まだとまらない涙と、優しい笑顔で「ありがとう」と言われ、僕はまた黒木を抱きしめた。ポタポタと肩が濡れていくのは気にしないで黒木の頭を撫でた。
Fin.