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□奇跡の一枚
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最近CCMのカメラ機能で写真を撮るのが好きだ。何でもないようなところに美しさが隠れている。それを撮る。後で見返しても美しさがわかる。僕が撮ったからでもあるんだけどね。
「あ、」
なんでも美しいものは写真におさめる。いらなくなったら消せばいいしCCMって便利だなぁ。
「コウスケ君」
「なんだい?」
海道ジン。僕の部屋に何の用だろうか。僕の美しさがわからないこいつに部屋を荒らされたくはないんだが。
「少し話さないか?」
「いいよ」
テーブルに招く。飲み物をメイドに出させて話を始めた。
「で、なんだい?」
「いや、特にこれといった話はないのだが…」
「なにそれ。そんなために僕の時間をとったのかい?」
「ああすまない」
パシャ。
「え?」
謝る海道ジン。なんてどうだろうか。こいつ、全然申し訳なさそうじゃないけど。なにかちがうな…もっとこう、素の写真が撮りたい。
「あ、いや、間違えただけだよ」
「そうか…」
「話すことが無いのなら僕と遊ぼうか」
「いいのかい?」
「ああ、ルシファーもカスタマイズしたしね」
「バトルか」
「ああ」
Dキューブを投げてバトルをスタートさせる。さ、美しい僕のルシファー。ゼノンなんて切り裂いてしまえ。
ルシファーを操作しつつカメラ機能で海道ジンを写してみる。タイミングが大事だな。
「必殺ファンクション!Ωエクスプローション!」
「あ、」
しまった。カメラに集中しすぎてルシファーの操作がおろそかになってしまっていた。必殺ファンクションを受けてブレイクオーバーしないはずもなくルシファーは動かない。
「よし!」
その言葉と同時にCCMを握りしめたか、パシャ。と音がして写真が撮れた。海道ジンは気づいていない。
「まぁ、散りかたもルシファーは美しかったね」
「はは、ありがとうコウスケ君。自信がついた」
「ふん、海道ジン、もうすぐ飛行機の時間だA国に行くんだろう?」
「ああ。バン君達にはくれぐれも内密に」
きっと別れが惜しくなるから。と海道ジンは言った。
不安な気持ちを押しのけるために僕とバトルしたのかもしれない。僕は美しければそれでいいが。
「それじゃあ。コウスケ君も頑張ってね」
「ふん、言われなくてもわかっている…お前こそ気をつけて」
「ああ、ありがとう。また」
そう言って海道ジンは出て行った。僕はルシファーのメンテナンスをすると棚の上に置いた。そしてさっき撮った写真を見た。
「なんだこれ」
純粋に嬉しそうで、いつものポーカーフェースが嘘みたいだ。年相応の顔に見えた。悔しいけど。美しい。
「こんな顔が出来るとは…」
これは保存だな。題名は…奇跡の一枚。くらいかな。
Fin.